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19章 いつまでも一緒にいたい
誓い (最終回)
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桐野は仕事を定時で上がり、宮前の実家を訪ねた。休職して実家で療養中と本人から聞いていた。
いざ実家を訪ねると、宮前の母親が出て丁寧に謝られた。
「ごめんね、桐野君。治は具合が悪くて、会える状態じゃないの」
成金趣味のブランド品のロゴ入りセーターを着た中年女性。中高生の時に何回も会ったことがある。
「僕が診てあげますよ」
「自分の姿を友達に見せたくないって。たぶん会話するのも大変だと思うの」
だったら、なぜ事前に連絡を入れないんだ。昔話でもしようと約束したのに。せっかく仕事帰りにわざわざ世田谷まで車で来たのに失礼にもほどがある。
しかたなく自分のアパートにすごすご帰ることにした。案の定、多摩川大橋で渋滞に巻き込まれアパートに着いたのは七時だった。
家の中は電気が消えて真っ暗で、朝日を呼んでも返事が返ってこない。
「あさーひー」
どこに行ったのだろう。書き置きもない。買ってあげたキッズケータイはリビングのテーブルにほったらかし。
家出? 一瞬、嫌な考えが浮かんで消えた。
どうせ友達の家で遊んでいるのだろう。
鶴見に電話をかける。
「桐野です。鶴見君の家に朝日、遊びに来てないかな?」
「なんだよ、おっさんかよー。うぜーな。ちっ。俺、今、雀荘だよ」
まだ三十前でオジサンみたいな外見でもないのに”おっさん”と呼ばれて心底むかっとした。
(底辺ヤンキー中学生大っ嫌い!! なんでこんなのが朝日の友達なんだよ!)
しかし大人の対応であざとく猫なで声で聞いた。
「朝日がいない。もう暗いのにどこにいるか心配で」
「ネカフェか本屋じゃねーの? スマホに電話入れたら?」
「スマホなんて持たしてないよ。ケータイ、家に置きっぱなしで出かけたよ。また家出かも。鶴見君も心配だろ」
しばらく鶴見は黙っていた。そして早口で言った。
「ちっ。探してやっから、五分後にまた電話かけてくんない?」
がちゃ。
相変わらず言葉遣いも態度も悪い。でも鶴見の約束事は守る律儀なところは桐野は知っていた。
きっかり五分後に電話した。
「桐野です。朝日の居場所見つかったかな?」
「朝日なら中学の近くの公園。じゃあな、おっさん」
***
車を運転して、公園に向かう。中学校の向かいにある寂れた児童公園は家から車で十分もかからない。
公園の横に路駐する。車を降りて金網から覗くと、ブランコに誰かがいるのが見えた。
ああ、いた。朝日だ。一人じゃなくて誰かといる。
男の人が朝日にかがみこんで何かしている。話しかけているのだろうか。
遠いし、公園内に街灯は設置されておらず暗くてよく見えない。
ブランコに乗ってる朝日のとなりで突っ立って話している黒いコートの若い男性は誰? 金網を乗り越えられたらいいんだけど。
遠回りをして、公園の入り口から小さい児童公園に入り、ブランコに真っすぐ進む。
中学生なのにブランコ、一体何を考えているのか。来年十四歳という自覚はあるのか。
「朝日」と声をかけると二人が振り向いた。
近くに歩み寄ると、朝日がキャンキャン吠える小型犬みたいに興奮して、突っかかってきた。
「なんでここにいるって分かったの? 何しに来たんだよ!! 僕のことなんて放っておいてよ。もう帰れよ」
一緒にいる二十代半ばの男が朝日に聞いた。
「この人、誰?」
「朝日の保護司の桐野です」自分から挨拶した。
遠慮ない強い視線で見られて、意味ありげに「そりゃ、どーも」きつい口調の挨拶が返ってきた。
男の人に名前を聞いたが「ただの通りすがりの人」と、素っ気ない返事だった。
桐野は、さっきから男が値踏みする様にジロジロと自分を見ていることに気が付いた。
悪意があるようで薄気味悪く感じた。
「帰ろう」桐野は朝日に声をかける。
「やだ」朝日は不貞腐れてブランコの下の地面をスニーカーの踵でグリグリする。
子供すぎる。
「クリスマスプレゼントもあるし、大好きなイチゴのケーキもあるよ。お腹空いたよね?」
優しい声でなだめすかす。
朝日は、ぶつぶつ言いながらブランコから立ち上がって「しかたないなあ」とコートのポケットに両手を入れた。
「じゃあ、僕、帰るから。今日はありがとう」と朝日がお別れの挨拶をする。
男の人はニッと笑って「またね、バイバイ」手を振って、二人が公園を出るまで、じっと見ていた。
「もー、公園なんて行くから、不審者に声をかけられるんだよ。危ないよ」
「うるさいなー。小学生じゃないんだから、大丈夫だよ」
「知らない人に付いていったりしたらダメだよ」
車に乗ると桐野は朝日の両手を握る。
すっかり冷え切ってる。かわいそうに。
「寂しい思いさせてごめんね」
「別に。ぼっちは慣れてるし」
「宮前には会わないで、すぐに帰ってきた」
「そうなの?」
不思議そうなきょとーんとした顔で聞いてきた。声が少しうれしそうだ。
「うん。ごめんね」
「謝らなくていいよ」もう朝日は怒ってない。
「さっきの人と何してたの?」
「別に。ぼっちの僕のこと心配してくれて話しかけてくれたの」
家に戻って、クリスマスのごちそうとケーキを食べて、プレゼントのスニーカーを渡す。
朝日からのプレゼントはボールペンと付箋。
「職場で使うよ。ありがとう」
「安モノでごめんね」
朝日は、ぷいって横を向いて、ぶっきらぼうに言う。
毎月二千円のお小遣いから買ってくれた総額五百円もしない文具でも嬉しかった。
「子供だからプレゼントはもらうほうでいいんだよ。プレゼントもらえると思っていなかったから、うれしいよ」
夕食後、暖かいリビングに移動しソファーに座ると仕事の鞄から弁護士事務所の名前と住所が印刷された封筒を取り出す。
「これ読んで」
大きな封筒を渡す。
「何これ?」
「未成年後見人申請の書類と親権停止の申し立て」
「よく分からないんだけど」
朝日は難しい顔して書類を読むが、さっぱり理解できない。ずっしり重い書類と難しい法律用語にショックを受けているようだった。
「お母さんから保護者の権利を剥奪して、朝日が大人になるまで僕が法が定めた管理者として面倒をみるということ」
「ずっと一緒にいられるということ?」
「そうだよ。あとは印鑑を押して、弁護士に頼むだけ。来年の三月ごろには正式に僕が朝日の未成年後見人に任命される」
「お母さんはどうなっちゃうの?」
「親権停止でもう朝日とは会えない。やっと親子の縁が切れるよ。よかったね」
朝日のことを散々ネグレクトしてきた母親、そんな人とは縁を切ったほうがいい。母親の資格なし。
「お金かかるよね」朝日の声が震えている。
「心配しなくていいよ」
「いくらぐらいかかるの?気になる教えて」
「二十から三十万ぐらいかな」
朝日は、はっと息を呑んで、金額に驚いている。
「大金だよ」
銀行口座にゆうに八百万を越える貯金のある桐野には大金というほどの金額でもない。
「お金のことは気にしなくていいよ」
「そんな高いプレゼントもらえないよ」
「これは、朝日へのプレゼントじゃないよ。誓いの証明」
朝日が書類と封筒を桐野に返す。やっと母親と縁が切れるので喜んでくれると思ったのに暗い表情をしている。
「お母さん、どうしてるんだろう。また外で浴びるほどお酒飲んでるかも」
「そんなひどい人のことは、もう思い出さないで。母親なんて、もともといなかったと思えばいいよ」
暴力を振るわれたり食事も満足に与えられなかったのに、まだ母親に情があるのか。
「うん……」
「僕が溢れるほどの愛情を注いで養育してあげるからね」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「僕がいないと朝日、死んでしまうから。一人になったら朝日、死んじゃうよ」
まだ一人で生きる術(すべ)なんて知らない。十三歳では到底無理。強がっているけど、心はガラスみたいにもろくて繊細。悪い大人に騙されやすい、人を疑わない性格。
加護してあげないと、愛してあげないと、この子は生きていけない。
「ぼっちぐらいで死なないよ。でも、悪い子だから、きっといつか栄、僕のこと嫌いになっちゃうよ」朝日は真剣なまなざしで桐野を見上げた。
また心が痛くなることを言い出した。自己肯定感が低すぎていつも悪い方ばかりに考える癖。
「悪い子の朝日も大好き。もう君を一人ぼっちにしない。もう何も考えなくていい。全部、僕に任せてくれればいい」
朝日は小さく頷いて、桐野の背中に腕を回して抱き着いてきた。
大好きな、ぎゅっをしてあげる。
こうやって抱きしめていると、朝日の心が分かる。
心が震えている、気持ちがいっぱいいっぱいになって感情の波に流されそうになっている。
もっと愛して欲しいんだね。
背中を擦り、桐野はささやく。
「僕たちの愛は永遠だよ」
うっと涙をこらえる声が漏れた。
「う、うううぅ。ごめん。クリスマスイブなのにまた泣いちゃいそう」
そっと両手で朝日のやわらかい頬を支えて、顔を上に向かせる。
朝日は無理してほほ笑んでいるが、瞳の奥に深い哀しみが見える。
けっして言葉では、言わないが「ひとりぼっちの僕を助けて」、救いを求める懇願。
去年、クリスマスツリーの前でしたファーストキスと同じ軽く唇が触れるだけのキスをしてあげた。
さらに深く抱きしめると誓いの言葉を口にした。
「いつまでも朝日を愛することを誓います」
【了】
シーズン3 少年朝日に続く
いざ実家を訪ねると、宮前の母親が出て丁寧に謝られた。
「ごめんね、桐野君。治は具合が悪くて、会える状態じゃないの」
成金趣味のブランド品のロゴ入りセーターを着た中年女性。中高生の時に何回も会ったことがある。
「僕が診てあげますよ」
「自分の姿を友達に見せたくないって。たぶん会話するのも大変だと思うの」
だったら、なぜ事前に連絡を入れないんだ。昔話でもしようと約束したのに。せっかく仕事帰りにわざわざ世田谷まで車で来たのに失礼にもほどがある。
しかたなく自分のアパートにすごすご帰ることにした。案の定、多摩川大橋で渋滞に巻き込まれアパートに着いたのは七時だった。
家の中は電気が消えて真っ暗で、朝日を呼んでも返事が返ってこない。
「あさーひー」
どこに行ったのだろう。書き置きもない。買ってあげたキッズケータイはリビングのテーブルにほったらかし。
家出? 一瞬、嫌な考えが浮かんで消えた。
どうせ友達の家で遊んでいるのだろう。
鶴見に電話をかける。
「桐野です。鶴見君の家に朝日、遊びに来てないかな?」
「なんだよ、おっさんかよー。うぜーな。ちっ。俺、今、雀荘だよ」
まだ三十前でオジサンみたいな外見でもないのに”おっさん”と呼ばれて心底むかっとした。
(底辺ヤンキー中学生大っ嫌い!! なんでこんなのが朝日の友達なんだよ!)
しかし大人の対応であざとく猫なで声で聞いた。
「朝日がいない。もう暗いのにどこにいるか心配で」
「ネカフェか本屋じゃねーの? スマホに電話入れたら?」
「スマホなんて持たしてないよ。ケータイ、家に置きっぱなしで出かけたよ。また家出かも。鶴見君も心配だろ」
しばらく鶴見は黙っていた。そして早口で言った。
「ちっ。探してやっから、五分後にまた電話かけてくんない?」
がちゃ。
相変わらず言葉遣いも態度も悪い。でも鶴見の約束事は守る律儀なところは桐野は知っていた。
きっかり五分後に電話した。
「桐野です。朝日の居場所見つかったかな?」
「朝日なら中学の近くの公園。じゃあな、おっさん」
***
車を運転して、公園に向かう。中学校の向かいにある寂れた児童公園は家から車で十分もかからない。
公園の横に路駐する。車を降りて金網から覗くと、ブランコに誰かがいるのが見えた。
ああ、いた。朝日だ。一人じゃなくて誰かといる。
男の人が朝日にかがみこんで何かしている。話しかけているのだろうか。
遠いし、公園内に街灯は設置されておらず暗くてよく見えない。
ブランコに乗ってる朝日のとなりで突っ立って話している黒いコートの若い男性は誰? 金網を乗り越えられたらいいんだけど。
遠回りをして、公園の入り口から小さい児童公園に入り、ブランコに真っすぐ進む。
中学生なのにブランコ、一体何を考えているのか。来年十四歳という自覚はあるのか。
「朝日」と声をかけると二人が振り向いた。
近くに歩み寄ると、朝日がキャンキャン吠える小型犬みたいに興奮して、突っかかってきた。
「なんでここにいるって分かったの? 何しに来たんだよ!! 僕のことなんて放っておいてよ。もう帰れよ」
一緒にいる二十代半ばの男が朝日に聞いた。
「この人、誰?」
「朝日の保護司の桐野です」自分から挨拶した。
遠慮ない強い視線で見られて、意味ありげに「そりゃ、どーも」きつい口調の挨拶が返ってきた。
男の人に名前を聞いたが「ただの通りすがりの人」と、素っ気ない返事だった。
桐野は、さっきから男が値踏みする様にジロジロと自分を見ていることに気が付いた。
悪意があるようで薄気味悪く感じた。
「帰ろう」桐野は朝日に声をかける。
「やだ」朝日は不貞腐れてブランコの下の地面をスニーカーの踵でグリグリする。
子供すぎる。
「クリスマスプレゼントもあるし、大好きなイチゴのケーキもあるよ。お腹空いたよね?」
優しい声でなだめすかす。
朝日は、ぶつぶつ言いながらブランコから立ち上がって「しかたないなあ」とコートのポケットに両手を入れた。
「じゃあ、僕、帰るから。今日はありがとう」と朝日がお別れの挨拶をする。
男の人はニッと笑って「またね、バイバイ」手を振って、二人が公園を出るまで、じっと見ていた。
「もー、公園なんて行くから、不審者に声をかけられるんだよ。危ないよ」
「うるさいなー。小学生じゃないんだから、大丈夫だよ」
「知らない人に付いていったりしたらダメだよ」
車に乗ると桐野は朝日の両手を握る。
すっかり冷え切ってる。かわいそうに。
「寂しい思いさせてごめんね」
「別に。ぼっちは慣れてるし」
「宮前には会わないで、すぐに帰ってきた」
「そうなの?」
不思議そうなきょとーんとした顔で聞いてきた。声が少しうれしそうだ。
「うん。ごめんね」
「謝らなくていいよ」もう朝日は怒ってない。
「さっきの人と何してたの?」
「別に。ぼっちの僕のこと心配してくれて話しかけてくれたの」
家に戻って、クリスマスのごちそうとケーキを食べて、プレゼントのスニーカーを渡す。
朝日からのプレゼントはボールペンと付箋。
「職場で使うよ。ありがとう」
「安モノでごめんね」
朝日は、ぷいって横を向いて、ぶっきらぼうに言う。
毎月二千円のお小遣いから買ってくれた総額五百円もしない文具でも嬉しかった。
「子供だからプレゼントはもらうほうでいいんだよ。プレゼントもらえると思っていなかったから、うれしいよ」
夕食後、暖かいリビングに移動しソファーに座ると仕事の鞄から弁護士事務所の名前と住所が印刷された封筒を取り出す。
「これ読んで」
大きな封筒を渡す。
「何これ?」
「未成年後見人申請の書類と親権停止の申し立て」
「よく分からないんだけど」
朝日は難しい顔して書類を読むが、さっぱり理解できない。ずっしり重い書類と難しい法律用語にショックを受けているようだった。
「お母さんから保護者の権利を剥奪して、朝日が大人になるまで僕が法が定めた管理者として面倒をみるということ」
「ずっと一緒にいられるということ?」
「そうだよ。あとは印鑑を押して、弁護士に頼むだけ。来年の三月ごろには正式に僕が朝日の未成年後見人に任命される」
「お母さんはどうなっちゃうの?」
「親権停止でもう朝日とは会えない。やっと親子の縁が切れるよ。よかったね」
朝日のことを散々ネグレクトしてきた母親、そんな人とは縁を切ったほうがいい。母親の資格なし。
「お金かかるよね」朝日の声が震えている。
「心配しなくていいよ」
「いくらぐらいかかるの?気になる教えて」
「二十から三十万ぐらいかな」
朝日は、はっと息を呑んで、金額に驚いている。
「大金だよ」
銀行口座にゆうに八百万を越える貯金のある桐野には大金というほどの金額でもない。
「お金のことは気にしなくていいよ」
「そんな高いプレゼントもらえないよ」
「これは、朝日へのプレゼントじゃないよ。誓いの証明」
朝日が書類と封筒を桐野に返す。やっと母親と縁が切れるので喜んでくれると思ったのに暗い表情をしている。
「お母さん、どうしてるんだろう。また外で浴びるほどお酒飲んでるかも」
「そんなひどい人のことは、もう思い出さないで。母親なんて、もともといなかったと思えばいいよ」
暴力を振るわれたり食事も満足に与えられなかったのに、まだ母親に情があるのか。
「うん……」
「僕が溢れるほどの愛情を注いで養育してあげるからね」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「僕がいないと朝日、死んでしまうから。一人になったら朝日、死んじゃうよ」
まだ一人で生きる術(すべ)なんて知らない。十三歳では到底無理。強がっているけど、心はガラスみたいにもろくて繊細。悪い大人に騙されやすい、人を疑わない性格。
加護してあげないと、愛してあげないと、この子は生きていけない。
「ぼっちぐらいで死なないよ。でも、悪い子だから、きっといつか栄、僕のこと嫌いになっちゃうよ」朝日は真剣なまなざしで桐野を見上げた。
また心が痛くなることを言い出した。自己肯定感が低すぎていつも悪い方ばかりに考える癖。
「悪い子の朝日も大好き。もう君を一人ぼっちにしない。もう何も考えなくていい。全部、僕に任せてくれればいい」
朝日は小さく頷いて、桐野の背中に腕を回して抱き着いてきた。
大好きな、ぎゅっをしてあげる。
こうやって抱きしめていると、朝日の心が分かる。
心が震えている、気持ちがいっぱいいっぱいになって感情の波に流されそうになっている。
もっと愛して欲しいんだね。
背中を擦り、桐野はささやく。
「僕たちの愛は永遠だよ」
うっと涙をこらえる声が漏れた。
「う、うううぅ。ごめん。クリスマスイブなのにまた泣いちゃいそう」
そっと両手で朝日のやわらかい頬を支えて、顔を上に向かせる。
朝日は無理してほほ笑んでいるが、瞳の奥に深い哀しみが見える。
けっして言葉では、言わないが「ひとりぼっちの僕を助けて」、救いを求める懇願。
去年、クリスマスツリーの前でしたファーストキスと同じ軽く唇が触れるだけのキスをしてあげた。
さらに深く抱きしめると誓いの言葉を口にした。
「いつまでも朝日を愛することを誓います」
【了】
シーズン3 少年朝日に続く
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