平凡な人生に、さよならを。




 明るく、前向きでクラスのムードメーカー的存在と評判の藤形結衣。


 彼女はその日、屋上のフェンスを越えて、飛び降りようとしていた。



「さよなら、」



 平凡な人生に別れを告げる為に。



 そっと、フェンスから手を離した時、


「やめとけよ、飛び降り自殺なんて」



 低い声で、彼女を止めたのは。



 学校一の美形で、何があっても表情を変えないと噂の『冷酷王子』こと神野恭哉。



 顔は良いけど無口で無表情、とても冷たい人だと言われていた彼は。



 柔らかく微笑んで、甘い声で囁き、優しく彼女の頬を撫でる。



「一ヶ月でいい。消そうと思っているお前の時間、俺に預けろよ」



 強引な彼が引き下がってくれるとは思えず、彼女は仕方なく、その提案を受け入れた。



 これは、『冷酷王子』と呼ばれながら、『彼女』には甘く優しく割とおしゃべりな学校一美形な彼と、


 友人に囲まれている時は『自分』を装い明るく振る舞う、『彼』の前ではとても淡白な彼女の、



 一ヶ月だけの物語。



「…一ヶ月経ったら、私に関わらないって、誓ってくれる?」



 一ヶ月経ったら、今度こそさよなら―――…



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