えがおのまほう



 見上げた大学の掲示板に、俺の望んだ数字は載っていなかった。


 受験失敗。転落。落ちこぼれ。


 様々な負の感情が浮かんでは消え、俺の心を蝕んでいく。


 どうしても行きたい学校だった。少し特殊な学科で、そこでしか学べないことがあった。


 だからこの学校一本に絞りこみ、滑り込みも受けずに必死に勉強を重ね、受験日を迎えた。


 十分に、十二分に勉強したつもりだった。いや、現に俺は頭が良かった。


 学内では成績一番だったし、模試の判定だって良かったから、落ちる訳なんか無いと思ってた。…自分の力を、過信していた。


 だから、こんな結果を招いたのかもしれない。


 高校三年を終えた三月。少年の運勢は最悪だった。


 大学受験には失敗し、アルバイトはクビになり、挙句の果てに、付き合っていた彼女には振られてしまったのだから。


「おつかれ、ですかー?」


 そんな少年の目の前に現れたのは、可愛らしい幼稚園児。自らのことを「マコ」と呼ぶ、幼い女の子だった。


「げんきをだすにはね、まず、笑うといいんだって!」


 えがおのまほう。それは、人を「笑顔」にする「魔法」のことではない。


「アキも一緒に! ほら、にこって!」


 女の子の「笑顔」が起こした、ひとつの「魔法」のことである。



 その日、少年は確かに、僅か五歳の女の子に救われたのだ。



 それはまだ二人の知らない、明日へと、「未来」へと繋がる物語。



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