学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~

トベ・イツキ

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第5部 赤壁大戦編

第78話 南征!ソウソウ大軍団!

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 生徒会室・ソウソウ陣営~

 ショートカットの黒髪に、鼻に小さな丸眼鏡をひっかけた小柄な少女、生徒会副会長・ジュンイクは、パソコンの前から立ち上がると、プリントアウトした用紙を手に生徒会長の席に向かった。


「ソウソウ会長、南校舎征伐はこのような陣容でいかがでしょうか?」

 それは南校舎・リュウヒョウ討伐のためのメンバーリストであった。

 それを受け取った、赤黒い長い髪、髪と同じ色の眼に白い肌、スラリとしたモデルの様な体型、胸元を大きく開いた服に、ヘソ出し、ミニスカートの生徒会長・ソウソウは、瞬時に目を通した。

「ふむ、我が軍の主だった者たちがほぼ名を連ねているな。

 これはエンショウ戦の時以上の大軍団になるな」

「はい、圧倒的な力でリュウヒョウ・リュービを屈服させれば、様子見をしている他勢力も自然と降伏してくることでしょう」

「しかし、これだと守りの方の兵力が心許こころもとないが、大丈夫か?」

「東校舎のソンサクが倒れ、代替わりしたばかりで不安定、リュウショウは和平を望んでおり、西涼の生徒はショーヨーやバトウが抑えております。

 他にもゾウハやリツウは残していますから、すぐに領地を取られることは無いでしょう」

 自身が最も頼りにする参謀・ジュンイクの言葉に、ソウソウを納得して言った。

「わかった。留守は任せるぞ、ジュンイク。

 それと、このリストにある前軍の参謀にチョウゲンを加えてくれないか」

「チョウゲンをですか?」

 チョウゲンは前年のエンショウ戦の時、ソウソウの領土を守る後方の武将の一人として、カコウエンやリツウらとともに反乱軍と戦った男子生徒だ。

 その名はジュンイクも把握していたが、前軍のみとはいえ、今回の大軍団の参謀に任命するのは、かなりの大抜擢だいばってきに思えた。

「そうだ。

 前軍の構成には歴戦の将が名を連ねているが、あいつらは自分の意見を曲げたりしないから衝突してしまう。

 チョウゲンは策が次々湧くタイプではないが、そういう我の強い武将たちを仲介するのが上手い。

 前にチョーリョー・ウキン・ガクシンの三将を守備隊として並べて配置したら、互いに意見を譲らず対立したことがあった。

 その時にチョウゲンを監視役に派遣したら、上手く意見をまとめ上げ、対立を抑えることに成功した。

 人材は何も新入生ばかりではなかろう。

 すでにいる人物も取り上げていかんとな」

 ソウソウはニヤリと笑うと、それにジュンイクもクスリと笑って返した。

「なるほど、その通りです。

 それでしたら彼の友人のトシュウも見所があると思います。

 私に預けていただけませんか?」

 トシュウもチョウゲンと同じく、エンショウ戦の時に守将として後方を防衛し、寡兵かへいでもってリュービ相手に善戦した男性生徒であった。

「いいだろう、トシュウはお前が育てろ」

 ソウソウはリュウヒョウ・リュービ征伐のために万全の布陣を整えつつあった。

「ふふ、リュービ、次はお前のとこの人材を見せてもらう番だぞ。」



 南校舎・リュービ陣営~

「なぁ、カン姉、最近のアニキどう思う?」

 小柄なお団子ヘアーの女生徒・チョーヒは少しご機嫌斜めな様子で、義兄・リュービの話題を、長身の美しく長い黒髪の義姉・カンウに振った。

「どうもこうもありません!」

 カンウの怒号が辺りに響く。

 どうも彼女はチョーヒよりご立腹な様子だ。

「最近の兄さんは何かにつけてコウメイコウメイと、まるで恋人の様に一日中二人で話し合ってますし…

 先日だってリュウキさんの相談に二人だけで聞きに行って、まるで私たちが眼中に無いような有り様です」

「と、とりあえず落ち着くんだぜ…」

 自身で振った話題だが、思った以上にカンウが腹を立てていたので、チョーヒも思わずカンウの抑えに回ってしまった。

 最近、彼女らの義兄・リュービは待望の軍師としてコウメイを自陣営に招いた。

 それ自体はいいのだが、以来、リュービはコウメイと話す時間が増え、カンウたちと会う機会が減ってしまっていた。

「えー、というわけで、カン姉が焼きもち焼いてるので、アニキのとこに連れてきたぜ」

「誰が焼きもち焼きですか!」

 俺の元に苦笑いしているチョーヒと、顔を赤らめて激昂げきこうするカンウがやって来た。

「アニキー、最近、コウメイと一緒にいすぎじゃないか?」

「こほん。

 兄さん、コウメイさんと仲良くされるのも結構ですが、特別扱いは困ります。

 皆さん、兄さんを慕ってついてきた方々なのですから」

「すまない。

 みんなを…いや二人をないがしろにしてしまったようだ。

 だが、今、ソウソウの危機が迫っている状況で、どうしてもコウメイと今後の方針を定めておく必要があったんだ。

 そう、例えるなら俺にとって、いや、俺たちにとってコウメイは饅頭につけるタレのような無くてはならないものなんだ!」

 …

 しばしの静寂が流れる

 …

「アニキ…例えヘッッッタクソだぜ!」

「すみません、兄さん。

 ちょっと言ってる意味がわかりません」

「あ、あれ…外したか?

 え、えーと、そうだな、魚と水なんてどうだ?

 魚にとって水は無くてはならない。

 その水がコウメイなんだ」

「その例えが先に出てりゃあなぁー」

「まあ、兄さんの下手な例え話はおいておくとして…

 兄さん!

 兄さんはソウソウとの戦いに備えて、コウメイとあっているのですね?」

「そうだ」

「では…その…

 下心とかはないんですね!」

「な、何を言い出すんだよ、カンウ!

 俺はあくまでも仲間として接しているだけだ」

「わかりました。

 では、もう何も言いません。

 行きますよ、チョーヒ」

「待ってくれだぜカン姉!

 …アニキ、今大事な時期なのはわかるけど、たまには皆の事も気にかけてくれよな。

 もうバラバラになるのは嫌だぜ」

「すまない。

 最近、周りがおろそかになってたみたいだ。

 もっと気にかけるようにするよ」



 中央校舎・ソウソウ陣営~

「では、これよりリュウヒョウ・リュービ討伐軍の陣容を発表する」

 陣営の主・ソウソウは、文武百官を集め、こう告げた。

 彼女の前に居並ぶのは、いずれも名を内外に知られたソウソウ軍の逸材いつざいたちだ。

 彼ら彼女らの前に、ソウソウに代わり、参謀・ジュンイクが進み出る。

 今回、発表される編成は、前軍、後軍、別動軍の三軍編成で、かつてのカントの戦い以上の大軍になると予想されていた。

「では、まず前軍のメンバーを発表します」

 ジュンイクの口から次々とソウソウ軍を代表する名将の名が告げられる。

 黒髪ロングに眼鏡、切れ長の目の女生徒、冷徹れいてつなる厳将げんしょう・ウキン


 逆立った青髪、ハチマキに、青い道着姿の屈強な男、怒涛どとう闘将とうしょう・チョーリョー

 後ろに一つ結びにした緑髪、白い学生服、右腕に狼模様のブレスレットをつけた、細身の男子生徒、巧妙こうみょうなる驍将ぎょうしょう・チョーコー

 黄色い短髪、左腕に鷹模様のブレスレットをつけた、大柄な男子生徒、先駆せんくする猛将・コウラン

 青い髪を矢を模したかんざしでまとめた小柄な女生徒、慎重な知将・リテン

 黒のインナーにデニムのズボン、メガネをかけた男子生徒、頑強な奇将きしょう・シュレイ

 日に焼けた肌に、ジャージ姿の男子生徒、剛健ごうけん強将きょうしょう・ロショウ

 そして、最後に前軍の参謀として、パーカーを着た、小柄な童顔の男子生徒、果断かだん柔将じゅうしょう・チョウゲン

 以上の名前が上がった。

 彼ら、彼女らを前にソウソウが指示を出す。

「お前たち前軍はまっすぐ南校舎へ進行し、リュウヒョウ本拠地の教室を目指せ。

 リュウヒョウ本拠地占領が第一目標だ」

 続けてジュンイクは次の部隊の発表を行う。

「続いて別動軍のメンバーを発表します」

 ツインテールのピンク髪、少し幼げな顔つきの女生徒、遊撃ゆうげき姫将きしょう・ソウコウ


 白髪のポニーテール、凛とした顔つきの、小柄な女生徒、迅速じんそく烈将れつしょう・ガクシン


 燃えるような赤髪に、鋭い目付き、緑玉の首飾り、長身の男子生徒、深慮しんりょ壮将そうしょう・ジョコー

 短髪細目の、飾り気のない学ラン姿の、長身の男子生徒、厳格な謀将ぼうしょう・マンチョウ

 以上の面々が別動軍として呼ばれた。

「ソウコウはリュービに占拠された4教室を取り戻せ。

 他の三将は前軍の進行範囲外にある他教室を占拠せよ」

 そして、ジュンイクから後軍が発表された。

「では、最後に後軍のメンバーを発表します」

 ツンツン髪に、アゴヒゲを生やし、左に眼帯を着けた男子生徒、隻眼せきがん鬼将きしょう・カコウトン


 茶色いショートヘアー、黒いジャケットにジーパン、長身の女生徒、疾風しっぷう勇将ゆうしょう・カコウエン


 橙色の髪、細身で中性的な顔立ちの男子生徒、勇略ゆうりゃくなる剛将ごうしょう・ソウジン


 黄色髪をポニーテールにまとめ、小柄な精悍せいかんな顔つきのソウジンの妹、新鋭しんえい威将いしょう・ソウジュン

 そして参謀に

 おさげ髪に、地味めな眼鏡をかけた、おっとりした雰囲気の女生徒、泰然たいぜんたる叡智えいち・ジュンユウ


 セミロングの茶髪に、ツリ目の一際長身の女生徒、剛胆ごうたんなる策士・テイイク


 セミロングの茶髪、黄色のパーカーにショートパンツ姿、首にヘッドフォンをかけた背の低い女生徒、帷幄いあく謀士ぼうし・カク


 そして、後軍総大将には…

「私、ソウソウ自らが務める。

 この後軍は、前軍・別動軍で決着がつかなかった場合の予備戦力であり、南校舎占領後はそのまま司令部として機能させる」

 ソウソウの言葉にジュンイクが続けて述べる。

「その他、ソウソウ会長本隊の副官にシカン・カンコウ、親衛隊長にキョチョ、さらに南校舎占拠後の行政官として数名の者が同行する」

 ジュンイクの補足が終わると、ソウソウは全体に向けて演説をおこなった。

「前回のエンショウとの戦いは天下分け目の戦いであった。

 今回のリュウヒョウとの戦いは天下仕上げの戦いとなる。

 今回の我らはただ勝てばいいというわけではない。

 求められるのは大勝、圧勝だ!

 我らがリュウヒョウに圧勝することで、東のチュー坊、西のリュウショウ、その他、未だ従わない中小勢力の戦意を大きくぐことができる。

 そこで重要になってくるのがリュービの動きだ。

 リュービは戦闘意志を明確にしており、兵力は少ないといえども、奴は戦巧者いくさこうしゃであることに加え、カンウ・チョーヒといった豪傑を従えている。

 リュービがねばればねばるほど、東西その他の群雄たちの戦意が増しかねない。

 第一目標はあくまでリュウヒョウだが、リュービの動向から目を離すな!

 リュービさえ始末すれば、そのまま東西陣営の併合、つまり学園統一もあり得る!」

 学園統一!

 ソウソウの口から発せられたその言葉に、拝聴はいちょうしていた生徒たちに緊張が走る。

 現在、東校舎はソンサクの後を継いだ弟のチュー坊が、西校舎はリュウショウが有力な勢力だが、どちらも独立は保っているものの、ソウソウとの対立は明確に表明していない。

 ソウソウがリュウヒョウ・リュービを圧倒的な差を見せつけて撃ち破れば、東西の勢力は戦わずに白旗しろはたを上げることは充分にあり得ることだ。

 その二勢力が降れば、後に残った中小勢力がいくら逆らおうとも消化試合に過ぎず、事実上の学園統一がなされたと言えるだろう。

 去年のトータクの乱により急遽きゅうきょ始まった群雄割拠の選挙戦。

 その長かった分裂時代が終わり、統一時代到来の予感に、生徒たちの意気はいやが上にも昂揚こうようするのであった。

「ソウソウ会長、お待ち下さい!」

 演説が終わり、ソウソウへ向けた男性の声が飛んできた。

「どうした?チョウシュウ」

 声をあげたのは少し茶色混じりの短髪に、色黒の、背の高い男子生徒、サッカー部部長・チョウシュウであった。

「我らサッカー部は元は南校舎所属。

 俺自身もリュウヒョウと面識があります。

 ぜひ、我らを討伐軍に加えてください」

 チョウシュウはかつてリュウヒョウとは同盟関係にあったが、カントの戦いの直前、参謀・カクの助言に従ってソウソウについた。

 この総仕上げとも言うべき大戦に、その経歴から彼も遅れまいと名乗りをあげたのであった。

「よし、いいだろう。

 チョウシュウは先導せんどうとして前軍に加われ。

 これにて軍議は以上だ!」

 ソウソウの発言で軍議はくくられ、みな慌ただしく動き出した。

 これが最後になるかもしれない大戦を前に、選ばれた武将たちは大いなる責任と名誉を感じていた。



「チョウゲン、参謀への抜擢ばってきおめでとう」

「おめでてぇぜぇ!友よぉ!」

 今回のメンバーに前軍参謀として抜擢されたチョウゲンの前に、彼の友人二人がやってくる。

 一人は小柄でよく痩せた、タレ目で温和な顔つきの男子生徒・トシュウ。

 もう一人は、ソフト帽をかぶり、後ろ髪を一つ結びにした、ジャケットを羽織った男子生徒・リツウ。

「トシュウ、リツウ、わざわざありがとう」

 その二人の祝いの言葉に小柄な男子生徒・チョウゲンも返した。

「ほぼ全軍の出撃なのによぉ、留守番とはついてねぇぜぇ!」

 リツウは独特なくせのあるしゃべり方でこの戦いに参戦できないことをなげいた。

 リツウはセパタクロー部部長であり、自身も剛毅果断ごうきかだんな武臣であるが、今回は防衛組となり、留守番となった。

 続けてトシュウがチョウゲンに語りかけた。

「チョウゲン、友人として警告しておくよ。

 僕は前回の選挙戦の時にリュービの襲撃を受けた。

 あれはかなりの強敵だ。

 少数と思って油断すると痛い目をみるだろう」

 トシュウは去年の選挙戦の終盤、リュービ・リュウヒョウ連合の襲撃を受けた。

 トシュウもよく防いだが、結局敵わず、命からがら逃亡しており、リュービ軍の強さは身に染みていた。

 それに対し、リツウはフッと笑って、チョウゲンの肩に手を置いた。

「まぁよぉ、何かあれば俺が救援に行ってやるからよぉ、安心しろやなぁ」

「ああ、二人ともありがとう。

 気をつけて行ってくるよ」

 ついにソウソウ軍の侵攻が始まった。

 その軍勢はカントの決戦をしのぎ、空前絶後の大軍勢であった。

 ここに一大決戦が始まろうとしていた。
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