学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第4部 カント決戦編

第43話 暗躍!トージョーの思惑!

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「おはよー!アニキ!」

「兄さん、おはようございます」

「…」

「おい、アニキ、聞いてんのか!」

 お団子ヘアーを頭の左右につけた小柄な女生徒・チョーヒが俺の肩を掴んで強引に振り向かせて、顔を覗きこんできた。

「ん、あ、ああ、チョーヒ、それにカンウ、おはよう…」

 チョーヒの傍らには長く美しい黒髪をなびかせたお嬢様な雰囲気を漂わせた女生徒・カンウが不安そうにこちらを見つめていた。

「兄さん、最近は放課後も遅くまで残っているようですし、そんなに委員会の仕事が大変なのですか?」

「え、ああ、委員会だね。そうだな、なかなかすんなり帰れなくてね…」

「まあ、オレたちがアニキを生徒会に、って盛り上げた結果だから、あまりエラソーなこと言えた立場じゃないけどさ、あんまり無理しないでくれよ」

 カンウもチョーヒも、俺を、このリュービを見込んで兄と慕い、生徒会役員にと奮闘してくれた。それなのに俺は…

「おい、リュービ、聞いているのか!」

「うわ、ソウソウ、な、なんだっけ?」

「リュービ、会議は真面目に聞けよ」

 そうだ、俺はカンウ・チョーヒとの兄妹間も委員会の仕事もどちらも中途半端で身が入っていない。こんなことではダメだ。それはわかっているのだが…

「お楽しみは会議が終わるまで待て。今日もたっぷり可愛がってやるぞ」

 ソウソウは俺の耳元でそう囁いた。

 俺はソウソウと一線を越えてから、完全に言いなりになってしまっていた。

 生徒会長有力候補に協力して生徒会役員の席を貰う。確かにそんな話もあった。

 しかし、これではソウソウの犬じゃないか。

 だが、俺は今の状態を受け入れてしまっている。

「では、将来的にはカンウ・チョーヒにも何かしらの役職につけるということで…」

「え、カンウとチョーヒに?」

「おい、リュービ、ホントに聞いてなかったのか?

 カンウ・チョーヒは共に高い戦闘力を持っている。学園運営に役立てるべきだろう。まだ荒削りなところもあるが、その辺りは育成していけばいい話だ。

 しかし、私の会計代理の権限ではすぐに役職を用意できない。だから追々な」

 確かにカンウ・チョーヒの強さは抜きん出ている。ソウソウが二人に目をつけるのも当然だ。それに将として育てるというなら願ってもない話…なのか?本当にそれでいいのか?

「後、文芸部のチンケイ・チントウ兄妹、ビジク、ビホウ姉妹にも何かしら役職を用意するべきだろうな」

 ソウソウの口から俺のところにいた人物の名がポンポン出てくる。

「ソウソウ、カンヨーにも何かしら役職を与える気なのか?」

「カンヨー?誰だそいつは?」

 何気なく聞いてみたが、どうやらソウソウはカンヨーを知らないらしい。まあ、あいつはいるんだかいないんだかよくわからない奴だしな。今もどこでどうしているのやら…

 ソウソウは手元の資料をパラパラとめくる。

「あー、こいつか。うーん、学校の成績は奮わず、活躍も特になし…か。こいつに役職は必要ないだろう。まあ、お前が必要だと思うなら任せる。

 さて、そろそろ時間だな。では、今日の会議はここまで、解散」

 会議が終わり、臨時生徒会の面々が去った後、俺の委員会とは別の仕事が始まる…

「リュービ、舐めろ」

 俺は言われるがままにソウソウのスカートの中に頭を埋める。

「んっ…んっ…うまくなったじゃないか」

 その時、ソウソウのスマホが鳴り、なにやら受け答えをした。

「すまんな、用事が入った。続きはまた今度してやる。

 一人でするんじゃないぞ」

 ソウソウは俺にそう告げるとと外出してしまった。一人残された俺は帰宅するため臨時生徒会室の戸締まりをした。

 俺は役職持ちとなり、今、カンウ・チョーヒ達にも役職を任せると言う。選挙戦の初めの頃から比べたら随分な出世だ。

 しかし、この状況は、俺が、俺たちが目指した目標への道なのだろうか…

「リュービさん、ちょうどいいところに」

 俺が教室の鍵をかけ、帰宅しようとすると、見ず知らずの女生徒に話しかけられた。

「えーと、あなたは?」

「私は東條沙奇とうじょう・さき。トージョーです。学園長室に荷物を運ぶのに男手が欲しかったんです。手伝っていただけませんか?」

「ええ、そういうことでしたら」

 俺は、長い髪を2つ結びにしたその女生徒・トージョーさんと共に荷物を抱えて学園長室へ向かった。

 臨時学園長室-かつてトータク残党のリカク、カクシに学園長が襲われた事件を受け、臨時生徒会室の隣の空き教室を改装して作られた部屋だ。

「どっこいしょ。

 これで荷物は全部ですか?」

「ええ、ありがとう。助かったわ」

 スーツ姿の、まだ少し顔に幼さの残る、髪をサイドアップにまとめた、二十代前半くらいの女性。彼女が現後漢学園の学園長、竜宝協子りゅうほう・きょうこ、通称、リューキョー学園長だ。

 前学園長がスキャンダルで引退後、娘である彼女が新学園長に就任した。

 しかし、高校生の俺が言うのもなんだが、若い学園長だな。大学卒業したばかりといった感じだ。

「学園長、私ここのゴミ捨ててきますね」

「ええ、トージョーさん、お願いね」

「じゃあ、俺もそろそろ…」

「あ、待って。せっかくだからお茶でも飲んでいって」

「え…じゃあ、お言葉に甘えて」

 まあ、あの様子ならすぐにソウソウに呼び出されることもないだろう。俺は軽い気持ちでリューキョー学園長の誘いに応じた。

「リュービ君、あなたとは学園長室を襲撃された時以来ですね。

 あの襲撃の一件ではお見苦しいところをお見せして、本当にごめんなさい」

「いえ、あんな怖い目にあったのですから仕方ないですよ」

「でも、私は大人なのに何の役にも立てなくて…あなたや…ソウソウさんには助けられるばかりで…」

 リューキョー学園長はうつむきながら答えた。なんとなくだが、ソウソウの名に少し曇るものを感じた。

「いえ、俺なんてあの場に居合わせただけで、ほとんどお役に立てず…ソウソウの功績ですよ」

「そうですね…ソウソウさんの…」

「俺はソウソウの許に来て改めて彼女の強さを感じました。彼女は強く、賢く、そして恐ろしい…彼女のあの全てを従えようとする性分、そしてそれを叶えるために手段を選ばないあの性格…その全てが怖い…」

 俺の頭に“乱世の奸雄”という言葉が浮かんだ。かつて先輩から言われたソウソウの評ーそうか、これがあの時言っていた乱世の奸雄というものなのか。

「大丈夫ですか、リュービ君?」

 気付けば学園長が俺の隣に座り、手を握ってくれていた。

「すみません、俺は大丈夫です。

 それより、学園長。あなたもソウソウが怖いのでは在りませんか?」

「そんな…そうですね、私はソウソウさんが怖いのかも知れません。

 私はこの春大学を出たばかりで、すぐ父の後を継いで学園長なんて大任に就くことになってしまって…右も左もわからないままトータク君の言いなりになってしまい学園の皆さんには多大な迷惑をかけてしまいました。

 そして今、ソウソウさんの庇護下ひごかにいて、同じ轍を踏んでいるのではと不安にかられる日々です…」

 俺はうつむく学園長の手を握り返した。

「わかります。確かにソウソウはトータクとは違います。ですが、その歩み道の先がトータクと交わるのではないかと、ふと思うときがあります」

「ごめんなさい…こんなこと生徒に言うべきことじゃないのに…」

「いえ、俺で良ければ相談に乗ります。力にはなれないかも知れませんが…」

「ありがとう、リュービ君。あなたが側にいてくれるととても安心できるの…」

 俺は学園長と遅くまで語り合った。

「こんな遅くまで引き留めてごめんなさいね」

「大丈夫ですよ。俺で良ければいつでもお相手になりますよ」

「いつでも…なら、あの…明日もここに来て欲しいのだけど、ダメかしら?」

「構いませんよ。では、明日も放課後に」

「本当に!じゃあ、明日も来てね!」

「はい。では、失礼します」

 だいぶ遅くなってしまった。結局、ソウソウからは連絡がこなかったな。

「ご苦労さん」

「うわっ!ト、トージョーさん!ま、まさか聞いてたんですか?」

「安心しな、私は味方だ。誰にも言いはしないよ。

 しかし、随分長いこといたね。二人で仲良くヤってたのかい?」

「な、ヤ、ヤってません!」

「私は別に何とは言ってないけどね」

「からかわないでください、トージョーさん。てか、何で外で待ってたんですか?」

「はは、ごめんごめん。実は今回、君と学園長を引き合わせるのが私の目的だったのさ」

 トージョーさんはいきさつを語りだした。

「私は協子姉…学園長とは親戚でね。子供の頃からよく可愛がって貰ってたんだ。学園長は大学卒業後、教師になるはずだったんだけど、前学園長の不祥事があって、急遽、学園を継ぐことになった。

 本当は学園長の兄が継ぐはずだったんだが、女性の方が悪評が和らぐからとトータクが無理矢理…そのせいか家族ともしっくりいってないらしい。

 社会人経験もろくにないまま、突然、学園長になったもんだから、他の教師とも上手くいってないみたいで、味方を作ってあげたかったんだよ。

 どうも、あなたの事を気に入ってるようだったから、ちょっと近づけさせてもらったよ」

「そうだったんですか…」

「騙すようなことをして申し訳ない。

 でも、もし君が嫌でないのならこれからも学園長の話し相手になってあげて欲しい」

「わかりました。学園長にもまた会いに行くと約束しましたし」

「協子姉さんをお願いね、リュービ君。

 でも、ヤるなら鍵は閉めてね。学校だから音はそんなに漏れないと思うけど」

「だからヤりませんって!」

 その日から俺は度々、学園長室を訪ねるようになった。ソウソウとの一件でカンウ・チョーヒと顔を合わせるのが気まずかったのもあったし、ソウソウはエンシュウ対策で次第に忙しくなり、会う時間が少なくなっていたのもあった。

「学園長、失礼します」

「リュービ君!今日も来てくれたのね。

 さぁ、座って。今お茶入れるから!」

 髪をサイドアップにまとめた若き学園長は俺を笑顔で出迎えてくれた。

「ありがとうございます。学園長」

「そんなに畏まらないでいいのよ。

 名前も学園長じゃなくて、皆みたいにリューキョーでいいわ。

 なんだったら…その…協子でも…」

「そ、それは…」

「そ、そうよね。私ったら生徒に何お願いしてるのかしら」

「じゃ、じゃあ、リューキョー…学園長で」

「リュービ君、もう一度名前呼んでもらっていいかな?」



 校内・某所~

 髪を2つ結びにした女生徒・トージョーの許に別の生徒が訪ねてきた。

「待ってましたよ、オウシフク」

「遅れてすみません。それで首尾の方は?」

「リュービと協子姉さんはだいぶ親密になったようです。もう少しで我らの戦力に出来ます」

「しかし、学園長と生徒を親密にさせるのは大丈夫でしょうか?その…間違いとか」

「協子姉さん、男性慣れしてませんしねぇ…まあ、一線越えればそれはそれでリュービはより学園のために働いてくれるでしょう。

 全てはこの学園をあるべき姿に…ソウソウの手より取り戻すために」
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