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104,情報と考察
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図書館を訪れた俺は、歴史書と広域街道地図と魔族についての文献と文化民間伝承についての本を探す。
程無く目的の物を見付けると、腰を据えてじっくりと読み進める。
歴史書は千年程前からの物しか無かったが、国が幾つか滅びそして新しく誕生した記録と国同志の小競り合いの記録が、概ね四半世紀周期で記されていた。
広域街道地図は要所要所の都市や町、はたまた小さな村や集落まで記されていたので、丁寧に書き写す。
魔族についての文献はあまり詳細な物は無かったが、千年前を境に人類の生存権を脅かす程の強力な魔族の存在は鳴りを潜めたと記載があった。
文化民間伝承では、神の記述に触れたものは無く、やはり千年より前の伝聞は存在していなかった。
千年前に何かあったであろうことは明白だが、文献を見る限りそれを知る者は存在しない。
不自然な事なのに、疑問を持つ内容の書籍も存在していない。
まるでこの世界が千年前より昔は存在して無かったかの様に・・・。
あれ?
この世界は何時から存在しているのかな?
そう言えば神様からその話は聞かなかった。
地球は46億年前から存在しているから、何と無く同じ感覚で考えていたけれど、実際はどうなんだろう?
千年前を境に魔族が弱体化?したと記録があるから、千年前以前もこの世界は存在していた筈だ。
なのに、それ以前の記録が無いのは何故?
答えの出ない問題に頭を悩ませる。
頭を抱えた俺に、図書館の職員のお姉さんの声が掛かる。
「申し訳ありませんが、閉館時間です。」
いつの間にか随分と時間が経過していた様だ。
「すみません!片付けて直ぐに出ます!」
謝りながら慌てて本を片付けて、図書館を後にする。
「おかえりなさいませ。ソウタ様。御帰宅早々で暇も無く申し訳ありませんが、どうぞ此方へ。」
すっかりと日の落ちた町中を急ぎつつシャルダンの屋敷に戻ると、息つく暇無く早々にメイドに夕食の席に案内される。
丁度、夕食が開始されたばかりのタイミングだったらしく、前菜をツマミに食前酒をシャルダンが嗜んでいた。
「おかえり、ソウタ。夕暮れにはいささか遅いが、町中の散策は楽しんでこれたかな?」
目の前に並べられる料理を眺めながら、シャルダンの問いに作った笑顔で返す。
「ええ。他の町とは違って色々と新しい発見が有り、つい時間を忘れていました。」
「それは何よりだ!話を聞かせてくれないか?」
俺の適当な言葉に、シャルダンが興味を示したのか期待を込めた眼差しで見詰めてくる。
流石に魔力の消耗が激しいので、エネルギー補給に集中しようかと思っていたのだが、シャルダンが宮廷魔道師だったのを思い出し駄目元で問いを投げ掛けてみる事にした。
「やはり、この町の素晴らしい所は図書館ですね。あらゆる蔵書が揃っていて飽きさせない。世間の常識に疎い俺には、とても良い刺激になります。」
「流石に目の付け所が違うな・・・。君は勤勉なタイプだね。私の目に狂いは無かった様だ。思った通り、魔法使いか研究職が向いている様だ。」
酒が進みご機嫌なシャルダンとは裏腹に、そんな気の無いソウタは内心苦笑する。
「それで、気になったことが1つ有りまして・・・。博学なシャルダンさんなら、もしかして何か御存知なのではないでしょうか?」
あくまで控え目に相手の興味を向けさせるように・・・そう考えながらソウタは慎重に言葉を選ぶ。
「なにかね?この町の図書館で知り得る情報は、私からすれば初歩的な知識でしか無いよ。きっとソウタが満足出来る答えを出せると思うがね。」
シャルダンらしい物言いに、ソウタは伊達に歳は取っていないな・・・と結構失礼な事を考える。
「そうだと嬉しいです。大したことでは無いのですが、歴史書や古い文献に、千年より前の記録が無いのは何故なのでしょうか?もしかして常識的な事で俺が無知なだけですか?」
俺はこの世界の事については簡単な事しか知らない。
カインズの居た町では、町人や初級冒険者が知る程度の常識や基礎的な知識しか学べなかった、と言うよりも学ぶ必要が無かった。
専門職や研究職が使う様な専門的な知識を、一般の人達は必要としない。
それは有る意味、普通の事だ。
この世界においては生活に直結しない知識は余剰な物で、贅沢な娯楽や嗜好品と同列だ。
目指すものと関わりがなければ、普通の人は興味すら持たない。
そういうものだ。
「千年もの月日は常人には計り知れない永さだ。それよりも前を気にする者も稀にしか居ない。だから千年よりも前の記録は事実上は存在しないのだよ。我々人類が滅びを迎え死滅した歴史を記録に残そうとする物好きは、ほんの僅かな生き残り達の中には居なかった訳だ・・・。この事実は、ほんの一部の僅かに口伝えで代々語り継がれている者しか知り得ない。」
苦い想いが有るのか、シャルダンの表情は固い。
思いの外、重たい内容に驚く。
「滅びを迎え死滅した理由は・・・何だったんですか?」
声が微かに震える。
「魔族だよ・・・。千年より前は、人類の生存権を脅かす力を持った魔族が世界を埋めつくし、人類を死滅に追いやりこの世界を支配していたそうだ・・・。」
少し現実感の無いそんな他人事の様な口調が、重さを増させる。
「魔族・・・。」
「実際、千年前に何が有ったのかを知る者は居ない。この世界を支配していた筈の強大な力を持つ魔族達は千年前を境に姿を消して、僅かに生き残った人類が世界を取り戻した。それだけが伝え聞いた全てだ。」
魔族の最後言葉が甦る。
神は抹消されたと・・・もしかして魔族と引き換えに?
俺は自分の考えを否定する事が出来なかった。
程無く目的の物を見付けると、腰を据えてじっくりと読み進める。
歴史書は千年程前からの物しか無かったが、国が幾つか滅びそして新しく誕生した記録と国同志の小競り合いの記録が、概ね四半世紀周期で記されていた。
広域街道地図は要所要所の都市や町、はたまた小さな村や集落まで記されていたので、丁寧に書き写す。
魔族についての文献はあまり詳細な物は無かったが、千年前を境に人類の生存権を脅かす程の強力な魔族の存在は鳴りを潜めたと記載があった。
文化民間伝承では、神の記述に触れたものは無く、やはり千年より前の伝聞は存在していなかった。
千年前に何かあったであろうことは明白だが、文献を見る限りそれを知る者は存在しない。
不自然な事なのに、疑問を持つ内容の書籍も存在していない。
まるでこの世界が千年前より昔は存在して無かったかの様に・・・。
あれ?
この世界は何時から存在しているのかな?
そう言えば神様からその話は聞かなかった。
地球は46億年前から存在しているから、何と無く同じ感覚で考えていたけれど、実際はどうなんだろう?
千年前を境に魔族が弱体化?したと記録があるから、千年前以前もこの世界は存在していた筈だ。
なのに、それ以前の記録が無いのは何故?
答えの出ない問題に頭を悩ませる。
頭を抱えた俺に、図書館の職員のお姉さんの声が掛かる。
「申し訳ありませんが、閉館時間です。」
いつの間にか随分と時間が経過していた様だ。
「すみません!片付けて直ぐに出ます!」
謝りながら慌てて本を片付けて、図書館を後にする。
「おかえりなさいませ。ソウタ様。御帰宅早々で暇も無く申し訳ありませんが、どうぞ此方へ。」
すっかりと日の落ちた町中を急ぎつつシャルダンの屋敷に戻ると、息つく暇無く早々にメイドに夕食の席に案内される。
丁度、夕食が開始されたばかりのタイミングだったらしく、前菜をツマミに食前酒をシャルダンが嗜んでいた。
「おかえり、ソウタ。夕暮れにはいささか遅いが、町中の散策は楽しんでこれたかな?」
目の前に並べられる料理を眺めながら、シャルダンの問いに作った笑顔で返す。
「ええ。他の町とは違って色々と新しい発見が有り、つい時間を忘れていました。」
「それは何よりだ!話を聞かせてくれないか?」
俺の適当な言葉に、シャルダンが興味を示したのか期待を込めた眼差しで見詰めてくる。
流石に魔力の消耗が激しいので、エネルギー補給に集中しようかと思っていたのだが、シャルダンが宮廷魔道師だったのを思い出し駄目元で問いを投げ掛けてみる事にした。
「やはり、この町の素晴らしい所は図書館ですね。あらゆる蔵書が揃っていて飽きさせない。世間の常識に疎い俺には、とても良い刺激になります。」
「流石に目の付け所が違うな・・・。君は勤勉なタイプだね。私の目に狂いは無かった様だ。思った通り、魔法使いか研究職が向いている様だ。」
酒が進みご機嫌なシャルダンとは裏腹に、そんな気の無いソウタは内心苦笑する。
「それで、気になったことが1つ有りまして・・・。博学なシャルダンさんなら、もしかして何か御存知なのではないでしょうか?」
あくまで控え目に相手の興味を向けさせるように・・・そう考えながらソウタは慎重に言葉を選ぶ。
「なにかね?この町の図書館で知り得る情報は、私からすれば初歩的な知識でしか無いよ。きっとソウタが満足出来る答えを出せると思うがね。」
シャルダンらしい物言いに、ソウタは伊達に歳は取っていないな・・・と結構失礼な事を考える。
「そうだと嬉しいです。大したことでは無いのですが、歴史書や古い文献に、千年より前の記録が無いのは何故なのでしょうか?もしかして常識的な事で俺が無知なだけですか?」
俺はこの世界の事については簡単な事しか知らない。
カインズの居た町では、町人や初級冒険者が知る程度の常識や基礎的な知識しか学べなかった、と言うよりも学ぶ必要が無かった。
専門職や研究職が使う様な専門的な知識を、一般の人達は必要としない。
それは有る意味、普通の事だ。
この世界においては生活に直結しない知識は余剰な物で、贅沢な娯楽や嗜好品と同列だ。
目指すものと関わりがなければ、普通の人は興味すら持たない。
そういうものだ。
「千年もの月日は常人には計り知れない永さだ。それよりも前を気にする者も稀にしか居ない。だから千年よりも前の記録は事実上は存在しないのだよ。我々人類が滅びを迎え死滅した歴史を記録に残そうとする物好きは、ほんの僅かな生き残り達の中には居なかった訳だ・・・。この事実は、ほんの一部の僅かに口伝えで代々語り継がれている者しか知り得ない。」
苦い想いが有るのか、シャルダンの表情は固い。
思いの外、重たい内容に驚く。
「滅びを迎え死滅した理由は・・・何だったんですか?」
声が微かに震える。
「魔族だよ・・・。千年より前は、人類の生存権を脅かす力を持った魔族が世界を埋めつくし、人類を死滅に追いやりこの世界を支配していたそうだ・・・。」
少し現実感の無いそんな他人事の様な口調が、重さを増させる。
「魔族・・・。」
「実際、千年前に何が有ったのかを知る者は居ない。この世界を支配していた筈の強大な力を持つ魔族達は千年前を境に姿を消して、僅かに生き残った人類が世界を取り戻した。それだけが伝え聞いた全てだ。」
魔族の最後言葉が甦る。
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