何でも屋さん

みのる

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第19話 フィギュアを買う兄ちゃん

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何でも屋に忍び寄る一つの影、その背中にはリュックサックが背負われている。
ガラガラガラっ!、引き戸が開かれ無言で入ってくる眼鏡をかけた青年。

店主が何時ものように、

『いらっしゃい、ゆっくり見てってよ』

と決まり文句を言う。

眼鏡の青年が、

「· · ·フィギュア…有りますか?」

と小さな声でボソボソ言う。

店主は聞く。

『ああ、有るよ。どんなのが欲しいんだ?』

眼鏡の青年が、

「何でもいいから萌えるのを出して…」

と答える。

店主は、

『こんなんで良いのか?どれでも一つ6千円だけど…(萌えの好みがよくわからないな…)』

店主は適当にフィギュアを10体程取り出した。
ゴスロリ衣装の少女、メイド衣装の眼鏡をかけた少女、くノ一、鎧を着用し剣を構えた少女、某アニメの女性キャラクター、某格闘ゲームの女の子キャラクター等多種多様のフィギュアが、所狭しとカウンターの上に並べられた。

店主が、

『これらは特別製で、フィギュアの本体は柔らかい素材で出来ていて、服は本物の生地から作られ鎧や武器等は金属製だ』

と得意気に言う。どのフィギュアも様々なポーズを取っており、今にも動き出しそうな程生き生きとしている。

眼鏡の青年はこれらのフィギュアを一目見て気に入ったのか、何も言わず…無造作に6万円をカウンターの上に置き、フィギュアをリュックに詰め込む。
帰ろうとする青年が目敏くCafeスペースを見つけ、そちらへと移動し席に着くとおもむろにフィギュアを取り出しテーブルの上へ並べはじめる。
フィギュアを並べ終えた眼鏡の青年はそれらをニヤニヤしながら見比べていた。

一方カウンターではフィギュアが全て売れた· · ·と思いきや、ポージングをとっているボディービルダーのフィギュアだけが取り残されていた。
店主が苦笑いしながら、

『うん、これは萌えでは無かったか…』

とボディービルダーフィギュアを収納する。
 
そこへガラガラガラっ…と新たな客が来店した。
家電を買いに来た新婚夫婦の旦那さんが、

『こんにちは、先日はどうも』

と挨拶してきた。

店主が、

『おや、あんたは…音美さんの紹介で来た人だね、まあ、ゆっくり見てってよ』

と声をかける。

旦那さんが店主に、

『先日買い忘れた物が有って…それを買いに来たんだ、え~とポットとコーヒーサーバーをください。それとここで出してる珈琲豆を買う事は出来ますか?』

要件を告げた。

店主は、

『ポットとコーヒーサーバーは、合わせて2万4千円だ。それと珈琲豆だけど…あれは市販の豆をここでブレンドしてるだけだから、悪いけど同じ珈琲豆ってのは無いんだよ』

とすまなそうに言う。

旦那さんは、

『そうですか…あの珈琲美味しかったから、残念です。それと2万4千円でしたね?』

お金を渡す。
続けて、

『無いものは仕方ない、アイス珈琲を飲んで行くか…』

と言いながらCafeスペースの方へ視線を送った。そこには先程の眼鏡の青年が、フィギュアを見ながらニヤニヤしてるのが目に付き…一瞬固まる旦那さん。

店で飲む気を無くしたのか旦那さんが残念そうに

『やっばり止めときます· · ·今日はもう帰りますのでその代わりにと言ってはなんですが、缶コーヒーをください』

と店主に注文する。

店主は答える。

『有るけど…こっちの方が良いんじゃないかな?』

と透明のプラスチックケース入りのアイス珈琲にストローを挿したのを取り出し、

『うちで出してるアイス珈琲を容器に入れたものだ』

と言う。

旦那は、

『それの方が良いです!値段は幾らですか?』

店主は気前良く、

『この前沢山買ってもらったし、サービスにしとくよ』

と答えた。

旦那は、

『あ…なんだかすみません· · ·また何か欲しいのが有れば買いに来ます』

と言い残し帰っていった。

続いて眼鏡の青年も満足したのかフィギュアをリュックに入れ、帰っていった。

店内で1人になった店主が、店の奥に居る奥さんに向かって、

『お~い、明日散歩に出かけたいんだけど…少し店番をしててくれるかい?』

奥さんから、

『あぁ良いよ、行っといで』

と返ってきた。
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