学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第3部 群雄割拠編

第21話 新風!ソンサク起つ!

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 コウユウ先輩救出を終えた俺達三人はソンケンの元を訪ねるため、東校舎に渡った。

「そういえばあれからソンケンの見舞いにも行ってないな。大丈夫だろうか」

 空手部部長だったソンケンは、俺達と共に反トータク連合に参加し、そこでリョフとの一騎討ちに敗け、重傷を負っていた。

「もう退院して学園に通っているという話ですが、腕の完治にはまだ早いでしょうか?」

「あいつはオレの一撃にも耐えた頑丈なやつだからな。きっと大丈夫だぜ」

 ソンケンはかつて、チョーヒの一撃に耐えた数少ない男だ。そう簡単にくたばるとは思えない。

「お、リュービ兄妹じゃない。どうしたん?

うちに用?」

 ツインテールに三日月の髪飾りを着けた細身の女の子が俺達に気づいて挨拶してくれた。

 この少し喋り方に訛りのある彼女はソンケンの妹・呉孫咲香くれまご・さくか、通称ソンサク。


 彼女も兄・ソンケンと共に反トータク連合で一緒に戦った生徒だ。

「ソンサク、ソンケンの様子を見に来たんだ。もう学校に来てるという話だけど、怪我は大丈夫かい?」

 ソンケンの名を聞くなり、ソンサクの顔は曇り、うつむいてしまった。

「兄者は…死んだ!」

 予想外の言葉が彼女の口から飛び出した。

「え、そんな腕を折っただけだろ?死んだ?どういうこと?」

「着いてきな。かつて兄者だったものを見せてやるけー…」



 俺達はソンサクに言われるまま、校舎裏に到着すると、ソンサクに促され校舎の影から裏庭の方を覗いた。

「はい、ソンケン君、あーん」

「あーん」

「ソンケン君、美味しい?」

「うん、美味しい。エイちゃんのお弁当は中原一だよ」

「もーソンケン君たら♪」



 そこには、長い髪の女生徒の傍らに両腕にギプスをつけたソンケンが確かにいた。確かにあれは俺のよく知る風貌のソンケンなのだが、俺のよく知らない表情のソンケンがそこにいた。

「なに…あれ?」

「かつて兄者だったものじゃ」

 神妙な面持ちで答えるソンサク。いや、今もソンケンだと思うよ。雰囲気はだいぶ変わったようだけども…

「兄者が骨折で不自由してるところをお世話してもらったとかで付き合いだして、部長も正式に引退したのもあって一日中イチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャイチャ!

 もう我慢できん!あんなのが兄なんてうちの恥じゃ!」

「まあまあ、落ち着いて」

「とにかく、兄者は腑抜けに成り下がった。うちが空手部を率いていかなきゃいけないんじゃけど…」

「ソンサク…」

「うわ、あの二人あんなことまでやってるぜ」

「まあ、学校の裏庭で大胆ね」

「こら、二人ともそんなに覗かない!」

 今、俺がかっこよく決めようとしてたのに。

「やはり、あの男殺す!」

「ソンサクも落ち着いて!」

 ソンサクを引き留めたところで、俺達は裏庭を後にした。



「え、空手部の新部長ってソンサクじゃないの?」

 ソンケンが引退して部長はソンサクが引き継ぐという話だったが、事情が変わったのか。そういえば先ほど、言葉に濁していたがそういうことだったのか。

「うん、エンジュツがうちがまだ一年生なことを理由に部長職を他に渡しちゃった。

 今はうちの従兄で二年のソンフンってのが部長をやってる。

 おかげでうちも空手部の一部員。とても選挙戦とかそんな状況じゃないんよ」

 ソンサクは寂しそうにそう語った。

「ならば取り戻しましょう」

 そう言って俺達の会話に入ってきたのは、金髪の長い髪に、透き通るような白い肌、西洋人形のような整った目鼻立ちで、頭には黒いレースのついた帯飾りをつけ、フリルのついた黒いロングスカートに黒いハイヒールを履いた美女だった。

「ユーちゃん、体はもう大丈夫なの?」

 親しいのか、ソンサクがゴスロリ風の衣装を着た金髪美女に愛称で話しかけた。

「はい、サクちゃん、今日からまた一緒に登校できます」

 ゴスロリ美女もニコリと笑い返す。

「紹介するね、この子はリュービ。連合軍で一緒に戦った仲よ」

「どうもはじめましてリュービです。こちらは妹のカンウとチョーヒ」

 気後れするような美人で、少し挨拶が固くなった。カンウ・チョーヒも合わせて頭を下げる。

「お噂はかねがね聞いてます。私はサクちゃん、ソンサクの幼馴染で周瑜姫あまね・ゆきと申します。シュウユとお呼びください」


「ユーちゃんは体が弱くて入院してたんだ。だから連合軍にも参加していないんよ」

「最近は大分良くなったので今日から学校に来ることになりました。どうぞよろしくお願いします」

 スカートの両端を持ち上げてお嬢様のように挨拶する様に、俺は軽く感動を覚えた。本当にこんな挨拶する人いたのか。

「そういえばユーちゃん、さっき空手部を取り戻すって言ってたけど…」

「はい、取り戻しましょう。そしてサクちゃんが生徒会役員になるんです」

「取り戻して生徒会役員に?無理だよ」

 シュウユは静かに、そして力強く話を続けた。

「エンジュツの監視下にあるのであれば交渉して取り戻せばいいのです。そして交渉材料ならもう手にしているはずです」

「交渉材料?

 …そうか、会長の承認印!

 …でもダメだよ。せいぜい形だけの部長になるだけで、結局エンジュツの配下じゃ」

「確かに会長の承認印では形だけの部長でしょう。だからもう一つ条件をつけるのです。

 エンジュツはワガママで反対派も多く、今の勢力はエンショウより劣勢です。

 そこでサクちゃんがエンジュツに代わり、その反対派を退治するのです。

 戦争の指揮中ならある程度エンジュツの目から逃れられます。そうして退治した勢力を自分の勢力に組み込み、独立するのです」

「そんな上手くやれるかな?」

「サクちゃんならやれます。それに私も協力します。

 リュービさんたちも、まさかここまで聞いてそのまま立ち去ったりしませんよね?」

「え、あ、はい」

 シュウユのニコリと笑った顔になにやら怖いものを感じた俺は思わず同意してしまった。いや、手伝う気ではあったんだよ、本当だよ。

「今、ソンフン率いる空手部はエンジュツの命令で水泳部と戦っている最中という話です。最初に水泳部を倒しましょう」

「ありがとうユーちゃん、リュービ、カンウ、チョーヒ。よし、まずは空手部を取り戻すよ!」

「おー!」



 ソンサクは、エンジュツに生徒会長の承認印の引き渡しと反エンジュツ派討伐を条件に空手部の主将に就任した。

 特に会長の承認印を見たエンジュツの喜び様は凄まじく、既に会長になったかのような有り様であった。

「見なさい、会長の承認印よ。これでまた会長に一歩近付いたわ。いっそのこと会長代理になろうかしら」

 濃い目の紫の長い髪に、大きな金色のリボンをつけ、高校生にしては幼さの残る顔付きに、胸だけ大人顔負けに育った子供の様な小柄な体つきの少女・エンジュツは承認印を高らかに掲げ、部下達に見せびらかす。

 そこに眼鏡をかけた真面目そうな男子生徒が歩み出て、エンジュツを諌める。

「いけません。今はオーイン殿が生徒会長代理務めておられます。今、会長代理を名乗れば周りのみんなが敵になります」

「むー。エンショー、わかったわよ。

 まあ、オーインがいる間は我慢したげるわ。いる間はね…チョウクン、準備の方はいいわね?」

「はい、着々と進んでおります」

 エンジュツに名を呼ばれて、セミロングの灰色の髪に、フリルのついたヘッドドレスをつけ、エプロンドレスを着たメイドの様な出で立ちの少女・チョウクンは力強く答えた。

「ふふーん、会長になるのはこの私なんだから。見てなさいエンショウ、ソウソウ!」
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