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第6部 西校舎攻略編
第108話 面談!次代の新戦力!
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「リュービさん、面接の準備が整いました」
「ありがとう、ビジク。
それじゃあ、そろそろ面接を始めるかな」
俺は新たに加わった武官約二百人の面接をすることとなり、少しくせっ毛気味の髪に、眼鏡をかけた、大人びた雰囲気の女生徒・ビジクがせかせかとその準備を手伝ってくれた。
こういう事務的な仕事となると、ついついビジクに頼ってしまう。ビジクの妹・ビホウやソンカンも手伝ってくれてはいるが、やはりビジクの負担が大きい。
今回は新しくリュウヒョウ陣営から俺の陣営に参加してくれたイセキにも協力してもらっている。今後はイセキやコウメイが新規で採用してくれる文官たちを加えて、仕事を分担してもらおう。
いや、人が増えるならちゃんと組織を編成して、滞りなく事務仕事が回るようにしてもいいな。陣営が大きくなると色々考えることが増える。
「では、リュービさん。
一人目をお通ししますね」
ビジクの言葉で、俺はハッと我に返る。
そうだった。文官のことはコウメイに任せて、今は武官の面接に集中しないと。
今回の面接では、見所のありそうな者を見つけて、その人たちを部隊長とする。そして、今後起きるであろう戦いにて経験を積ませて、ゆくゆくは将軍に昇格させる。
いうなれば将来の幹部候補を見つけるための面接だ。気を引き締めてやらないと。
「失礼します!!!!」
戸の向こうから威勢のよい声が響く。一人目からかなり元気のある子が来てくれたようだ。
「受付番号一番!
自分は義野延莉と申します!
ギエンとお呼びください!!」
教室中に響き渡るような大声とともに現れたのは、男物の学ランに、頭にハチマキをつけ、下駄を履いた、まるで応援団のような姿の女生徒であった。
「えーと、ギエンさん。
応援団のような格好だね」
「はい、元応援団所属です!
リュービさんのこの前のソウソウとの一戦感動しました!
寡勢でもって多勢を破る!
これぞ浪漫です!自分もそういう戦いに加わりたいと思い志願しました!」
ギエンは目をランランと輝かせ、熱を帯びた口調で語ってきた。どうやら前の赤壁の戦いにいたく感激した様子で、俺に向ける目はまるでスターを見る熱心なファンのそれで、こちらとしても悪い気分ではない。だが、今後実際の俺を見知って失望されないか不安だ。
熱く語ってくれるのはいいが、一人だけにそう時間もかけられないので、とりあえず、話を切り上げてもらい、いくつかの質問をして面接を終わりとした。
ギエンもまだ伝えたい様子であったが、俺の言葉に素直に従い、最後にやる気なら誰にも負けないとアピールして退出した。
「いやぁ、一人目からえらく熱い子がきたね」
「受付順に来ていただいているので、やはり、一番に来られた方はそれだけやる気があるということでしょうか」
「まあ、やる気があるのはいいことだ。
さあ、ビジク、次々呼んでいこうか」
それから代わる代わる多種多様な人物が俺たちの前に現れ、面接を行った。
「私はフウシュウと申します。
私は中学時代より進んで委員長や班長を務め、リーダーシップを発揮してきました。
また、常に勉強を欠かさず、広く交友関係を持つ私ならきっとリュービさんのお役に立てることでしょう」
髪を整髪料できっちりと固め、フレームの細い眼鏡をかけた男子生徒・フウシュウ。積極性と行動力は評価できそうだ。少々、気位の高そうな印象を受けるが、自信の現れとも言える。
「コウショウと言います。
これといって特技もないんですが、計画を練ったり、コツコツ作業したりするのは得意です」
細目で面長、中肉中背の男子生徒・コウショウ。あまり特徴のない地味な印象の人物だが、真面目で堅実そうだ。
「私はフユウ。
剣道の心得があります」
ポニーテールの黒髪に長身、まるで剣士のような雰囲気の女生徒・フユウ。癖なのか面接の最中にちょくちょく片目を瞑っている。腕に覚えがあるのなら一騎打ちでも期待できそうだ。
様々な生徒の面接も大多数が終わり、俺も少し息をつく。
「この他、腕っぷしに自信があるというチョウナンや参謀としても伸び代がありそうなリュウヨウ、ホキョウあたりが今のところ部隊長候補かな」
いずれも一長一短といった様子だが、元々戦場で経験を積ませる前提の育成枠なので、見所のありそうな生徒は積極的に登用していこう。
さて、そろそろ長かった面接も終わる頃合いだろうが…
「次の方…」
その男はビジクが言葉を言い終わる前に乱雑に部屋に入ってきて、ツカツカと俺の前に歩いてきた。
「おお、リュービ、久しぶりだな。
俺だよ、俺」
見るからに粗雑そうな男が、笑みを浮かべながら自身を指差し、俺に話しかけてくる。
あっという間のことで思わず呆気にとられたが、確かにこの男には見覚えがあった。
「え、えーっと、君は…シジンか!」
「リュービさん、お知り合いですか?」
「ああ、去年同じクラスだった…」
「リュービの友達のシジンだ!」
俺が元クラスメイトと紹介しようとすると、その粗雑な男・シジンは食い気味で遮り、俺の友達と名乗った。
去年、そこそこ話はしたが、そんなに親しかったかなと首を傾げていると、俺はお構いなしとばかりにシジンはツラツラと話し出した。
「いやぁ、進級してクラス替えで疎遠になってしまっていたが、友人であるリュービが人を求めていると聞いてね。
友として応じねばと参上した次第だよ。
よろしく頼むよ、友人としてね」
シジンは俺の肩を力強く叩くと、ハハハと笑って部屋を退出した。
「まさか、あいつまで応募しているとはなぁ」
まるで嵐でも去ったかのような疲労感を味わい、
俺はボソリと呟いた。
「リュービさん、どうしますか?
今のシジンという方は明らかに縁故による起用を要求していますが、見たところ特に秀でたものもないようですし、採用しないのも手かと」
淡々と処理しようとするのはさすがビジクといったところだが、俺は彼女の提案を押し留めた。
「いや、ビジク。
俺のクラスは今はソウソウの勢力圏に入ってしまっている。聞くところによると、そのために俺と交流のあった生徒に圧力がかけられているそうだ。
シジンがそのために居心地悪くて俺のところに来たというなら、無碍にはできないだろう」
「しかし、先程の態度を見ますに、リュービさんの名を出して他者を威圧して、和を乱すような真似をする危険があるかもしれません」
「うーん、まあ、留守部隊の指揮とか何か無難な役目を与えておくよ。
えーと、これで一通り面接は終わったかな」
多少問題もあったが、なかなか有意義な面接であった。このメンバーを元に今後あるであろう西校舎攻略のための部隊を編成していくとしよう。
そんなことを考えながら、俺たちが一段落していると、戸がガチャリと開き、面接を手伝ってくれていたソンカンが入ってきた。
「すみません、リュービさん。
お会いしたいと訪ねてきている人がいるのですが」
「会いたい?誰かな?」
どうやら今回の募集とは別に俺を訪ねてきた人がいるようだ。
「それは…」
ソンカンからその名を聞くと、俺はすぐにその人のところへ向かった。
「よく来てくれた、カクシュン!」
「リュービさん、お久しぶりです」
俺を待っていたその人は、茶髪の頭にゴーグルをつけ、ダウンジャケットを着たまるで少年漫画の主人公のような姿の男子生徒・カクシュンであった。
カクシュンは元リュウヒョウ陣営所属の遊軍指揮官。先のソウソウの侵攻でリュウソウやサイボウらがリュウヒョウの意思を無視して降伏すると、国境付近にいたカクシュンやリゲンらは行方をくらまし、今に至るまで消息不明であった。
「カクシュン、そう畏まらないでくれ」
俺に対して頭を下げるカクシュンを、慌てて止めようとしたが、カクシュンは首を横に振った。
「リュービさん、今やあなたがこの南校舎の主だ。
そのあなたに折り入って頼みがある。
俺をあなたの陣営に加えてはいただけないだろうか」
「君ほどの人物なら歓迎だよ」
カクシュンは既にリュウヒョウ陣営で指揮官として活躍しており、自分の部隊も率いている。そんな人物が加わってくれれば即戦力だ。
「それはありがたい。
不躾だが、もう一つ頼みがある。
他に一人、新たに加えてはくれないだろうか。
タクヨー、入ってくれ」
カクシュンに促され、茶髪に額にバンダナを巻いた、ジャージ姿の男子生徒が入ってきた。
「お初にお目にかかる。
俺はタクヨーと申します」
「彼は俺と同じく元リュウヒョウの武将で、ともにソウソウから逃れていた。
彼もあなたの陣営に加えてはいただけないか」
タクヨーとは初対面ではあるが、元リュウヒョウの武将なら同じく即戦力といえるだろう。
「断る理由はないよ。
よろしくタクヨー」
「よろしくおねがいします」
こうして俺の陣営は多数の新入生に加えて、元リュウヒョウ軍の武将・カクシュン・タクヨーを迎えることができた。予想以上に戦力の増強になったな。
「さて、これでようやく面接も一段落だな。
コウメイの様子でも見てこようか」
そんなことを思っていると、目にかかるぐらいの長さの薄水色の髪に、まだ幼さの残る愛らしい顔つきの華奢な美少女、我らが軍師・コウメイがそちらからひょっこりやってきた。
「リュービさん、面接ご苦労様です」
「ああ、コウメイ、ようやく終わったよ」
俺はコウメイをやれやれとジェスチャーしながら出迎えた。
「こちらも無事に終わりました。
リュービさんにもご紹介します」
コウメイはコウメイで、文官の面接を同時並行でやっていた。その中の数名を俺に紹介しようと引き連れてきた。
「はじめまして、私は馬常良季、バリョウと申しますわ」
おっとりした丁寧な口調で自己紹介してくれたのは、セミロングの黒髪だが、眉のみ白い。ピンクのカーディガンにロングスカートをはいた女生徒だった。
彼女の後に続いてコウメイが補足で説明を加えてくれる。
「彼女はバリョウさんです。
バリョウさんは五つ子の四女で、五姉妹いずれも優秀なのですが、その中でも特に優秀であることと彼女の眉が白いことから、馬氏の五嬢、白眉最も良し、と言われています」
「そして私がその妹の織名、バショクです!
私も優秀なのでよろしくおねがいしますね!」
今度は活発な口調で名乗ってくれたのは、茶色いショートの髪に、白いシャツにミニスカートの女生徒であった。
「こちらが妹のバショクさんです。
こちらも優秀な上に武官としての素質もあるので、戦場でも活躍できると思います」
バリョウ・バショク、二人とも小柄な少女だが、バリョウはコウメイより少し背が高く、バショクはバリョウより少し背が高いな。
「私はチンシンと申します。
お見知り置きください」
次に挨拶してくれたのは、ボブヘアにした茶混じりの黒髪に、少しツリ目気味の女生徒・チンシン。
「私はリョウリツです。
私でしたらコウメイさんの補佐が務まると自負しております」
丁寧だが、少しきつめの口調で話すのは、灰色の長い髪に、長身、鋭い目つきの女生徒・リョウリツ。
「私はハンシュンです。
元リュウヒョウの部下ですが、よろしくお願いします」
ウェーブがかった肩まで伸びた黒髪に、長い眉に、切れ長の目の今回挨拶してくれた中では唯一の男子生徒・ハンシュン。
「この他にも、シュウテイさんやソウヨさん、インカンさんなどが加わってくれています。
この方々は南校舎や今後、獲得するであろう領土の統治や事務仕事に従事することになるでしょうから、リュービさんの大いに助けになることでしょう」
彼女・彼らの挨拶が一通り終わり、最後に総括してコウメイが紹介してくれた。
コウメイの言うとおり、領土の増やすということはそれだけ仕事が増えるということだ。俺の陣営には文官がまだまだ少ないから、今回の加入で文武両面において領土拡張のための下準備が整った。
俺が満足した顔で頷くと、コウメイは少し間を置いてから呟いた。
「これで南校舎でソウソウ陣営に加わらなかった生徒のうち、主だった方はだいたい招くことができました。
こうなるとあの人も是非加えたいところですが…」
「あの人?」
俺の問いかけにコウメイは下げていた頭を上げて答える。
「はい、今は南校舎を離れているホウトウさんです」
コウメイの口から出たホウトウの名に俺は聞き覚えがあった。
「ホウトウ…?
ホウトウというと…鳳雛か!
臥龍・コウメイと並び称された鳳雛・ホウトウのことか」
かつてシバキ先生は俺に臥龍・鳳雛、二人の生徒を紹介してくれた。臥龍は今軍師を務めているコウメイのことだが、鳳雛とはホウトウという生徒の異名であった。
「その呼び方は少し恥ずかしいのですが…
はい、その鳳雛ことホウトウです。
近々、南校舎に戻ってくるという話なのですが、何分、マイペースな方なので、今どこでどうしているやら…」
南校舎の外れ~
リュービとコウメイが面接を終えたその頃、南校舎を望見する一人の生徒がいた。
「あっしが南校舎を離れてる間に随分、勢力図が変わってしまいましたなぁ…
さてさて、どちらにいったものか…」
そう言うと、その生徒はかぶってる三度笠を傾け、口に楊枝を咥えて、土煙とともに何処かへと去っていった。
「ありがとう、ビジク。
それじゃあ、そろそろ面接を始めるかな」
俺は新たに加わった武官約二百人の面接をすることとなり、少しくせっ毛気味の髪に、眼鏡をかけた、大人びた雰囲気の女生徒・ビジクがせかせかとその準備を手伝ってくれた。
こういう事務的な仕事となると、ついついビジクに頼ってしまう。ビジクの妹・ビホウやソンカンも手伝ってくれてはいるが、やはりビジクの負担が大きい。
今回は新しくリュウヒョウ陣営から俺の陣営に参加してくれたイセキにも協力してもらっている。今後はイセキやコウメイが新規で採用してくれる文官たちを加えて、仕事を分担してもらおう。
いや、人が増えるならちゃんと組織を編成して、滞りなく事務仕事が回るようにしてもいいな。陣営が大きくなると色々考えることが増える。
「では、リュービさん。
一人目をお通ししますね」
ビジクの言葉で、俺はハッと我に返る。
そうだった。文官のことはコウメイに任せて、今は武官の面接に集中しないと。
今回の面接では、見所のありそうな者を見つけて、その人たちを部隊長とする。そして、今後起きるであろう戦いにて経験を積ませて、ゆくゆくは将軍に昇格させる。
いうなれば将来の幹部候補を見つけるための面接だ。気を引き締めてやらないと。
「失礼します!!!!」
戸の向こうから威勢のよい声が響く。一人目からかなり元気のある子が来てくれたようだ。
「受付番号一番!
自分は義野延莉と申します!
ギエンとお呼びください!!」
教室中に響き渡るような大声とともに現れたのは、男物の学ランに、頭にハチマキをつけ、下駄を履いた、まるで応援団のような姿の女生徒であった。
「えーと、ギエンさん。
応援団のような格好だね」
「はい、元応援団所属です!
リュービさんのこの前のソウソウとの一戦感動しました!
寡勢でもって多勢を破る!
これぞ浪漫です!自分もそういう戦いに加わりたいと思い志願しました!」
ギエンは目をランランと輝かせ、熱を帯びた口調で語ってきた。どうやら前の赤壁の戦いにいたく感激した様子で、俺に向ける目はまるでスターを見る熱心なファンのそれで、こちらとしても悪い気分ではない。だが、今後実際の俺を見知って失望されないか不安だ。
熱く語ってくれるのはいいが、一人だけにそう時間もかけられないので、とりあえず、話を切り上げてもらい、いくつかの質問をして面接を終わりとした。
ギエンもまだ伝えたい様子であったが、俺の言葉に素直に従い、最後にやる気なら誰にも負けないとアピールして退出した。
「いやぁ、一人目からえらく熱い子がきたね」
「受付順に来ていただいているので、やはり、一番に来られた方はそれだけやる気があるということでしょうか」
「まあ、やる気があるのはいいことだ。
さあ、ビジク、次々呼んでいこうか」
それから代わる代わる多種多様な人物が俺たちの前に現れ、面接を行った。
「私はフウシュウと申します。
私は中学時代より進んで委員長や班長を務め、リーダーシップを発揮してきました。
また、常に勉強を欠かさず、広く交友関係を持つ私ならきっとリュービさんのお役に立てることでしょう」
髪を整髪料できっちりと固め、フレームの細い眼鏡をかけた男子生徒・フウシュウ。積極性と行動力は評価できそうだ。少々、気位の高そうな印象を受けるが、自信の現れとも言える。
「コウショウと言います。
これといって特技もないんですが、計画を練ったり、コツコツ作業したりするのは得意です」
細目で面長、中肉中背の男子生徒・コウショウ。あまり特徴のない地味な印象の人物だが、真面目で堅実そうだ。
「私はフユウ。
剣道の心得があります」
ポニーテールの黒髪に長身、まるで剣士のような雰囲気の女生徒・フユウ。癖なのか面接の最中にちょくちょく片目を瞑っている。腕に覚えがあるのなら一騎打ちでも期待できそうだ。
様々な生徒の面接も大多数が終わり、俺も少し息をつく。
「この他、腕っぷしに自信があるというチョウナンや参謀としても伸び代がありそうなリュウヨウ、ホキョウあたりが今のところ部隊長候補かな」
いずれも一長一短といった様子だが、元々戦場で経験を積ませる前提の育成枠なので、見所のありそうな生徒は積極的に登用していこう。
さて、そろそろ長かった面接も終わる頃合いだろうが…
「次の方…」
その男はビジクが言葉を言い終わる前に乱雑に部屋に入ってきて、ツカツカと俺の前に歩いてきた。
「おお、リュービ、久しぶりだな。
俺だよ、俺」
見るからに粗雑そうな男が、笑みを浮かべながら自身を指差し、俺に話しかけてくる。
あっという間のことで思わず呆気にとられたが、確かにこの男には見覚えがあった。
「え、えーっと、君は…シジンか!」
「リュービさん、お知り合いですか?」
「ああ、去年同じクラスだった…」
「リュービの友達のシジンだ!」
俺が元クラスメイトと紹介しようとすると、その粗雑な男・シジンは食い気味で遮り、俺の友達と名乗った。
去年、そこそこ話はしたが、そんなに親しかったかなと首を傾げていると、俺はお構いなしとばかりにシジンはツラツラと話し出した。
「いやぁ、進級してクラス替えで疎遠になってしまっていたが、友人であるリュービが人を求めていると聞いてね。
友として応じねばと参上した次第だよ。
よろしく頼むよ、友人としてね」
シジンは俺の肩を力強く叩くと、ハハハと笑って部屋を退出した。
「まさか、あいつまで応募しているとはなぁ」
まるで嵐でも去ったかのような疲労感を味わい、
俺はボソリと呟いた。
「リュービさん、どうしますか?
今のシジンという方は明らかに縁故による起用を要求していますが、見たところ特に秀でたものもないようですし、採用しないのも手かと」
淡々と処理しようとするのはさすがビジクといったところだが、俺は彼女の提案を押し留めた。
「いや、ビジク。
俺のクラスは今はソウソウの勢力圏に入ってしまっている。聞くところによると、そのために俺と交流のあった生徒に圧力がかけられているそうだ。
シジンがそのために居心地悪くて俺のところに来たというなら、無碍にはできないだろう」
「しかし、先程の態度を見ますに、リュービさんの名を出して他者を威圧して、和を乱すような真似をする危険があるかもしれません」
「うーん、まあ、留守部隊の指揮とか何か無難な役目を与えておくよ。
えーと、これで一通り面接は終わったかな」
多少問題もあったが、なかなか有意義な面接であった。このメンバーを元に今後あるであろう西校舎攻略のための部隊を編成していくとしよう。
そんなことを考えながら、俺たちが一段落していると、戸がガチャリと開き、面接を手伝ってくれていたソンカンが入ってきた。
「すみません、リュービさん。
お会いしたいと訪ねてきている人がいるのですが」
「会いたい?誰かな?」
どうやら今回の募集とは別に俺を訪ねてきた人がいるようだ。
「それは…」
ソンカンからその名を聞くと、俺はすぐにその人のところへ向かった。
「よく来てくれた、カクシュン!」
「リュービさん、お久しぶりです」
俺を待っていたその人は、茶髪の頭にゴーグルをつけ、ダウンジャケットを着たまるで少年漫画の主人公のような姿の男子生徒・カクシュンであった。
カクシュンは元リュウヒョウ陣営所属の遊軍指揮官。先のソウソウの侵攻でリュウソウやサイボウらがリュウヒョウの意思を無視して降伏すると、国境付近にいたカクシュンやリゲンらは行方をくらまし、今に至るまで消息不明であった。
「カクシュン、そう畏まらないでくれ」
俺に対して頭を下げるカクシュンを、慌てて止めようとしたが、カクシュンは首を横に振った。
「リュービさん、今やあなたがこの南校舎の主だ。
そのあなたに折り入って頼みがある。
俺をあなたの陣営に加えてはいただけないだろうか」
「君ほどの人物なら歓迎だよ」
カクシュンは既にリュウヒョウ陣営で指揮官として活躍しており、自分の部隊も率いている。そんな人物が加わってくれれば即戦力だ。
「それはありがたい。
不躾だが、もう一つ頼みがある。
他に一人、新たに加えてはくれないだろうか。
タクヨー、入ってくれ」
カクシュンに促され、茶髪に額にバンダナを巻いた、ジャージ姿の男子生徒が入ってきた。
「お初にお目にかかる。
俺はタクヨーと申します」
「彼は俺と同じく元リュウヒョウの武将で、ともにソウソウから逃れていた。
彼もあなたの陣営に加えてはいただけないか」
タクヨーとは初対面ではあるが、元リュウヒョウの武将なら同じく即戦力といえるだろう。
「断る理由はないよ。
よろしくタクヨー」
「よろしくおねがいします」
こうして俺の陣営は多数の新入生に加えて、元リュウヒョウ軍の武将・カクシュン・タクヨーを迎えることができた。予想以上に戦力の増強になったな。
「さて、これでようやく面接も一段落だな。
コウメイの様子でも見てこようか」
そんなことを思っていると、目にかかるぐらいの長さの薄水色の髪に、まだ幼さの残る愛らしい顔つきの華奢な美少女、我らが軍師・コウメイがそちらからひょっこりやってきた。
「リュービさん、面接ご苦労様です」
「ああ、コウメイ、ようやく終わったよ」
俺はコウメイをやれやれとジェスチャーしながら出迎えた。
「こちらも無事に終わりました。
リュービさんにもご紹介します」
コウメイはコウメイで、文官の面接を同時並行でやっていた。その中の数名を俺に紹介しようと引き連れてきた。
「はじめまして、私は馬常良季、バリョウと申しますわ」
おっとりした丁寧な口調で自己紹介してくれたのは、セミロングの黒髪だが、眉のみ白い。ピンクのカーディガンにロングスカートをはいた女生徒だった。
彼女の後に続いてコウメイが補足で説明を加えてくれる。
「彼女はバリョウさんです。
バリョウさんは五つ子の四女で、五姉妹いずれも優秀なのですが、その中でも特に優秀であることと彼女の眉が白いことから、馬氏の五嬢、白眉最も良し、と言われています」
「そして私がその妹の織名、バショクです!
私も優秀なのでよろしくおねがいしますね!」
今度は活発な口調で名乗ってくれたのは、茶色いショートの髪に、白いシャツにミニスカートの女生徒であった。
「こちらが妹のバショクさんです。
こちらも優秀な上に武官としての素質もあるので、戦場でも活躍できると思います」
バリョウ・バショク、二人とも小柄な少女だが、バリョウはコウメイより少し背が高く、バショクはバリョウより少し背が高いな。
「私はチンシンと申します。
お見知り置きください」
次に挨拶してくれたのは、ボブヘアにした茶混じりの黒髪に、少しツリ目気味の女生徒・チンシン。
「私はリョウリツです。
私でしたらコウメイさんの補佐が務まると自負しております」
丁寧だが、少しきつめの口調で話すのは、灰色の長い髪に、長身、鋭い目つきの女生徒・リョウリツ。
「私はハンシュンです。
元リュウヒョウの部下ですが、よろしくお願いします」
ウェーブがかった肩まで伸びた黒髪に、長い眉に、切れ長の目の今回挨拶してくれた中では唯一の男子生徒・ハンシュン。
「この他にも、シュウテイさんやソウヨさん、インカンさんなどが加わってくれています。
この方々は南校舎や今後、獲得するであろう領土の統治や事務仕事に従事することになるでしょうから、リュービさんの大いに助けになることでしょう」
彼女・彼らの挨拶が一通り終わり、最後に総括してコウメイが紹介してくれた。
コウメイの言うとおり、領土の増やすということはそれだけ仕事が増えるということだ。俺の陣営には文官がまだまだ少ないから、今回の加入で文武両面において領土拡張のための下準備が整った。
俺が満足した顔で頷くと、コウメイは少し間を置いてから呟いた。
「これで南校舎でソウソウ陣営に加わらなかった生徒のうち、主だった方はだいたい招くことができました。
こうなるとあの人も是非加えたいところですが…」
「あの人?」
俺の問いかけにコウメイは下げていた頭を上げて答える。
「はい、今は南校舎を離れているホウトウさんです」
コウメイの口から出たホウトウの名に俺は聞き覚えがあった。
「ホウトウ…?
ホウトウというと…鳳雛か!
臥龍・コウメイと並び称された鳳雛・ホウトウのことか」
かつてシバキ先生は俺に臥龍・鳳雛、二人の生徒を紹介してくれた。臥龍は今軍師を務めているコウメイのことだが、鳳雛とはホウトウという生徒の異名であった。
「その呼び方は少し恥ずかしいのですが…
はい、その鳳雛ことホウトウです。
近々、南校舎に戻ってくるという話なのですが、何分、マイペースな方なので、今どこでどうしているやら…」
南校舎の外れ~
リュービとコウメイが面接を終えたその頃、南校舎を望見する一人の生徒がいた。
「あっしが南校舎を離れてる間に随分、勢力図が変わってしまいましたなぁ…
さてさて、どちらにいったものか…」
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