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第10話 再来訪
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雨がいつ降りだしてもオカシクない、どんよりとした曇り空のとある昼下がり。
いつもの様に暇そうに店番をしながら、たまを撫で続けてる店主。
その静けさをかき消す様にガラガラっと来訪者を知らせる引き戸の音。目線を入り口の方へ向け、
『いらっしゃい』と迎える店主。
その視線の先には不適な笑みを浮かべたタラコ唇の女性が立っていた。
『こんにちは~』
『や、やあ、先日はどうも。そのタラコ唇、普段から着用してるのかね?』
店主の笑顔が思わずひきつる。
うっすらと頬を染め、
『はい…』と返事するタラコ唇の女性。
気を取り直し店主が、
『ま、まあゆっくり見ていってください』
(間違いなく先日の女性だけど……しかし何か違和感を感じるな……タラコ唇の所為では無さそうだな?)
店内の片隅で商品を見比べてるタラコ唇の女性。
意を決したように、店主に話しかけてきた。
『あの~、此方のハサミと此方のハサミでは…どちらがおすすめですか?』
『え~と、どれとどれで悩んでるんだい?』
と女性の側へ近寄る店主。
耳まで真っ赤に染めた女性が、
『これと、これです!』
と、ショーケースに陳列されてる商品を指差す。
(あぁ、こんな近くまで近寄れるなんて…)
店主は指差された物を見比べて、
『あ~これとこれならどちらも使い心地は変わらないよ、違うのはデザインだけで自分の気に入った方を買うと良いよ?』
と答える。
『じゃあ此方で…』
と、持ち手の色がピンクで形が桜の花弁を連想させる様なデザインになっている方を指差す。
『こちらね?』と言いながら、ショーケースからハサミを取り出し店主はレジへ向かう。
『ありがとうございます』
と商品を受け取り、名残惜しそうに…
『では…』
と言い残し、タラコ唇の女性は帰ろうとした。
その背中に向かって、
『また来てね?』
と店主が声を掛ける。
タラコ唇の女性が振り返り、頬を染めた。
『はい、また来ます』
とあの良く似合う笑顔で返事してきた。
引き戸を開け外へ出ようとして立ち止まり…
「あ、雨が……」
と呟く。
『姉ちゃん傘は?』
と店主が問いかけると、
『折り畳み傘を持ってます』
と鞄から傘を取り出し、傘を拡げて帰って行く。
「流石にこの曇り空で傘を持っていないやつなんか居ないか…」
と店主は呟く。
暫くしてガラガラガラっと引き戸が勢い良く開き、店内に飛び込んでくるいつもの青年。
『いやー参った!急に雨が降ってくるんだもんな』
と大きな独り言。
いつも青年をからかって楽しんでる店主もさすがに呆れ顔で、
『あの曇り空だといつ降ってきてもオカシクなかっただろう?』
青年に言ってやった。
青年は、聞いていたのかいないのか…全く関係の無い話をする。
『そこでやけにデカイ唇をした女と会ったけど、お客さん?まあ良いや、それよりも傘を出してくれよ』
と、傘の催促。
『あぁついさっきまで居たんだよ』
と傘を出す店主。
傘を受け取り、
『じゃあまた来るよ』
と言い残し、よほど慌ててたのか早々に帰っていった。
いつもの様に暇そうに店番をしながら、たまを撫で続けてる店主。
その静けさをかき消す様にガラガラっと来訪者を知らせる引き戸の音。目線を入り口の方へ向け、
『いらっしゃい』と迎える店主。
その視線の先には不適な笑みを浮かべたタラコ唇の女性が立っていた。
『こんにちは~』
『や、やあ、先日はどうも。そのタラコ唇、普段から着用してるのかね?』
店主の笑顔が思わずひきつる。
うっすらと頬を染め、
『はい…』と返事するタラコ唇の女性。
気を取り直し店主が、
『ま、まあゆっくり見ていってください』
(間違いなく先日の女性だけど……しかし何か違和感を感じるな……タラコ唇の所為では無さそうだな?)
店内の片隅で商品を見比べてるタラコ唇の女性。
意を決したように、店主に話しかけてきた。
『あの~、此方のハサミと此方のハサミでは…どちらがおすすめですか?』
『え~と、どれとどれで悩んでるんだい?』
と女性の側へ近寄る店主。
耳まで真っ赤に染めた女性が、
『これと、これです!』
と、ショーケースに陳列されてる商品を指差す。
(あぁ、こんな近くまで近寄れるなんて…)
店主は指差された物を見比べて、
『あ~これとこれならどちらも使い心地は変わらないよ、違うのはデザインだけで自分の気に入った方を買うと良いよ?』
と答える。
『じゃあ此方で…』
と、持ち手の色がピンクで形が桜の花弁を連想させる様なデザインになっている方を指差す。
『こちらね?』と言いながら、ショーケースからハサミを取り出し店主はレジへ向かう。
『ありがとうございます』
と商品を受け取り、名残惜しそうに…
『では…』
と言い残し、タラコ唇の女性は帰ろうとした。
その背中に向かって、
『また来てね?』
と店主が声を掛ける。
タラコ唇の女性が振り返り、頬を染めた。
『はい、また来ます』
とあの良く似合う笑顔で返事してきた。
引き戸を開け外へ出ようとして立ち止まり…
「あ、雨が……」
と呟く。
『姉ちゃん傘は?』
と店主が問いかけると、
『折り畳み傘を持ってます』
と鞄から傘を取り出し、傘を拡げて帰って行く。
「流石にこの曇り空で傘を持っていないやつなんか居ないか…」
と店主は呟く。
暫くしてガラガラガラっと引き戸が勢い良く開き、店内に飛び込んでくるいつもの青年。
『いやー参った!急に雨が降ってくるんだもんな』
と大きな独り言。
いつも青年をからかって楽しんでる店主もさすがに呆れ顔で、
『あの曇り空だといつ降ってきてもオカシクなかっただろう?』
青年に言ってやった。
青年は、聞いていたのかいないのか…全く関係の無い話をする。
『そこでやけにデカイ唇をした女と会ったけど、お客さん?まあ良いや、それよりも傘を出してくれよ』
と、傘の催促。
『あぁついさっきまで居たんだよ』
と傘を出す店主。
傘を受け取り、
『じゃあまた来るよ』
と言い残し、よほど慌ててたのか早々に帰っていった。
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