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49. 説得失敗 〈マウル視点〉
しおりを挟む「どうして、どうして今すぐに結婚できませんの!"運命の花"の印もありますのに、おかしいですわ!」
キャルル姫が俺の部屋に、突然やって来て右手の甲を見せて怒っている。
確かに、キャルル姫の手の甲にある印と、俺の右手の甲にある印は同じに見える。
しかし、シャルルの時と違う点があるのだ。
近づいても、全く痛くないのだ。
この印が出る時は気を失うくらい痛かったのに…今は全然痛みがない。
同じ"運命の花"でもこんなに違うものなのか?
「落ち着いて下さいキャルル姫。こちらにも色々とありまして…詳細は後程お話させて頂きますので…」
ファドが対応に困っている。
前に姫のエスコートを逃げた罰だな…。
「後程とはいつですの?せっかく、私がここまで来てさしあげましたのに、私を待たすのですか?」
誰も来て欲しいとは言っていない、自分が勝手に来た癖に…エルルも困っていたわけだな…。
「ファド、もういいよ。キャルル姫に正直にお話しをしよう。」
この様子だと何を言っても無駄だろう。
正直に話して待ってもらうしかない。
待ってくれるかは怪しい気もするが…。
「やっと、マウル様の声が聞けましたわ。私、マウル様がいつお部屋に来て下さるかと、ずっとお待ちしていましたわ」
「それは申し訳ありません。仕事が忙しく部屋と執務室との往復の日が続いておりまして…」
「あら、そうでしたの?でも、お仕事が終わった夜に来て頂いても私は構いませんのに…」
俺が困る…変な噂がたつだろ…。
「実は、キャルル姫にお話しがありまして…」
「まあ、お話し?…プロポーズでしたら、このお部屋では嫌ですわ」
なぜ、話=プロポーズになるのだ。
「いえ、そうではなくて…実はキャルル姫だけでは無いのです…」
「何が私だけでは無いのです?」
「私には"運命の花"の印が…2つあるのです。しかも、キャルル姫の印は後に出来たものなのです」
「へ………?」
キャルル姫が驚き過ぎて固まっている。
「あの…キャルル姫。大丈夫ですか?」
スクッと座っていたソファーから急にキャルル姫が立ち上がった。
そして、俺の側に来て、バンッと机上を叩いた。
「嘘ですわ!絶対に嘘ですわ!私を騙そうとしてもダメですわ」
すごい大声で叫んでいる。
ファドがキャルル姫を俺から遠ざけようとしたが、俺が首を振ってしなくていいと合図をした。
「嘘ではありません。本当です。ご自分の目で確かめられますか?」
仕方がないのでジャケットを脱いでシャツを腕捲りし二の腕の印を見せた。
「これが、最初に出来た印です。見えますよね」
キャルル姫の目が大きく見開いている。
「本当ですわ…そんな…そんなことって…あんな痛い思いをしたのに…」
キャルル姫は独り言をブツブツ言いながら後退りしている。
「その相手の女もここに来てるのですか…その女と話してから決めるのですか…」
勘が良いな…。
たしか、シャルルはもう到着して、両親と話をしているばすだ。
「黙っていると…言うことは…」
キャルル姫が急に身体の向きを変えて部屋を勢いよく出て行った。
一瞬呆気にとられていた俺とファドだったが、瞬時に血の気が引いた。
「ヤバいぞ!シャルルを探しにいったんじゃないか?!追うぞ!」
必死に探したが中々見つからず、見つけた時は…シャルル達がいる部屋の扉を開けてしまっていた。
どうするんだ…これ…。
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