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第3話 友達にならない?
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――――放課後。
誰かを待つとか、僕にとっては絶対にありえないことで、僕の生活には
無縁の事だと思っていた。そもそも、自分から行動を起こしたことすら
生まれて初めての出来事で、僕は君に何て声をかけようかと四苦八苦しながら
真っ白い頭の中を何度も同じ言葉を繰り返しては文字を並べ変えたりしてみるが、
それでも スムーズに言葉が出て来るかわからないほど半分テンパっていながらも
君が校門から出て来るのを待っていたんだ。
「もう、空良ちゃん、あなたは女の子なんだから、もう少し気をつけて
ちょうだいね。もしも、あなたに何かあったら華ちゃんに何て言えば……」
「ああ、そこはお父さんじゃないんだ…」
「もう、からかわないでちょうだい」
華ちゃんこと(猿渡華子《さわたりはなこ》)は空良の実母のことである。
そして、空良の隣を歩くこの女性の名前は愛子《あいこ》。
現在、空良の保護者でありメイドでもある。愛子は人工頭脳を取り入れ、
人間そっくりにできたAIヒューマロイドである。
3年前、華子が病気になった時に空良の父、猿渡幸之助《さわたりこうのすけ》が
メイドとして作りあげた。名付親は華子である。
行動も考え方も全て人間と同じように作り出した最高級特上品だ。今やAIの時代。
愛子は生みの親である幸之助を慕《した》い、華子を友人以上のように接してきた。
誰も愛子がAIヒューマロイドだとは思えないくらい高性能に出来ている。
人間にとって必要な感情である第五感や喋り方などを全て取り入れ成人女性以上の
人工頭脳と きめ細かな動き、骨格、美肌、身体のラインまで全て完璧で優れた性能を
持っている。
「……はいはい。ところでさ、今日…お父さんは?」
「ああ、旦那様は今日も仕事で遅くなるそうです」
「そう……」
「ねぇ、この事はお父さんには?」
「もちろん、ご報告させていただきます」
「……やっぱり…」
空良は愕然《がくぜん》と肩を落とす。
「うふふっ…」
愛子は空良に視線を向け鼻で笑う。
「ジョーダンですよ(笑)」
「……」
校門から空良と愛子が出て来る。
―――が、存在感が全くない大地に2人は気づかず、
その前を通り過ぎて行った。
「あ…」
彼女に声をかけそびれ、タイミングを逃した僕は彼女の後をつけていた。
タタタタタ…… タタタ……
タタタタタ…… タタタ……
足音は彼女の後を追うように小刻みに一定速度を保ちながらついてく。
これを世間じゃストーカーと呼ぶだろうけど、僕はそんな罪悪感など
まるで感じてはいなかった。なぜなら、罪意識などこれっぽっちも自覚して
いなかったからだ。
ピタ……彼女の足が立ち止まる。
ピタ……間隔をあけて歩いていた僕の足も立ち止まる。
彼女が進めば僕も進み、彼女が止まれば僕も止まる。
そんな僕の行動が彼女をイラつかせたのだろう。
鈍感な僕は彼女の微妙な心の変化にも気づいてはいなかった。
「どうかされましたか?」
愛子が空良に視線を向け言葉を発した。
「愛子さん、ごめんなさい。ちょっと、先に帰っててくれる?」
「え、あ、はい。わかりました。あまり遅くならないようにお願いしますね」
「うん、わかってる」
愛子はその場に空良を残し、先を進んで行った。
彼女が僕に視線を向ける。やはり、彼女は僕に気づいていた。
気づかない振りをしていただけだった。
「私に何か用?」
彼女の声色にはトゲがあった。何だか怒っているみたいだ。
「えっと…その…」
僕は彼女の目を直視することができず俯く。
なぜだろうか…。彼女の顔をうまく見ることができない。
「用がないなら行くけど…」
そう言って、彼女は足を進めていく。
彼女の背中が段々と僕から離れていく。
僕はその距離を縮めようと足を進めて行く。
彼女はピタリと足を止め、振り返ると再びこっちに向かって歩いてきた。
「だから、何? 私に何か話があるのならさっさと言ってくれる?」
彼女は淡々とした口調で早口になっていた。
「あの…」
僕のゆったりとした行動と言動が増々、彼女をイラつかせていたことは
わかっていたけど、上手く言葉が出てこない。
「あの…」
「もう、だから何? 私、アンタに付き合う程、暇じゃないんだけど」
「あの…僕と友達になってくれませんか?」
それは、精一杯考えて出した僕の言葉だった。
「ならない」
一刀両断…。彼女の答えはNO。羨ましいくらい白・黒はっきりしている…。
女の子なのに性格は男前だ。
「へ!?」
「じゃ…」
彼女の背中が段々小さく遠くなっていく。
僕は瞬きするのを忘れるくらいポカーンと彼女の背中に見惚れていた。
そりゃ、そうだろう。彼女と僕とでは存在価値が違う。
存在感の無い僕と友達になった所で彼女に何のメリットがあるだろう…。
「―--…やっぱりな…無理だと思ってたんだよな……」
僕の口から溜息が零れた。僕は遠ざかる彼女の背中を追うのを止め、
自宅がある方角へと足を進めて行った。
この時の僕はまだ彼女の本当の姿など何もわかっていなかった……
ただ、僕は君にもっと近づきたくて、君と友達になりたかっただけだった―――。
誰かを待つとか、僕にとっては絶対にありえないことで、僕の生活には
無縁の事だと思っていた。そもそも、自分から行動を起こしたことすら
生まれて初めての出来事で、僕は君に何て声をかけようかと四苦八苦しながら
真っ白い頭の中を何度も同じ言葉を繰り返しては文字を並べ変えたりしてみるが、
それでも スムーズに言葉が出て来るかわからないほど半分テンパっていながらも
君が校門から出て来るのを待っていたんだ。
「もう、空良ちゃん、あなたは女の子なんだから、もう少し気をつけて
ちょうだいね。もしも、あなたに何かあったら華ちゃんに何て言えば……」
「ああ、そこはお父さんじゃないんだ…」
「もう、からかわないでちょうだい」
華ちゃんこと(猿渡華子《さわたりはなこ》)は空良の実母のことである。
そして、空良の隣を歩くこの女性の名前は愛子《あいこ》。
現在、空良の保護者でありメイドでもある。愛子は人工頭脳を取り入れ、
人間そっくりにできたAIヒューマロイドである。
3年前、華子が病気になった時に空良の父、猿渡幸之助《さわたりこうのすけ》が
メイドとして作りあげた。名付親は華子である。
行動も考え方も全て人間と同じように作り出した最高級特上品だ。今やAIの時代。
愛子は生みの親である幸之助を慕《した》い、華子を友人以上のように接してきた。
誰も愛子がAIヒューマロイドだとは思えないくらい高性能に出来ている。
人間にとって必要な感情である第五感や喋り方などを全て取り入れ成人女性以上の
人工頭脳と きめ細かな動き、骨格、美肌、身体のラインまで全て完璧で優れた性能を
持っている。
「……はいはい。ところでさ、今日…お父さんは?」
「ああ、旦那様は今日も仕事で遅くなるそうです」
「そう……」
「ねぇ、この事はお父さんには?」
「もちろん、ご報告させていただきます」
「……やっぱり…」
空良は愕然《がくぜん》と肩を落とす。
「うふふっ…」
愛子は空良に視線を向け鼻で笑う。
「ジョーダンですよ(笑)」
「……」
校門から空良と愛子が出て来る。
―――が、存在感が全くない大地に2人は気づかず、
その前を通り過ぎて行った。
「あ…」
彼女に声をかけそびれ、タイミングを逃した僕は彼女の後をつけていた。
タタタタタ…… タタタ……
タタタタタ…… タタタ……
足音は彼女の後を追うように小刻みに一定速度を保ちながらついてく。
これを世間じゃストーカーと呼ぶだろうけど、僕はそんな罪悪感など
まるで感じてはいなかった。なぜなら、罪意識などこれっぽっちも自覚して
いなかったからだ。
ピタ……彼女の足が立ち止まる。
ピタ……間隔をあけて歩いていた僕の足も立ち止まる。
彼女が進めば僕も進み、彼女が止まれば僕も止まる。
そんな僕の行動が彼女をイラつかせたのだろう。
鈍感な僕は彼女の微妙な心の変化にも気づいてはいなかった。
「どうかされましたか?」
愛子が空良に視線を向け言葉を発した。
「愛子さん、ごめんなさい。ちょっと、先に帰っててくれる?」
「え、あ、はい。わかりました。あまり遅くならないようにお願いしますね」
「うん、わかってる」
愛子はその場に空良を残し、先を進んで行った。
彼女が僕に視線を向ける。やはり、彼女は僕に気づいていた。
気づかない振りをしていただけだった。
「私に何か用?」
彼女の声色にはトゲがあった。何だか怒っているみたいだ。
「えっと…その…」
僕は彼女の目を直視することができず俯く。
なぜだろうか…。彼女の顔をうまく見ることができない。
「用がないなら行くけど…」
そう言って、彼女は足を進めていく。
彼女の背中が段々と僕から離れていく。
僕はその距離を縮めようと足を進めて行く。
彼女はピタリと足を止め、振り返ると再びこっちに向かって歩いてきた。
「だから、何? 私に何か話があるのならさっさと言ってくれる?」
彼女は淡々とした口調で早口になっていた。
「あの…」
僕のゆったりとした行動と言動が増々、彼女をイラつかせていたことは
わかっていたけど、上手く言葉が出てこない。
「あの…」
「もう、だから何? 私、アンタに付き合う程、暇じゃないんだけど」
「あの…僕と友達になってくれませんか?」
それは、精一杯考えて出した僕の言葉だった。
「ならない」
一刀両断…。彼女の答えはNO。羨ましいくらい白・黒はっきりしている…。
女の子なのに性格は男前だ。
「へ!?」
「じゃ…」
彼女の背中が段々小さく遠くなっていく。
僕は瞬きするのを忘れるくらいポカーンと彼女の背中に見惚れていた。
そりゃ、そうだろう。彼女と僕とでは存在価値が違う。
存在感の無い僕と友達になった所で彼女に何のメリットがあるだろう…。
「―--…やっぱりな…無理だと思ってたんだよな……」
僕の口から溜息が零れた。僕は遠ざかる彼女の背中を追うのを止め、
自宅がある方角へと足を進めて行った。
この時の僕はまだ彼女の本当の姿など何もわかっていなかった……
ただ、僕は君にもっと近づきたくて、君と友達になりたかっただけだった―――。
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