ハッピー悪役ライフ

第一章

1、悪役令嬢、改心しない。

　転生ってしたことある？

　何を言っているのか、分からないと思う。私だって分かっていないのだから。それでも現実は待ってくれないらしい。…私はよくあるライトノベルのように、転生したようだった。

　15歳の誕生日。朝目覚めると、漠然と私の中には15年生きてきたルビー・アルファイアとしての記憶と、日本で暮らし人生を謳歌した女性の記憶があることが感覚的に理解した。日本で暮らしていた女性の記憶…前世はあまりにも遠い記憶のようで霞みがかってはいるが、大往生した豪胆な女性だったようだ。長い人生が急に私の中にある影響なのか、私は前世の思考、性格が強く出ているのが現状である。

　それはそれとして、だ。そんな前世を思い出したことよりも今の私の人生の話を聞いてほしい。

　私の名前はルビー・アルファイア。年齢は15歳でジュエリー王国公爵家の一人娘。家族構成は1つ上の兄と1つ下の弟がいる。父と母は恋愛結婚ではないものの、パートナーとしてお互いを信頼している。…らしい。あまり顔を合わせないので知らない。

　父はあまり子ども達に興味無いらしく、何をしようと関心なし。ただ、何かをするにあたっての必要経費は出してもらえるため、お金で解決出来る物事で悩んだことは無い。母は息子達にか興味がないのでよく人となりを知らない。

　さて。そんな権力を持っているのにも関わらず、親から愛情を貰えなかった子どもはどうなると思う？

「も、も、申し訳ございませんッ！」

　…水を数滴こぼしただけで、この世の終わりか？っていうぐらい恐れられるようになる。

　いや、なんで？なんでそうなっちゃったの？いや、普段から気に入らないことがあれば即鞭打ちしたり側仕えから汚物処理の場所まで嫌がらせのように左遷したりしたのは私なんだけどさ。

　前世を思い出した今、思う。…なんでそこまでするねーーーん！！！！

　そんなことを言っていても現実は待ってくれないわけで。私は目の前で顔面蒼白でガタガタ震えているメイドに何かしらのアクションを起こさなければならない。

「お、お嬢様…？」

　さっと右腕をあげる。

「…仕事の出来ない人間はいらない。」

　私がそう言うのと同時に他の人間がメイドを連れていく。ああ、なにか喚いてるなぁ…そう思うけれどそこまでだ。

　よくある転生小説では、私のこの悪役街道突っ走ってる現状を帰るためにメイドに謝ったり改心したと言ってみたりしているけれど、正直、嫌じゃない？あくまでも、私は私を折るぐらいなら断罪だのなんだの潔く散ってやるわ！！って気持ちだし。

　考えてもみてよ。生きてるだけでイージーモードの超お偉い身分の令嬢ですよ？なんで身分の下の人間にペコペコしなきゃいけないの？ふんぞり返ってたご令嬢が改心？私なら恥ずかしさで爆発するね。

　ただ。前世を思い出した私は、一応倫理観があるので仕事が出来なかった人に対して鞭打ちなどの体罰はしない。

　その代わりに仕事が出来ないやつは全員クビ！という方針に舵を切った。それが一番楽だし。仕事をミスするやつは割と固定されることもあり、体罰等で恐怖心を煽ってもミスするやつはミスをするので意味が無い。あと考えるのもめんどくさい。


　＿＿＿＿＿そんな怠惰7:策略3の考えがとんでもない勘違いを生み出しているだなんて、そんなことは一切考えず、今日も暴君(？)ルビーの1日が始まる。