学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第4部 カント決戦編

第57話 見参!万敵の義妹!

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「ソウソウさん!」

 ソウソウ本陣にカンウが声を張り上げて入ってきた。

「偵察から戻ったか、カンウ」

「リュービ討伐にソウジンを出陣させたと聞きました!私にも出陣許可をください!」

 美しい黒髪の女生徒・カンウは挨拶もそこそこに本題を切り出した。

 カンウのその眼は真剣であった。

「ダメだ…と言ったところで聞き分ける気は無さそうだな。

 良いだろう、出陣を許可する」

「ありがとうございます!」

 カンウは深々と一礼すると、すぐに本陣を飛び出していった。

 ソウソウの側にいたおさげ髪の女軍師・ジュンユウがソウソウに訊ねる。

「行かせて良かったのですか?

 カンウはもう戻ってこないかもしれませんよ?」

「恋する乙女の邪魔なんて野暮はできんよ」

「あの怒り顔が恋する顔ですか?」

「さぁね」

 ソウソウは苦笑しながら答えた。



 中央校舎・リュービ陣営~

 俺、リュービは中央校舎南部を拠点に、チョウホウ改めリューヘキ率いる黄巾党と手を組み、反ソウソウ軍を結成した。

 しかし、その部隊には大きな問題を抱えていた…

「何故、我ら誇り高きエンショウ軍が黄巾党崩れと共に戦わなければならない!」

「なんだとテメェ、やんのかコラ!」

「ああもう、お前ら仲良くしろよ」

 俺の連れてきたエンショウ軍はエリート意識が強い。対して不良の集まりである黄巾党とはどうにも相性が悪く、ことあるごとに対立していた。

「アナタ、来たよ!ソウジン軍だ!」

 俺の妻を称するリューヘキが偵察からの報告を伝えてきた。

「そのアナタってのやめてくれ。

 しかし、ソウジンか、まずいな。高い機動力と戦闘力を兼ね備えた部隊を率いている。突撃を避けないといけない。

 皆、左右に別れて防衛陣形を…」

「黄巾党、お前らが楯になれ。

 そこを我々が後方より遠距離攻撃をする」

「ふざけんな!そんな命令聞けるか!

 あんなもん突っ込んで大将の首取れば一発よ!」

「えーい、聞け、お前ら!

 うーん、気位の高いエンショウの部隊とソウソウに馴染めなかった部隊の混合か」

 黄巾党の部隊はリューヘキを介すればある程度は俺の命令を聞くだろう。だが、エンショウ軍は素直に俺の言うことを聞くだろうか。

 仕方がない。下手に作戦を練るのをやめよう。ここは固く守って頃合いを見て撤退するか。

「見つけたぞ!リュービ!」

「しまった!さすがに早いな!

 よし、防御陣形をとれ!」

「じっとしてられるか!大将首取ったらぁ!」

「待て!お前ら!」

「おめーら!アタイの旦那の命令が聞けねーのか!」

 ダメだ、こちらの声なんて聞いちゃいない。黄巾党の面々は無鉄砲にも敵に突っ込み蹴散らされ、それを見たエンショウ軍は怖じ気づいて逃げ出し始めた。

「お前ら、リューヘキの姉御とリュービの旦那を守れ!」

「ザコはどけ!」

 黄巾党の男たちは俺たちの盾になろうと飛び出していったが、ソウジンはそれを次々と蹴散らしてまっすぐこちらに向かってきた。

「ダメだ、一騎討ちでソウジンには勝てない!陣形を組まないと!」

「お前が指揮官か!」

「ヤバっ!」

 ソウジンの視線がリューヘキに向けられる。

「危ない!リューヘキこっちに!」

 俺はリューヘキの手を引いてその場を逃れた。

 ソウジンの行く手を黄巾の連中が阻む。これで少しは時間が稼げるか。

「おー、マイダーリン!助かったよ!持つべきものは良き夫だね」

「ふざけてる場合か。お前は顔見られるとまずいだろ」

「話したことないけど、ソウジンなら私のこと知ってるかもね。バレたら改名の意味がないからねー」

「呑気だな。

 手を引いてやるから下向いて顔隠せ」

 だが、ソウジンはすぐにこちらに迫ってきた。

「リュービ、女連れとは良いご身分だな。

 お前の存在はソウソウの邪魔だ!消えてもらうぞ!」

 ソウジンの拳が俺に迫るその瞬間、馴染み深い声が響いた。

 『アニキ!』

「何っ!」

 俺の目の前には、頭の左右にお団子カバーをつけた小柄な女生徒が、ソウジンの拳を軽々と受け止めていた。

 そのお団子ヘアーの女の子は八重歯を見せながらニッと笑った。

「このオレが相手だぜ!」

「チョーヒ!」

 間違いない、俺の義妹・チョーヒだ!

「アニキ、遅れて悪かったんだぜ?」

「リュービめ!チョーヒと既に合流していたか!」

「ソウジン!アニキには指一本触れさせねーぜ!」

 ソウジンはチョーヒに掴まれた手を振りほどくと、再び殴りかかった。チョーヒの防御を崩さんとソウジンは拳による連撃、更に蹴りを繰り出すが、チョーヒはその全てをはねのけた。

「ソウジン、次はオレの番だぜ!」

 チョーヒの拳は空を裂き、ソウジンの構えを突き崩し、その一撃が腹にめり込んだ。

 チョーヒは、ソウジンがよろめいたところをすかさず殴りにかかるが、ソウジン、それをすんででかわし、渾身の一撃を放つ。だが、その一撃はチョーヒの頬をかすめるのだった。

 チョーヒ有利に展開された一騎討ちだったが、ソウジンもしつこく食らい付き、互いの攻防を終え、一先ず距離をとり、お互い体勢を整えた。

「ソウジン、なかなかしぶといじゃないか」

「さすがだな、チョーヒ。一撃の重みが違う」

 しかし、そこにソウジンの部下からの報告が入る。

「ソウジン様、ソウソウ様よりリュービには深入りせず、適当なところで引き上げろということです」

「よし、チョーヒ、残念だがここまでだ。部隊転進!」

 報告を受けたソウジンの決断は速く、あっという間に部隊をまとめて撤退を開始した。

「待ちやがれ!逃げるのか!」

 一人、ソウジンを追おうとするチョーヒを俺は止めた。

「待て、チョーヒ。うちの部隊は逃げ散って壊滅状態だ。一人で追う気か」

 またチョーヒとはぐれるわけにはいかない。

「わかったよ、アニキ」

 チョーヒも今度はすんなり従ってくれた。

 一方、撤退するソウジンにソウソウから新たな指令が届く。

「ソウソウ様より追加の伝言です。このままジョコー・シカンと合流し、エンショウ軍別動隊のカンジュンを討てとのことです」

「わかった。

 しかし、チョーヒは強い。俺もいつまでも攻撃一辺倒というわけにはいかんな…」

 ソウジンは新たな課題を胸に北に向けて進軍していった。



「アニキー!会いたかったぜ!」

 チョーヒは全力疾走で俺の胸に飛び込んできた。

「ぐぇっ…

 チョーヒ、どこ行ってたんだよ、俺も心配してたんだぞ」

 俺は抱きつくチョーヒの頭をポンポンと軽く叩きながらこれまでのいきさつを聞いた。

「ソウソウから逃げる時、足ひねってさ…今まで隠れて治してたんだぜ…」

 チョーヒは恥ずかしそうに目をそむけながら答えた。

「そうだったのか。

 でも、連絡ぐらい返してくれよ。心配したんだぞ」

「だ、だって…俺がザコ相手に負傷したなんて…恥ずかしくてさ…」

「それでも、返事くらいはしてくれよ。

 じゃあ、ずっと中央校舎に隠れていたのか?よくソウソウ軍に見つからなかったな」

「ああ…それは…

 その…ずっと匿ってもらってたんだぜ…」

 その時、向こうより聞き覚えのない女性の声が響いた。

「チョーヒちゃーん!

 もう、リンを置いて先々行かないでよ!」

 その声の主の女生徒はそのまま一直線に駆けてきて、勢いままにチョーヒに抱きついた。

「ああ、抱きつくな、鬱陶しい!」

 チョーヒはその娘を引き離そうとするが、その娘も負けじとがっちり掴んで離そうとしない。

「チョーヒ、その娘は?」

「ああ、こいつがオレをずっと匿ってくれてた…」

 その薄い桃色の長い髪に、花の髪飾りをつけた女生徒はチョーヒから離れると、俺に一礼して挨拶してくれた。

「はじめまして。私は夏侯鈴なつとき・すず、カコウリンです」

「夏侯…もしかしてカコウトンやカコウエンの!」

「はい、イトコです。あ、でも警戒しないで大丈夫です。私はソウソウ軍には所属してないんで」

「そ、そうなのか?」

 イトコということはソウソウとも親戚だ。まさか、チョーヒを助けてくれた人が俺の戦っている相手の親戚だったなんて。

 しかし、ソウソウ軍には所属してないというのはどういうことなんだろうか?

「はい、私は運動もできないし、勉強も苦手なんで。

 何か能力が秀でてないと、血縁者でも採用しないんですよ、ソウソウちゃんって」

「そうか…確かにソウソウならそうかもしれない」

「まあ、オレを今まで匿ってくれてたから大丈夫だと思うぜ」

 確かにチョーヒを差し出そうと思えばいつでもできたはず。罠の気配もなさそうだし、信じてもいいのかもしれない。

 それにしても、ソウソウは親族相手でも能力を優先するのか。



「それで、リュービさん、いえ、義兄おにいさん!」

「はい!」

 俺が考え事をしていると、急にカコウリンはかしこまって話し始めた。

「義兄さん!私とチョーヒちゃんの結婚を認めてください!」

「「はー!?」」

 俺とチョーヒから同時に驚きの声が上がった。

 チョーヒと結婚?てか、なんでチョーヒまで驚いてんだ。

「なんでオレがお前と結婚しなきゃいけないんだぜ!」

 カコウリンはチョーヒの唇に人差し指を当てると、全てを察したような表情で話を続けた。

「わかってる。

 チョーヒちゃんが義兄さんの事を好きだってことは」

「わーわーわー!

 と、突然アニキの前で何言い出すんだぜ!」

 チョーヒが顔を真っ赤にしながらカコウリンに詰め寄る。

 カコウリンはチョーヒの赤面はお構い無しとばかりに俺に向き直った。

「だから、義兄さんはチョーヒちゃんをお嫁に貰ってください。

 そしてチョーヒちゃんが私のお婿さんになれば全部解決!みんなで明るい家庭を築きましょう!」

 そう、カコウリンは凄く素敵な笑顔で俺に言ってきた。あたかもそれが最高の選択肢だと言わんばかりに…

「え、えーと、カコウリン…さん。

 もしかしてチョーヒを匿った理由って…」

「はい、一目惚れです!」

「あー、なんかソウソウの親戚っぽいな」

 この目の輝きは見覚えがある。まさかこんなところをソウソウから受け継いでいるとは…

「待ちな!リュービはアタイの旦那だよ」

 そこへサラシを巻いた女生徒・リューヘキが話に割って入ってくる。

「お前はチョウホウ!なんでここにいやがる!ここの大将はリューヘキじゃなかったのか!」

「今は結婚して流尾姓なんだよ。だから改名してリューヘキになったんだ!」

「わけのわかんないこと言ってんじゃねーぜ!」

「ああ、ややこしい時にややこしい奴が…」

 チョーヒとチョウホウ改めリューヘキが口喧嘩を始める。

 まあ、わけのわからないのは認める。

「相変わらず、女性にだらしないですね」

 向こうより今度は聞き覚えのある声が聞こえた。

 その声の主は長く美しい黒髪をなびかせ、お嬢様然とした雰囲気を纏い、俺たちに馴染み深い美しい顔の女生徒であった。

「見つけましたよ、兄さん」

 それは共に兄妹の誓いをかわした俺の義妹、チョーヒの義姉…

「カンウ…」
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