魔王様・完全攻略マニュアル

紫月

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どちら様?

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意識が浮上してくる。
あぁ、もう朝なのね。
今日の朝ごはんは何を食べようかしら?
昨日の朝にパンを沢山焼いたから、今日は少し寝坊しても大丈夫ね。
確か卵がまだあったから、フワフワのオムレツを焼いて食べようかな。
スープはジャガイモと玉ねぎを茹でて潰してポタージュにしましょう。
あぁ、なんかお腹が空いてきてしまったわ。
そろそろ起きようかしら?
グーーー………。
「……腹が減ったのか?」
…………!?
ビックリして目が覚めた。
人がいるなんて思ってもいなかった。
慌てて飛び起きると、黒目黒髪の可愛らしい少年が私を見ていた。
誰?
「まさか気絶するなんて思わなかったな。お嬢、大丈夫か?」
「え?えぇ。貴方は誰?」
すると少年は意外そうな顔をして、でもすぐに納得したようだった。
「あぁ、この姿を見るのは初めてか。俺だよ、ヴァラクだ」
まぁ!魔法使いって人間にも変身できるのね!
「凄いわ!ヴァラク。是非私にも魔法を教えてちょうだい!」
「………うん、今何となくお嬢の考えてることが分かったぞ」
「魔性の力があるなら、きっと魔法も使えると思うの!」
「いや、俺魔法使いじゃなくて魔族だから。そして多分お嬢の魔性の力って、正真正銘魔王様を操れる力だと思うから」
と、ヴァラクが部屋の扉のほうを指差した。
よく見ると扉の隙間から、こちらの様子を伺う人の顔がチラリと見えた。
「……ヴァラク、あちらの方はどなた?」
「……はぁ、ルシフェル様、出てきてください」
するとユックリと扉が開き、ヴァラクと同じように黒髪黒目のとても優しげな人が部屋に入ってきた。
どこかオドオドとしているが、私はそんなに怖い顔をしているかしら?
「あの、その………初めまして……」
「初めまして、ええと、ルシフェル様?」
「!!!??」
ルシフェル様と呼ばれた人は面白いくらいビクッとなって、何故か蹲ってしまった。
「大丈夫ですか?具合でも悪いのですか?」
慌てて手を伸ばし支えてあげようとしたのだが、またまたビクッとなって壁際まで後ずさってしまった。
私ってそんなに悪人顔なのかしら?
そんなに怯えなくてもいいと思うの。
そしてルシフェル様と呼ばれた方は、お顔を真っ赤にして悶えている。
やはり具合が………。
「あー……そろそろ勘弁してあげて?ルシフェル様、限界だから」
え?なんで???
「そ、そう?あっ!そういえば私、魔王様に会ってお話ししなきゃいけないのよね?魔王様は今どちらに?」
「!!?」
「私、食べられてしまわないかしら?」
「!!!!??」
「や、別の意味でご馳走だけど……」
「え!?私はやっぱり食用なの!?」
やはりワンハンドでパクリなのね!
骨と皮ばかりで美味しくないと説得したら、
諦めてもらえるかしら?
恐ろしい想像に戦々恐々としていると
「た、食べないので、どうかこの城に留まってはもらえませんか!?」
何故かルシフェル様に土下座をされた。

……………何故?





※※※

魔族は魔力で魔術を使い、人間は魔法陣を描き錬金術で術を使う世界です。
魔法使いは子供用の絵本を読んだアンジェが信じ込んでしまった空想上のモノです。
ややこしいので補足します。
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