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カルテ#4 牢屋に放り込まれたのは騒がしい人物-クモの糸
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「う、わぁ、何するんだ、」
「騒がしいなぁ・・・」
一人牢屋の隅に座ってポケットに入っていた手帳を書いていた私のところに男が投げ込まれた。
「お前は…花嫁のおじさん!」
「その言い方はやめてくれないか?」
牢屋に投げ込まれた男は私達(私と勇者御一行様)を召喚した召喚士だった。
確か先ほど大広間でのやり取りでは謹慎の処分になっていたはずだ。
この世界では「謹慎」は牢屋に投げ込まれることなのか?
(※謹慎:言行をつつしむこと。特に、悪い行いをした罰、また、つぐないとして、家にとじこもったり、行動に気をつけたりして、品行をつつしむこと。by グーグル日本語辞書)
と不思議に思っていると魔法使いが話しかけてきた。
「オイラ、召喚士のルキだ。一流召喚士って呼んでくれ、…というかお前、魔王臭い!」
牢屋に放り込まれた召喚士は私にぐいぐいと近づいてきて、
いきなり自己紹介をしたかと思ったら、スンスンと私の服の匂いを嗅いで鼻をつまんで臭い臭いと言い始めた。
とても騒がしい。嵐のようだ。
そして一流召喚士ならば、なぜ牢屋に入れられるのか、とか
そもそも召喚を間違えて、魔王の花嫁なんぞ召喚しないだろう、と思ったが、
それを口に出さないだけの分別はある。
パーソナルスペースが広い私は召喚士からすすすっと距離をとると、
また手帳の記帳の続きに戻った。
しかしまたしても召喚士が近づいて、私が書いている日記を覗き込むようにしながら、話しかけてきた。
「なぁなぁ。悪かったよ。でもお前、やっぱり『魔王の花嫁』なんだな。こんな魔王臭いやつ魔物とか魔王の部下でもいないもん。
でもなんで人間でしかも男なのに、魔王の花嫁なんだ?魔王はオイラたちの世界にいて、そっちには滅多にいかないはずなんだけど。
どこで魔王と出会ったんだ?魔王はかなりのひねくれものだって聞いていたから、嫁をもらうことなんてないだろうともっぱら噂だったけど。
どうやって魔王をおとしたんだ?オイラ、すごく不思議でわからないんだ、教えてくれよ」
「その前に君はどうして牢屋に入っているんだい?私のせいかな。それになんだか君は全体的にねっとりしているんだが…」
びくり、と召喚士が固まった。
そしてわなわなと震え始める。
「お前のせいじゃない。そもそも王様はオイラに謹慎処分言い渡してくれたから、しばらくお家にこもっているだけだったのに。
…あいつ、すべてはあの騎士団長のせいだ。一流召喚士のオイラがこんな牢屋に閉じ込められるなんて。
…あと全体的にねっとりしているのは騎士団長に拷問を受けてたからだ!とっても苦しかったけどオイラ耐え抜いたんだぞ。
でもこのままじゃあの騎士団長、オイラにもっとひどいことするつもりだと思う。
お前は魔王を殺すまでは命は取られないだろうけど、オイラは明日をも知れぬ命…ぐすっ」
「…」
私は、ぐずぐずと泣き始めた召喚士の様子を見ながら怒ったり泣いたり騒がしい人だな、と思っていた。
そもそも王様もこの召喚士については「度重なる不手際」とか言っており、相当呆れた様子だったし。
私の召喚がなくとも、遅かれ早かれこの召喚士はこうなる運命だったのだろう。
だが、この召喚士は使えるかもしれない。
そろそろ覚めない夢に違和感を覚えてきて、先ほど自分の腕に万年筆の先を突き立ててみた。
結果は痛みを感じ、血が流れた。
人間の想像力は無限大だ。
これが夢の可能性、もしくは人間が死ぬときに脳内に分泌される脳内麻薬の見せる幻覚の可能性は十分ある。
しかし、もしかしたらこれが夢ではない可能性も考慮しないといけない。
もし、私はまだ死んでなくてこれが現実だったら、私は今すぐ元の世界に戻りたい。
いや、戻らないといけない。
もちろん、病院のことも家族のことも心配だ。
しかし、一番に頭に浮かぶのマスオの顔だ。
思い返せば、彼は明らかに精神状態が普通ではなかった。
最後に見た顔は恍惚としていた。
私は彼をやはり信じたい。
それが精神科医といて愚かだとしても、確かに私は彼と信頼関係を築いていたと思いたい。
私は彼を絶対に殺人者にしたくないのだ。
私達をこの異世界に召喚した召喚士ならば私を元の世界に戻すことも可能だとふんでいる。
この召喚士の技術に不安はあるが、どのみち生きているかも、死んだかもわからない身だ。
望みにかけるしかないだろう。
「騒がしいなぁ・・・」
一人牢屋の隅に座ってポケットに入っていた手帳を書いていた私のところに男が投げ込まれた。
「お前は…花嫁のおじさん!」
「その言い方はやめてくれないか?」
牢屋に投げ込まれた男は私達(私と勇者御一行様)を召喚した召喚士だった。
確か先ほど大広間でのやり取りでは謹慎の処分になっていたはずだ。
この世界では「謹慎」は牢屋に投げ込まれることなのか?
(※謹慎:言行をつつしむこと。特に、悪い行いをした罰、また、つぐないとして、家にとじこもったり、行動に気をつけたりして、品行をつつしむこと。by グーグル日本語辞書)
と不思議に思っていると魔法使いが話しかけてきた。
「オイラ、召喚士のルキだ。一流召喚士って呼んでくれ、…というかお前、魔王臭い!」
牢屋に放り込まれた召喚士は私にぐいぐいと近づいてきて、
いきなり自己紹介をしたかと思ったら、スンスンと私の服の匂いを嗅いで鼻をつまんで臭い臭いと言い始めた。
とても騒がしい。嵐のようだ。
そして一流召喚士ならば、なぜ牢屋に入れられるのか、とか
そもそも召喚を間違えて、魔王の花嫁なんぞ召喚しないだろう、と思ったが、
それを口に出さないだけの分別はある。
パーソナルスペースが広い私は召喚士からすすすっと距離をとると、
また手帳の記帳の続きに戻った。
しかしまたしても召喚士が近づいて、私が書いている日記を覗き込むようにしながら、話しかけてきた。
「なぁなぁ。悪かったよ。でもお前、やっぱり『魔王の花嫁』なんだな。こんな魔王臭いやつ魔物とか魔王の部下でもいないもん。
でもなんで人間でしかも男なのに、魔王の花嫁なんだ?魔王はオイラたちの世界にいて、そっちには滅多にいかないはずなんだけど。
どこで魔王と出会ったんだ?魔王はかなりのひねくれものだって聞いていたから、嫁をもらうことなんてないだろうともっぱら噂だったけど。
どうやって魔王をおとしたんだ?オイラ、すごく不思議でわからないんだ、教えてくれよ」
「その前に君はどうして牢屋に入っているんだい?私のせいかな。それになんだか君は全体的にねっとりしているんだが…」
びくり、と召喚士が固まった。
そしてわなわなと震え始める。
「お前のせいじゃない。そもそも王様はオイラに謹慎処分言い渡してくれたから、しばらくお家にこもっているだけだったのに。
…あいつ、すべてはあの騎士団長のせいだ。一流召喚士のオイラがこんな牢屋に閉じ込められるなんて。
…あと全体的にねっとりしているのは騎士団長に拷問を受けてたからだ!とっても苦しかったけどオイラ耐え抜いたんだぞ。
でもこのままじゃあの騎士団長、オイラにもっとひどいことするつもりだと思う。
お前は魔王を殺すまでは命は取られないだろうけど、オイラは明日をも知れぬ命…ぐすっ」
「…」
私は、ぐずぐずと泣き始めた召喚士の様子を見ながら怒ったり泣いたり騒がしい人だな、と思っていた。
そもそも王様もこの召喚士については「度重なる不手際」とか言っており、相当呆れた様子だったし。
私の召喚がなくとも、遅かれ早かれこの召喚士はこうなる運命だったのだろう。
だが、この召喚士は使えるかもしれない。
そろそろ覚めない夢に違和感を覚えてきて、先ほど自分の腕に万年筆の先を突き立ててみた。
結果は痛みを感じ、血が流れた。
人間の想像力は無限大だ。
これが夢の可能性、もしくは人間が死ぬときに脳内に分泌される脳内麻薬の見せる幻覚の可能性は十分ある。
しかし、もしかしたらこれが夢ではない可能性も考慮しないといけない。
もし、私はまだ死んでなくてこれが現実だったら、私は今すぐ元の世界に戻りたい。
いや、戻らないといけない。
もちろん、病院のことも家族のことも心配だ。
しかし、一番に頭に浮かぶのマスオの顔だ。
思い返せば、彼は明らかに精神状態が普通ではなかった。
最後に見た顔は恍惚としていた。
私は彼をやはり信じたい。
それが精神科医といて愚かだとしても、確かに私は彼と信頼関係を築いていたと思いたい。
私は彼を絶対に殺人者にしたくないのだ。
私達をこの異世界に召喚した召喚士ならば私を元の世界に戻すことも可能だとふんでいる。
この召喚士の技術に不安はあるが、どのみち生きているかも、死んだかもわからない身だ。
望みにかけるしかないだろう。
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