黒獅子の愛でる花

なこ

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第六章

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「いつまでそんな事をしているつもりだ?其方に王妃としての役割は求めていないが、せめて王妃らしい振舞いぐらいはして欲しいものだな。」

カリンは王妃としての職務をこなしていない。

王妃抜きで王宮内外の職務をこなせるよう人材を配置してあるため、業務が滞るようなことは全くなかった。

カリン自身も王妃としての役割には興味がない。

カリンに必要なのは、誰よりもライの側にいることだけだ。

「ええ、そうですわ。事ですわ。ですから、ライ兄様はこれまでわたくしが何をしようと、黙認していたではありませんか。なぜ今になって、咎めるのでしょう?」

「わからないか?余一人だけならまだしも、ルイにまで悪影響を及ぼしている。ルイまで巻き込むのはやめろ。」

大きな瞳を潤ませ、縋るようにライを見つめるカリンの姿は、何も知らない者が見れば、健気な王妃そのものにしか見えない。

「ルイがいけないのですわ。あの子は、わたくしが誰よりもライ兄様のことをお慕いしていることを知りながら、いつもライ兄様に相応しくない者たちを側におこうとするのです。」

カリンは、ライのことを今でも時折、幼い頃の呼び名で呼ぶ。

「その呼び方はやめろと、何度も申しているだろう?それに、相応しいか相応しくないかを決めるのは、お前ではない。」

「…あの者をライ兄様だけの庭に招き入れたと聞きました。なぜですか?一度だけならまだしも、二度も。いくら物珍しいとしても、ライ兄様には相応しくありません!」

昔からそうだ。

カリンには話が通じない。

「とにかく、ルイにもサフィアにも手出しをするな。このまま王妃という立場でいたいのならな。」

片手で下がらせろと合図を送ると、騎士達は嫌がるカリンをなんとか部屋から連れ出していった。

「…あの陛下、こちらは、」

投げ捨てられたままの薄い布切れを、エリクが指し示す。

「処分しろ。」

「…かしこまりました。今晩は、何人かご用意いたしましょうか?」

何も答えず煙を燻らせ始めたライをそのままに、エリクは部屋を出た。

念の為数人の女たちを例の部屋に呼びつけておく。

ライは一度閨を共にした女には、二度と手を出さない。

毎回毎回違う女たちを呼び寄せるのは、エリクにとっては一苦労だ。





ライの気に入る香を焚かせ、その部屋にライが入るのを見届けると、エリクはようやく一息をつく。

このまま朝まで何事もなければいい。

だが、ライと共にいるはずの女達がエリクの元へ不服顔で戻ってくると、エリクは天を仰いだ。

「…陛下は?」

女達に向かって尋ねる。

「知りません!何もせず、煙草を燻らせてばかりで、急に部屋を出て行ってしまわれたのです!」

「エリク様、どういうことですか?」

「この日が来る事を待ち望んでいましたのに!」

落胆する女達を宥めると、エリクは急いでライの元へ向かった。

香の匂い立つ部屋には、確かに誰もいない。

「陛下は?」

控えていた護衛に声を掛ける。

「ついてこなくて良いと、申しつけられました。」

「一体何方へ?」

「東宮の方へ向かわれるのを確認しました。」

「…東宮?」

こんな時間にルイ王子の元へ?

王子はもうとっくに寝ている時間だ。

ルイ王子でなければ…

エリクは急いで東宮へ向かった。











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