義妹の身代わりに売られた私は大公家で幸せを掴む【完結】

小平ニコ

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第67話

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 その思惑通り、ミシェルさんは今の私の言葉を不審には思わなかったらしく、『これで納得がいった』という感じで頷いた。

「自分で自分の犯した間違いを受け入れるのは大切なことよ。今後に活かしなさい」

「はい。それでは、失礼します」

 ……ふぅ。

 とりあえず、危機を切り抜けた。

 でも、困ったことになった。これで、お昼のお弁当の時間に、自然にお屋敷を抜け出すのは難しい……と言うより、実質不可能になってしまった。

 ならばいっそ、すべての仕事を放りだして、今からお屋敷を出てしまおうか。当然、後で大変な叱責を受けることになるが、明日にでもエリナさんが処断されるかもしれないというのに、のんびりしている暇などない。幸い、門番のフレッド様が私の味方なのだ。こっそり外に出してもらうことは造作もない。

 よし、行こう。

 今行こう。

 私は、覚悟を決めるように一人頷くと、平然とした素振りで、裏口からお屋敷を出て正門へ向かおうとした。自分で言うのもなんだが、普段の私は素行が良いので、たった今反省の態度を見せたばかりなのに、すぐさまこの場を抜け出すとは誰も思っておらず、簡単に外に出ることができた。

 さあ、急いでフレッド様のいる正門に行かないと……

 そう思って駆けだそうとしたとき、グイッと肩を引っ張られた。驚いて振り返ると、そこには厳しい顔のアマンダがいた。

「あんた、どういうつもりよ。まさか、朝っぱらからサボろうってんじゃないでしょうね」

 ミシェルさんが執事長代理になるまでは、いつも朝からサボっていたアマンダにだけは言われたくない。……しかし、こんなに早く見つかってしまうとは。最近のアマンダは、私になんて目もくれていなかったくせに、こんな時に限って絡んでくるんだから。

 ただでさえ時間がないこともあり、若干の苛立ちを覚えつつも、私はなるべく冷静に対応する。

「違うわよ。昨日、フレッド様のお手伝いをしたときに、ちょっと気がついたことがあるの。本当は、お昼にお弁当を持っていくときに、ついでに報告しようと思ってたんだけど、私はその役目から外されたから、今、比較的手がすいてる時間に、報告だけでもしておこうと思って」

「ちょっと気がついたことってなに? そもそも、なんの手伝いをしてたのよ」

「それは、フレッド様のプライバシーにかかわるから答えられないわ」

 アマンダは「ちっ」と舌打ちをした。さすがの彼女も『フレッド様のプライバシーにかかわるから』と言われては、これ以上追及はできない。正門に行って帰って来るだけなら10分もかからないので、サボりだなんだと責め立てることも難しいはずだ。
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