新☆何でも屋

忘れられていた「春」のとあるお客さん。

桜もそろそろお役目を果たした！とばかりにその姿を地に落とし始めた頃……そういえばそのお客さんは「新☆何でも屋」を訪れた。

どうやら店主にも覚えられてはいなかったらしい、気の毒なお客さんである。

ガラガラガラっ‼‼
『いらっしゃい！お、今日も来てくれたんか？』
此処の店主中村に顔を覚えられる程通っているようではあった、その女子客。肩くらいの黒い髪にやや(残念な)地味な顔立ちである。
『こんにちは♪』
(でもその後には忘れ去られた……OTL)

その女子客は暫くそこをウロウロと彷徨っていたが……やがて思い切ったように口を開いた。
『あのぉ………こちらの「焼肉弁当」……美味しいですよね？それを……定期的に幾つか欲しいんですが……少しだけ、お安く手に入りませんか？』


その女子客は店主中村に、何やら弁当を安く手に入れられないか交渉を試みているようである。
”兄ちゃん少し負けて下さいな♡”的な視線でその女子客は懸命にその僅かな色気で(？)店主を口説こうとする。

そこで店主中村も交渉に乗ってくる。
『でも姉ちゃん、3つや5つくれぇじゃあ…安くは出来ないぞ？幾つ買うんだ？』
……ケチだ……‼さすがは我らが(？)店主中村！素晴らしい程のケチっぷりだ……
それを聞いて悩んだ女子客は、店主に両手を広げて突き出した。
そこで店主中村もニヤリと微笑わらう。

『10個か……よし、1つ400円にしてやろう！』
そうしてその女子客は、弁当を定期的に10個買うのを条件に……500円(定価)の焼肉弁当を400円で仕入れる事に成功したのである。そして更に続ける。
『あの……色んなお弁当を後1つずつお願いしたいのですが……シャケ弁とか幕の内弁当とか……』

『うちでは色々取り扱ってるけどよ？……どれにするんだ？』
更に店主中村は答える。

『そうですね……シャケ弁当、のり弁当、幕の内弁当、日の丸弁当は固定で……その他を…後2つくらい…出来れば日替わりで(出来れば格安で……)お願いしたいのですが……ま、毎日注文しますので………』

ー残念女子、交渉成立ー

『よぉし！幕の内弁当は400円、のり弁当300円、シャケ弁は400円、日の丸は100円で(※他は省略)どうだぁ～～～っ‼』
『よろしくお願いします‼』

店主中村と女子客はガッチリと手と手を握り合った。


その女子客を見送った後、店主中村は呟く。
「あの子……まだ若そうなのになんか移動販売でもやんのかな？」
………けしてその女子客の貧乳具合に釘付けになっていた訳ではないぞ？