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魔性の力の正体
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「そういうわけで魔王のルシフェル様だ」
……………想像と全然違う。
「………本当に?」
「本当だよ。なんで疑うんだよ」
「だって身長も大きくないし」
「2メートルは余裕であるはずだけど……」
「角も牙もないわ」
「それはドコ情報だよ」
「あ!でも目から破壊光線は出るのよね?」
「だからドコ情報だっつーの」
土下座騒ぎの後、とりあえず落ち着こうかとヴァラクの一声で全員席につくことになった。
現在テーブルを挟んでルシフェル様とヴァラクが座っているのだけど、ルシフェル様はずっとモジモジしてらして魔王らしさがまるで皆無だった。
私じゃなくても本当に魔王様なのかと疑いたくなるんじゃないかしら?
でもとりあえず食べられてしまうことはなさそう。
「あの、それで私は何故ここに連れてこられたのでしょうか?」
魔王様が話をしたいとは聞いていたが、どんな話なのかまでは聞いていなかった。
そして私に魔性の力があるなら、私を連れてくるのは危険な行為ではないだろうか?
「王国側に何年もお嬢を魔王城に迎え入れたいと交渉をしたんだけど、危険だからと一向に取り合ってくれなかったんだ。埒が明かないから俺が直接出向くことになったんだ」
それはそうだ。
想像とは全然違うけど、魔王は魔王だ。
私に悪意はなくとも、万が一を考えたら接触は誰もが避けたい事態だろう。
「でも、魔王様を操る力がある私を迎え入れるなんて、危険じゃないの?」
「だからこそ一年くらいお嬢の様子をずっと見てたんだ。お嬢は魔王様を操って国を滅ぼそうだなんて思わないだろ?」
それは当然だ。
そんな恐ろしいこと考えられるはずがない。
するとルシフェル様は私の手を両手で包み込み、どこかウットリとした表情で私に語りかけた。
「俺の力は貴女のためにある」
「え?」
「強すぎる魔力で破壊しか生まぬ身だが、貴女が滅ぼせと望むなら国の一つや二つ、綺麗に消し去ってみせよう」
「ええ!?」
「あーー!もう!!それじゃダメだって言ったじゃないですか!勢いで国を滅ぼさないでください!!」
ルシフェル様はどうしてしまったの?
私は無意識に魔性の力でルシフェル様を操ってしまったのだろうか?
「だってこんな愛らしい人を長い間塔に閉じ込めていたんだぞ!?許せないじゃないか!!」
え?
「だからそうなる未来を避けるために結界まで張って閉じ込めたんでしょーが!本当に滅したらお嬢の立場が悪くなるでしょーが!!」
ええ???
全く意味が分からない……。
「あー……つまり、お嬢に罪はないんだけど、お嬢は魅了の力があって魔王様はそれに抗えないんだ」
魅了……………。
まさかそれが魔性の力の正体?
「それでカボチャは馬車にならなかったのね……」
「あー……うん。一週間くらいずっとカボチャと睨めっこしてたのは、そんな理由だったのか……。ドンマイ……」
「なんて可愛らしいんだ……」
「ややこしくなるからルシフェル様は黙っててください」
その力は人(?)の心を無理矢理操るということよね?
では今ルシフェル様は私の力でおかしくなってしまってるのかしら。
ジッとルシフェル様を見つめると、お顔を真っ赤にして乙女のように目を逸らされてしまった。
あぁ、こんな小娘に操られるなど、魔王様にとって不本意でしかないよね?
申し訳ないわ……。
ションボリしているとヴァラクが慌てて慰めてくれた。
「ああ、そんなに悲観しなくていいって。魅了といっても言霊にしなければルシフェル様は操れないから」
「え?そうなの?」
「試しに"両手を上げて"と言ってみて」
「両手を上げて?」
…………本当だ。
ルシフェル様が、何故か満面の笑顔で両手を上げている。
………何故そんなに嬉しそうなの?
「なぁ、ヴァラク。目から破壊光線を出せるように練習したほうがいいか?」
「やめてください。城が跡形もなく消え去りますので、やめてください」
その夜アンジェリカが眠りについた頃、ルシフェルとヴァラクの間でそんな会話がされていたことなど彼女は知らない。
……………想像と全然違う。
「………本当に?」
「本当だよ。なんで疑うんだよ」
「だって身長も大きくないし」
「2メートルは余裕であるはずだけど……」
「角も牙もないわ」
「それはドコ情報だよ」
「あ!でも目から破壊光線は出るのよね?」
「だからドコ情報だっつーの」
土下座騒ぎの後、とりあえず落ち着こうかとヴァラクの一声で全員席につくことになった。
現在テーブルを挟んでルシフェル様とヴァラクが座っているのだけど、ルシフェル様はずっとモジモジしてらして魔王らしさがまるで皆無だった。
私じゃなくても本当に魔王様なのかと疑いたくなるんじゃないかしら?
でもとりあえず食べられてしまうことはなさそう。
「あの、それで私は何故ここに連れてこられたのでしょうか?」
魔王様が話をしたいとは聞いていたが、どんな話なのかまでは聞いていなかった。
そして私に魔性の力があるなら、私を連れてくるのは危険な行為ではないだろうか?
「王国側に何年もお嬢を魔王城に迎え入れたいと交渉をしたんだけど、危険だからと一向に取り合ってくれなかったんだ。埒が明かないから俺が直接出向くことになったんだ」
それはそうだ。
想像とは全然違うけど、魔王は魔王だ。
私に悪意はなくとも、万が一を考えたら接触は誰もが避けたい事態だろう。
「でも、魔王様を操る力がある私を迎え入れるなんて、危険じゃないの?」
「だからこそ一年くらいお嬢の様子をずっと見てたんだ。お嬢は魔王様を操って国を滅ぼそうだなんて思わないだろ?」
それは当然だ。
そんな恐ろしいこと考えられるはずがない。
するとルシフェル様は私の手を両手で包み込み、どこかウットリとした表情で私に語りかけた。
「俺の力は貴女のためにある」
「え?」
「強すぎる魔力で破壊しか生まぬ身だが、貴女が滅ぼせと望むなら国の一つや二つ、綺麗に消し去ってみせよう」
「ええ!?」
「あーー!もう!!それじゃダメだって言ったじゃないですか!勢いで国を滅ぼさないでください!!」
ルシフェル様はどうしてしまったの?
私は無意識に魔性の力でルシフェル様を操ってしまったのだろうか?
「だってこんな愛らしい人を長い間塔に閉じ込めていたんだぞ!?許せないじゃないか!!」
え?
「だからそうなる未来を避けるために結界まで張って閉じ込めたんでしょーが!本当に滅したらお嬢の立場が悪くなるでしょーが!!」
ええ???
全く意味が分からない……。
「あー……つまり、お嬢に罪はないんだけど、お嬢は魅了の力があって魔王様はそれに抗えないんだ」
魅了……………。
まさかそれが魔性の力の正体?
「それでカボチャは馬車にならなかったのね……」
「あー……うん。一週間くらいずっとカボチャと睨めっこしてたのは、そんな理由だったのか……。ドンマイ……」
「なんて可愛らしいんだ……」
「ややこしくなるからルシフェル様は黙っててください」
その力は人(?)の心を無理矢理操るということよね?
では今ルシフェル様は私の力でおかしくなってしまってるのかしら。
ジッとルシフェル様を見つめると、お顔を真っ赤にして乙女のように目を逸らされてしまった。
あぁ、こんな小娘に操られるなど、魔王様にとって不本意でしかないよね?
申し訳ないわ……。
ションボリしているとヴァラクが慌てて慰めてくれた。
「ああ、そんなに悲観しなくていいって。魅了といっても言霊にしなければルシフェル様は操れないから」
「え?そうなの?」
「試しに"両手を上げて"と言ってみて」
「両手を上げて?」
…………本当だ。
ルシフェル様が、何故か満面の笑顔で両手を上げている。
………何故そんなに嬉しそうなの?
「なぁ、ヴァラク。目から破壊光線を出せるように練習したほうがいいか?」
「やめてください。城が跡形もなく消え去りますので、やめてください」
その夜アンジェリカが眠りについた頃、ルシフェルとヴァラクの間でそんな会話がされていたことなど彼女は知らない。
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