22 / 25
二人きりの夜
しおりを挟む
1月末。
めぐと弦の視察の日がやって来た。
二人はスーツ姿で新幹線に乗り、愛知県のテーマパークへと向かう。
「新幹線なんて、すごく久しぶり。速いねー、静かだね」
「めぐ、ご機嫌だな」
「うん!だって氷室くんと一緒なんだもん。楽しくて仕方ないの。あ、お菓子食べる?」
「ははっ!遠足のおやつだな」
ちょっとしたデート気分を味わっていたが、あっという間に名古屋駅に着き、タクシーに乗り換えて目的地までたどり着いた。
「もう着いちゃったね。って、見て!氷室くん、お城だよ、素敵!」
おとぎ話に出てくるような真っ白な外壁と青い屋根のお城が見えてきて、めぐは目を輝かせる。
早く行こう!と弦の手を引いてエントランスに近づくと、パークの制服を着た女性スタッフが声をかけてきた。
「こんにちは!グレイスフル ワールドの雪村さんと氷室さんですね?」
めぐはパッと弦の手を離して姿勢を正す。
「はい、そうです。初めまして」
「初めまして。私はここフェアリーランドの広報担当、衣笠きぬがさと申します。お二人の滞在中は私がご案内いたしますね」
「雪村と氷室です。どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ。では早速パークの中へどうぞ」
赤いタータンチェックのロングコートにチロリアンハットを被った衣笠は、小柄でキュートな、まさにおとぎの国の女の子のような雰囲気だった。
「こちらにいらっしゃるのは初めてなんですよね?」
歩きながら衣笠が振り返り、めぐは頷く。
「はい。ずっと来てみたかったんです。うちのグレイスフル ワールドはリアリティーを大切にしているので、こういうファンタジーの世界に憧れていて」
「そうなんですね。そう言っていただけると嬉しいです。グレイスフル ワールドは世界旅行気分を味わえる、リアルなパークですよね。私、いつもテレビで雪村さんと氷室さんを拝見しているので、今日は芸能人にお会いしたような気分です」
「ええ?まさか、そんな」
「本当ですよ、なんだか緊張します。でもお二人ともテレビで見るより更に素敵ですね。憧れちゃうなあ」
頬に手を当ててうっとりする衣笠は、年齢は同じくらいに見えるが仕草がなんとも可愛らしい。
それがまた、このフェアリーランドの雰囲気にも合っている。
メルヘンな街並みに見とれながら歩いていると、やがて大きな宮殿のような建物が見えてきた。
「あちらがキャッスルホテルです。まずはお部屋にご案内しますね。少し休憩してください」
「えっ、あんなに素敵なお城がホテルなんですか?」
「ええ、そうです。お二人にはスイートルームをご用意しました」
「スイートルーム!?そんな、普通のお部屋で構わないです」
「いえ、閑散期なので空きがたくさんありまして。どうせなら1番いいお部屋に泊まっていただきたいのです。グレイスフル ワールドのホテルよりは格が落ちると思いますけど」
「まさか、そんな。可愛らしさに既にやられてます」
めぐがそう言うと、衣笠はふふっと笑う。
「雪村さん、とってもお綺麗なのに気さくな方で安心しました。今日はこのあと、お二人で好きなところを回ってくださいね。明日は歓迎セレモニーがありますので、よろしくお願いします」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
両パークが友好な関係であることをアピールする為、記念写真を撮ることになっており、めぐも弦もパークの制服を持参していた。
「それでは、こちらがスイートルームです」
ゴージャスな内装のロビーからエレベーターで6階まで上がり、突き当たりの部屋のドアを衣笠が開ける。
中に足を踏み入れためぐは、優雅な雰囲気の部屋と窓の外に広がる景色に感嘆の声を上げた。
「わあ、とっても素敵!ね、氷室くん」
「ああ、そうだな。家具も上質で高級なものばかりだし」
すると衣笠が嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「ありがとうございます。喜んでいただけてホッとしました。ベッドルームは左右に2部屋ありますので、お一人ずつご利用いただけます。それからこちらがパークのパスポートとミールクーポンです。今日は終日ご自由に楽しんでください。もし必要であれば、私も同行しましょうか?」
聞かれてめぐは首を振る。
「いいえ、大丈夫です。衣笠さん、ありがとうございました」
「どういたしまして。何かありましたらいつでもこちらの番号にご連絡ください」
そう言って差し出された名刺を受け取り、めぐと弦も自分の名刺を差し出した。
「わあ、雪村さんと氷室さんの名刺いただいちゃった」
嬉しそうに笑う衣笠は、どこまでもキュートだった。
◇
「素敵なところだね。まさにおとぎの国」
ホテルでひと息つくと、二人は早速パークに繰り出した。
弦と手を繋ぎ、めぐはあちこちに目を奪われる。
「しかも氷室くんと初めてのデート!もう夢の世界だね。仕事だけど」
「ははっ!確かにな。でも純粋に楽しもう。端から端まで見て回るぞ」
「うん!早く行こう。アトラクションも楽しそうだよ。それになんと、絶叫マシンがないの!」
「それは良かったな、めぐ」
虹をくぐり星空を飛ぶ魔法のカーペットに乗ったり、美しいお城の舞踏会のショーを観たりと、二人は記録用の写真を撮りながらパークを巡る。
チュロスやポップコーンの食べ歩きメニューやお土産もたくさん買い、湖のほとりにあるレストランでディナーを味わった。
夜のショーと花火も楽しんでから、二人は大満足でホテルの部屋に帰った。
「楽しかったね。うちのパークとはまた違った非日常感。子どもはもちろんだけど、大人も童心に帰って楽しめる……って感じかな?」
パソコンをカタカタと入力しながら、めぐはソファでレポートをまとめる。
「それにほら、マスコットキャラクターのフェアリーちゃん!可愛いよね。グッズも色んなのがあって、子ども達にも大人気だし」
「ああ、そうだな。うちは大人をターゲットにしてるしリアリティーを大事にしてるからマスコットキャラクターはいないけど、やっぱりいるといいな」
「うん。今は私達がゆるキャラ代わりに宣伝活動してるもんね。でもいてくれたらいいなあ」
「ポリシーに反するから難しいかも。けどやっぱり家族連れで遊びに来たら、子どもが楽しめるエリアもあるといいよな。そういった場所限定でキャラクターを作ってもいいかも」
「あ、なるほど」
弦の言葉にめぐは頷く。
「そしたら、例えばだよ?スイスやアルプスのエリアに可愛い女の子のキャラがいたり、オーストラリアにはカンガルーやコアラのグッズを展開したり、とかは?」
「おお、それいいな!その国の雰囲気を壊さずにそういう可愛らしさを入れていくの」
「うん。ロシアのマトリョーシカのお土産も、そのキャラで作ったり」
「いいね。名前はグレイスちゃんとか?」
「あはは!うん、グレイスちゃん。ロイヤルブルーがうちのテーマカラーだから、洋服もその色で。んーっと、こんな感じかな?」
めぐがノートにさらさらと鉛筆で女の子の絵を描くと、弦は眉間にしわを寄せた。
「めぐ……、絵心は壊滅的だな。妖怪にしか見えん。子どもが泣き出しそう」
「えー、酷くない?お口がにっこりしてて可愛いでしょ?」
「怖い、夢でうなされそう」
「ちょっと、氷室くん?」
「まあまあ。アイデアはいいと思うから、企画課に提案しようか」
「うん!うちの新たな魅力になるといいな。明日歓迎セレモニーでフェアリーちゃんに会えるから、色々参考にさせてもらおう」
「そうだな。さてと、そろそろ寝るか」
弦は立ち上がるとめぐの荷物を持ち、リビングに繋がるベッドルームに運んだ。
「めぐがこっちの部屋でいいか?」
振り返ると、めぐは頬を膨らませてむくれている。
「なんだ?あっちの部屋がいいの?」
「違う。氷室くんと同じ部屋がいい」
「一人で寝るのが怖いのか?」
「どうしてそうなるの!おかしいでしょ?私達つき合ってるのに別々の部屋で寝るとか」
「別におかしくないだろ?」
「おかしいもん!」
そう言うとめぐは、ガシッと正面から弦に抱きついた。
「なにそれ?」
「くっつき虫。離れませんから」
「はいー?バカなこと言ってないで……」
「バカじゃないもん!」
めぐは弦が部屋から出て行こうとしても、ピタリとくっついて離れない。
はあ、とため息をついた弦は、ピンとひらめいた。
「めぐ、俺今からシャワー浴びるけど?」
途端にめぐはパッと離れる。
よしっ!と弦はガッツポーズをして「じゃあな」と出て行った。
◇
「氷室くんめー、このままで済むと思ったら大間違いよ」
めぐはバスタブに浸かりながら、メラメラと闘志を燃やす。
「大体さ、俺の方がめぐを好きな気持ちが大きいって言うけど、どこがなの?もう片時も君を離さないよ!っていうのなら分かるけど。せっかく二人きりの夜なのに、あっさり『あばよ!』って」
ブツブツ呟いているうちに本気で腹が立ってきた。
「おやすみのチューもないんだよ?それで恋人だって言えますか?いいえ、言えません!もらいに行きましょうとも、おやすみチューを」
ザバッとお湯から出ると、身体を拭いてバスローブを着る。
髪も乾かして寝る支度を整えると、「あとはチューだけ!」と拳を握りしめて部屋を出た。
同じ頃、シャワーを浴びた弦はバスローブ姿でビールを飲んでいた。
コンコンと部屋のドアがノックされて、思わずビクッとする。
「氷室くん、入っていい?」
「いや、ちょっとだめ」
焦りながら必死で声を落ち着かせた。
ホテルでめぐと二人きりなんて、手を出さない訳がない。
だがめぐはまだ軽くキスしただけで頬を染めるような純情さだ。
絶対に今の自分は獣にしか思われないだろう。
(めぐの為にも俺の為にも、頼むから来ないでくれー)
心の中で念じるが、全く通じなかった。
「今はだめなの?いつならいいの?」
「いや、いつでもだめ」
「どうして?ちょっとだけならいいでしょ?」
「そのちょっとが、ちょっとじゃなくなるんだ」
「何言ってるの?もう、入るよ?」
「だめだ!」
慌ててドアに向かうが遅かった。
それどころかドアを開けためぐを自分の胸で抱き留める形になってしまい、弦は一気に身体中が熱くなる。
「……氷室くん」
バスローブ姿のめぐを思わずギュッと抱きしめた。
風呂上りのめぐから甘くていい香りがして、思わず息を吸い込む。
いつもはまとめている髪をサラリとなでると、顔をうずめて耳元にくちづけた。
「めぐ……」
「んっ……」
耳に吐息がかかっただけで身体をピクンとさせるウブな反応のめぐは、汚れのない聖女のようだった。
弦はグッと唇を噛みしめて、めぐの身体を引き離す。
「めぐ、ほら。部屋に戻って寝な」
「でも、氷室くんと一緒にいたい」
「今はだめだ」
「どうして?どうやったら一緒にいてくれるの?」
潤んだ瞳で見上げられれば、理性はもはや彼方へと飛んでいきそうになる。
弦はわざと視線をそらした。
「今回は仕事で来てるだろ?この部屋だって用意してもらった部屋だ。だからプライベートは切り離そう。な?」
「……うん、そうだね」
「それにめぐ、まだ俺のこと名前で呼んでくれないだろ?まずはそこからだ。少しずつ恋人としての時間を重ねていこう」
「そ、そんなの!ちゃんと出来るよ、すぐに出来るから」
思いがけず必死に訴えてくるめぐに、弦は面食らう。
(この場をやり過ごす為にちょっといじわるな事を言ってしまったのに)
めぐは真剣な表情でギュッと自分の手を握ると、意を決したように弦を見上げた。
「大好きです、弦くん」
ドキューンと弦のハートが打ち抜かれる。
頭の中が真っ白になり、何も考えられず、動けない。
そんな弦の肩に手を置くと、めぐは背伸びをしてチュッと可愛くキスをする。
「おやすみなさい、弦くん。また明日ね」
耳元でささやくと、スルリと弦の腕をすり抜けて部屋を出て行った。
「ちっきしょー!なんだよあれ、完全に反則だろ!」
そのあと弦がベッドに突っ伏し、バタバタと暴れ回ったのは言うまでもなかった。
◇
「おはようございます、雪村さん、氷室さん。よくお休みになれましたか?」
翌朝、10時に部屋にやって来た衣笠にめぐはにっこり微笑む。
「はい、ぐっすり。衣笠さん、とても豪華なお部屋をありがとうございました」
「いいえ、喜んでいただけて良かったです。ではこのあとの歓迎セレモニーについてお話しさせていただきますね」
ソファに座って衣笠の説明を受けると、めぐと弦はグレイスフル ワールドの制服に着替えた。
めぐの胸元にはいつものブルースターのネックレスが輝いている。
「わあ、お二人ともとっても素敵!美男美女に磨きがかかって、もう本当に芸能人にしか思えません」
感激した面持ちの衣笠に苦笑いして、めぐと弦は出かける支度を整えた。
「それではパークのイベントスペースにご案内しますね。そこで弊社の社長から記念品の贈呈がありまして、マスコミがその様子を撮影します。そのあとフェアリーちゃんと私も並んでフォトセッションとなります」
「はい!フェアリーちゃん、楽しみです」
わくわくしながら衣笠に続いてパークを歩いて行く。
小人の街がテーマのエリアを抜けると、昨日舞踏会のショーを観たステージが見えてきた。
「あちらです。もうマスコミが来てますので、先に裏手に回って社長からご挨拶させていただきますね」
「はい」
さすがのめぐも、緊張感が高まって来た。
ステージの裏に行くと、スーツを着た年配の男性が何人か立ち話をしている。
「社長、雪村さんと氷室さんをお連れしました」
衣笠が声をかけると、一斉に振り返る。
「おお、これはこれは。遠いところをようこそお越しくださいました。フェアリーランド運営会社の社長をしております、野村のむらです」
「初めまして、グレイスフル ワールド広報課の雪村と氷室と申します。本日はお招きいただきまして誠にありがとうございます。お目にかかれて大変光栄です」
めぐと弦は社長に挨拶して名刺を交換した。
「いやー、お二人ともこんなにもイケメンと美女で、やはり格が違いますな。グレイスフル ワールドが高級感と本物志向を売りにしているのがよく分かります」
「いえ、そんな。こちらのフェアリーランドもメルヘンやファンタジーの可愛らしい雰囲気で、とても素敵ですね」
「まあ、お互いそれぞれに良さがありますよね。今後はもっとアイデアを交換し合える関係を築いていきたいと思っておりますので、末永くよろしく」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
時間になると、衣笠が進行役としてステージに上がりマイクを握った。
社長が登壇して挨拶すると、いよいよめぐと弦も招かれてステージに上がる。
友好の証の楯を受け取り、マスコミのカメラに笑顔を向ける。
最後にフェアリーちゃんも登場して、記念撮影となった。
が、弦の隣に並んだフェアリーちゃんはやたら弦にぴたりと寄り添い、うふふと言わんばかりのポーズで愛想を振りまく。
(ちょっと、近過ぎない?)
めぐはカメラに向かって微笑みつつ、横目でフェアリーちゃんの動きをうかがっていた。
◇
「ありがとうございました。以上でセレモニーは終了です」
ステージを下りて裏手に回ると、衣笠がめぐと弦に挨拶した。
「これはお二人への記念品です。はい、フェアリーちゃん渡してね」
衣笠から紙袋を受け取ったフェアリーちゃんは、迷うことなく弦に歩み寄る。
「ありがとう、フェアリーちゃん」
弦がにっこり受け取ると、フェアリーちゃんは弦の腕を取ってムギュッと抱きついた。
「あー!フェアリーちゃん?私へのお土産はないのかしら?」
めぐがすかさず二人の間に割って入ると、フェアリーちゃんは「ほい」とばかりにめぐに紙袋を差し出す。
「ありがとう!」
弦の前に立ちはだかってお礼を言うめぐに、やれやれと弦は肩をすくめた。
その後、社長達とランチを食べながら和やかに意見交換をし、無事に視察は終わる。
めぐと弦は一度ホテルに戻って着替えてから、パークの出口で衣笠と最後の挨拶をした。
「衣笠さん、色々とお世話になりました」
「こちらこそ。お二人とも今回は本当にありがとうございました」
「衣笠さんもぜひグレイスフル ワールドにお越しください。今度は私達がおもてなししますので」
「はい、いつかきっと伺います」
「楽しみにしていますね」
笑顔で手を振ってパークをあとにする。
ようやく仕事が終わり、めぐはホッと肩の力を抜くと、弦の手をギュッと握った。
「ん?どした、めぐ」
「だってフェアリーちゃんがべったりくっついてたんだもん」
「へ?フェアリーちゃんにヤキモチ焼いてんの?」
「当たり前だよ。私の彼氏なのに」
「お子ちゃまだな、どっちも」
するとめぐはうつむいて立ち止まる。
「めぐ?」
弦も立ち止まってめぐの顔を覗き込んだ。
「子ども扱いしないで。私だって今に大人の恋愛出来るようになってみせるからね!」
そう言ってキッと弦を見上げると、背伸びをして弦の頬にキスをする。
「ほら、行くわよ」
再び歩き始めためぐに手を引かれて、弦はひとりごちる。
「なんか、違うんだけど……。翻弄されてる?俺」
「ん?何か言った?」
「いえ、何も」
真顔に戻り、弦はおとなしくめぐについて行った。
めぐと弦の視察の日がやって来た。
二人はスーツ姿で新幹線に乗り、愛知県のテーマパークへと向かう。
「新幹線なんて、すごく久しぶり。速いねー、静かだね」
「めぐ、ご機嫌だな」
「うん!だって氷室くんと一緒なんだもん。楽しくて仕方ないの。あ、お菓子食べる?」
「ははっ!遠足のおやつだな」
ちょっとしたデート気分を味わっていたが、あっという間に名古屋駅に着き、タクシーに乗り換えて目的地までたどり着いた。
「もう着いちゃったね。って、見て!氷室くん、お城だよ、素敵!」
おとぎ話に出てくるような真っ白な外壁と青い屋根のお城が見えてきて、めぐは目を輝かせる。
早く行こう!と弦の手を引いてエントランスに近づくと、パークの制服を着た女性スタッフが声をかけてきた。
「こんにちは!グレイスフル ワールドの雪村さんと氷室さんですね?」
めぐはパッと弦の手を離して姿勢を正す。
「はい、そうです。初めまして」
「初めまして。私はここフェアリーランドの広報担当、衣笠きぬがさと申します。お二人の滞在中は私がご案内いたしますね」
「雪村と氷室です。どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ。では早速パークの中へどうぞ」
赤いタータンチェックのロングコートにチロリアンハットを被った衣笠は、小柄でキュートな、まさにおとぎの国の女の子のような雰囲気だった。
「こちらにいらっしゃるのは初めてなんですよね?」
歩きながら衣笠が振り返り、めぐは頷く。
「はい。ずっと来てみたかったんです。うちのグレイスフル ワールドはリアリティーを大切にしているので、こういうファンタジーの世界に憧れていて」
「そうなんですね。そう言っていただけると嬉しいです。グレイスフル ワールドは世界旅行気分を味わえる、リアルなパークですよね。私、いつもテレビで雪村さんと氷室さんを拝見しているので、今日は芸能人にお会いしたような気分です」
「ええ?まさか、そんな」
「本当ですよ、なんだか緊張します。でもお二人ともテレビで見るより更に素敵ですね。憧れちゃうなあ」
頬に手を当ててうっとりする衣笠は、年齢は同じくらいに見えるが仕草がなんとも可愛らしい。
それがまた、このフェアリーランドの雰囲気にも合っている。
メルヘンな街並みに見とれながら歩いていると、やがて大きな宮殿のような建物が見えてきた。
「あちらがキャッスルホテルです。まずはお部屋にご案内しますね。少し休憩してください」
「えっ、あんなに素敵なお城がホテルなんですか?」
「ええ、そうです。お二人にはスイートルームをご用意しました」
「スイートルーム!?そんな、普通のお部屋で構わないです」
「いえ、閑散期なので空きがたくさんありまして。どうせなら1番いいお部屋に泊まっていただきたいのです。グレイスフル ワールドのホテルよりは格が落ちると思いますけど」
「まさか、そんな。可愛らしさに既にやられてます」
めぐがそう言うと、衣笠はふふっと笑う。
「雪村さん、とってもお綺麗なのに気さくな方で安心しました。今日はこのあと、お二人で好きなところを回ってくださいね。明日は歓迎セレモニーがありますので、よろしくお願いします」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
両パークが友好な関係であることをアピールする為、記念写真を撮ることになっており、めぐも弦もパークの制服を持参していた。
「それでは、こちらがスイートルームです」
ゴージャスな内装のロビーからエレベーターで6階まで上がり、突き当たりの部屋のドアを衣笠が開ける。
中に足を踏み入れためぐは、優雅な雰囲気の部屋と窓の外に広がる景色に感嘆の声を上げた。
「わあ、とっても素敵!ね、氷室くん」
「ああ、そうだな。家具も上質で高級なものばかりだし」
すると衣笠が嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「ありがとうございます。喜んでいただけてホッとしました。ベッドルームは左右に2部屋ありますので、お一人ずつご利用いただけます。それからこちらがパークのパスポートとミールクーポンです。今日は終日ご自由に楽しんでください。もし必要であれば、私も同行しましょうか?」
聞かれてめぐは首を振る。
「いいえ、大丈夫です。衣笠さん、ありがとうございました」
「どういたしまして。何かありましたらいつでもこちらの番号にご連絡ください」
そう言って差し出された名刺を受け取り、めぐと弦も自分の名刺を差し出した。
「わあ、雪村さんと氷室さんの名刺いただいちゃった」
嬉しそうに笑う衣笠は、どこまでもキュートだった。
◇
「素敵なところだね。まさにおとぎの国」
ホテルでひと息つくと、二人は早速パークに繰り出した。
弦と手を繋ぎ、めぐはあちこちに目を奪われる。
「しかも氷室くんと初めてのデート!もう夢の世界だね。仕事だけど」
「ははっ!確かにな。でも純粋に楽しもう。端から端まで見て回るぞ」
「うん!早く行こう。アトラクションも楽しそうだよ。それになんと、絶叫マシンがないの!」
「それは良かったな、めぐ」
虹をくぐり星空を飛ぶ魔法のカーペットに乗ったり、美しいお城の舞踏会のショーを観たりと、二人は記録用の写真を撮りながらパークを巡る。
チュロスやポップコーンの食べ歩きメニューやお土産もたくさん買い、湖のほとりにあるレストランでディナーを味わった。
夜のショーと花火も楽しんでから、二人は大満足でホテルの部屋に帰った。
「楽しかったね。うちのパークとはまた違った非日常感。子どもはもちろんだけど、大人も童心に帰って楽しめる……って感じかな?」
パソコンをカタカタと入力しながら、めぐはソファでレポートをまとめる。
「それにほら、マスコットキャラクターのフェアリーちゃん!可愛いよね。グッズも色んなのがあって、子ども達にも大人気だし」
「ああ、そうだな。うちは大人をターゲットにしてるしリアリティーを大事にしてるからマスコットキャラクターはいないけど、やっぱりいるといいな」
「うん。今は私達がゆるキャラ代わりに宣伝活動してるもんね。でもいてくれたらいいなあ」
「ポリシーに反するから難しいかも。けどやっぱり家族連れで遊びに来たら、子どもが楽しめるエリアもあるといいよな。そういった場所限定でキャラクターを作ってもいいかも」
「あ、なるほど」
弦の言葉にめぐは頷く。
「そしたら、例えばだよ?スイスやアルプスのエリアに可愛い女の子のキャラがいたり、オーストラリアにはカンガルーやコアラのグッズを展開したり、とかは?」
「おお、それいいな!その国の雰囲気を壊さずにそういう可愛らしさを入れていくの」
「うん。ロシアのマトリョーシカのお土産も、そのキャラで作ったり」
「いいね。名前はグレイスちゃんとか?」
「あはは!うん、グレイスちゃん。ロイヤルブルーがうちのテーマカラーだから、洋服もその色で。んーっと、こんな感じかな?」
めぐがノートにさらさらと鉛筆で女の子の絵を描くと、弦は眉間にしわを寄せた。
「めぐ……、絵心は壊滅的だな。妖怪にしか見えん。子どもが泣き出しそう」
「えー、酷くない?お口がにっこりしてて可愛いでしょ?」
「怖い、夢でうなされそう」
「ちょっと、氷室くん?」
「まあまあ。アイデアはいいと思うから、企画課に提案しようか」
「うん!うちの新たな魅力になるといいな。明日歓迎セレモニーでフェアリーちゃんに会えるから、色々参考にさせてもらおう」
「そうだな。さてと、そろそろ寝るか」
弦は立ち上がるとめぐの荷物を持ち、リビングに繋がるベッドルームに運んだ。
「めぐがこっちの部屋でいいか?」
振り返ると、めぐは頬を膨らませてむくれている。
「なんだ?あっちの部屋がいいの?」
「違う。氷室くんと同じ部屋がいい」
「一人で寝るのが怖いのか?」
「どうしてそうなるの!おかしいでしょ?私達つき合ってるのに別々の部屋で寝るとか」
「別におかしくないだろ?」
「おかしいもん!」
そう言うとめぐは、ガシッと正面から弦に抱きついた。
「なにそれ?」
「くっつき虫。離れませんから」
「はいー?バカなこと言ってないで……」
「バカじゃないもん!」
めぐは弦が部屋から出て行こうとしても、ピタリとくっついて離れない。
はあ、とため息をついた弦は、ピンとひらめいた。
「めぐ、俺今からシャワー浴びるけど?」
途端にめぐはパッと離れる。
よしっ!と弦はガッツポーズをして「じゃあな」と出て行った。
◇
「氷室くんめー、このままで済むと思ったら大間違いよ」
めぐはバスタブに浸かりながら、メラメラと闘志を燃やす。
「大体さ、俺の方がめぐを好きな気持ちが大きいって言うけど、どこがなの?もう片時も君を離さないよ!っていうのなら分かるけど。せっかく二人きりの夜なのに、あっさり『あばよ!』って」
ブツブツ呟いているうちに本気で腹が立ってきた。
「おやすみのチューもないんだよ?それで恋人だって言えますか?いいえ、言えません!もらいに行きましょうとも、おやすみチューを」
ザバッとお湯から出ると、身体を拭いてバスローブを着る。
髪も乾かして寝る支度を整えると、「あとはチューだけ!」と拳を握りしめて部屋を出た。
同じ頃、シャワーを浴びた弦はバスローブ姿でビールを飲んでいた。
コンコンと部屋のドアがノックされて、思わずビクッとする。
「氷室くん、入っていい?」
「いや、ちょっとだめ」
焦りながら必死で声を落ち着かせた。
ホテルでめぐと二人きりなんて、手を出さない訳がない。
だがめぐはまだ軽くキスしただけで頬を染めるような純情さだ。
絶対に今の自分は獣にしか思われないだろう。
(めぐの為にも俺の為にも、頼むから来ないでくれー)
心の中で念じるが、全く通じなかった。
「今はだめなの?いつならいいの?」
「いや、いつでもだめ」
「どうして?ちょっとだけならいいでしょ?」
「そのちょっとが、ちょっとじゃなくなるんだ」
「何言ってるの?もう、入るよ?」
「だめだ!」
慌ててドアに向かうが遅かった。
それどころかドアを開けためぐを自分の胸で抱き留める形になってしまい、弦は一気に身体中が熱くなる。
「……氷室くん」
バスローブ姿のめぐを思わずギュッと抱きしめた。
風呂上りのめぐから甘くていい香りがして、思わず息を吸い込む。
いつもはまとめている髪をサラリとなでると、顔をうずめて耳元にくちづけた。
「めぐ……」
「んっ……」
耳に吐息がかかっただけで身体をピクンとさせるウブな反応のめぐは、汚れのない聖女のようだった。
弦はグッと唇を噛みしめて、めぐの身体を引き離す。
「めぐ、ほら。部屋に戻って寝な」
「でも、氷室くんと一緒にいたい」
「今はだめだ」
「どうして?どうやったら一緒にいてくれるの?」
潤んだ瞳で見上げられれば、理性はもはや彼方へと飛んでいきそうになる。
弦はわざと視線をそらした。
「今回は仕事で来てるだろ?この部屋だって用意してもらった部屋だ。だからプライベートは切り離そう。な?」
「……うん、そうだね」
「それにめぐ、まだ俺のこと名前で呼んでくれないだろ?まずはそこからだ。少しずつ恋人としての時間を重ねていこう」
「そ、そんなの!ちゃんと出来るよ、すぐに出来るから」
思いがけず必死に訴えてくるめぐに、弦は面食らう。
(この場をやり過ごす為にちょっといじわるな事を言ってしまったのに)
めぐは真剣な表情でギュッと自分の手を握ると、意を決したように弦を見上げた。
「大好きです、弦くん」
ドキューンと弦のハートが打ち抜かれる。
頭の中が真っ白になり、何も考えられず、動けない。
そんな弦の肩に手を置くと、めぐは背伸びをしてチュッと可愛くキスをする。
「おやすみなさい、弦くん。また明日ね」
耳元でささやくと、スルリと弦の腕をすり抜けて部屋を出て行った。
「ちっきしょー!なんだよあれ、完全に反則だろ!」
そのあと弦がベッドに突っ伏し、バタバタと暴れ回ったのは言うまでもなかった。
◇
「おはようございます、雪村さん、氷室さん。よくお休みになれましたか?」
翌朝、10時に部屋にやって来た衣笠にめぐはにっこり微笑む。
「はい、ぐっすり。衣笠さん、とても豪華なお部屋をありがとうございました」
「いいえ、喜んでいただけて良かったです。ではこのあとの歓迎セレモニーについてお話しさせていただきますね」
ソファに座って衣笠の説明を受けると、めぐと弦はグレイスフル ワールドの制服に着替えた。
めぐの胸元にはいつものブルースターのネックレスが輝いている。
「わあ、お二人ともとっても素敵!美男美女に磨きがかかって、もう本当に芸能人にしか思えません」
感激した面持ちの衣笠に苦笑いして、めぐと弦は出かける支度を整えた。
「それではパークのイベントスペースにご案内しますね。そこで弊社の社長から記念品の贈呈がありまして、マスコミがその様子を撮影します。そのあとフェアリーちゃんと私も並んでフォトセッションとなります」
「はい!フェアリーちゃん、楽しみです」
わくわくしながら衣笠に続いてパークを歩いて行く。
小人の街がテーマのエリアを抜けると、昨日舞踏会のショーを観たステージが見えてきた。
「あちらです。もうマスコミが来てますので、先に裏手に回って社長からご挨拶させていただきますね」
「はい」
さすがのめぐも、緊張感が高まって来た。
ステージの裏に行くと、スーツを着た年配の男性が何人か立ち話をしている。
「社長、雪村さんと氷室さんをお連れしました」
衣笠が声をかけると、一斉に振り返る。
「おお、これはこれは。遠いところをようこそお越しくださいました。フェアリーランド運営会社の社長をしております、野村のむらです」
「初めまして、グレイスフル ワールド広報課の雪村と氷室と申します。本日はお招きいただきまして誠にありがとうございます。お目にかかれて大変光栄です」
めぐと弦は社長に挨拶して名刺を交換した。
「いやー、お二人ともこんなにもイケメンと美女で、やはり格が違いますな。グレイスフル ワールドが高級感と本物志向を売りにしているのがよく分かります」
「いえ、そんな。こちらのフェアリーランドもメルヘンやファンタジーの可愛らしい雰囲気で、とても素敵ですね」
「まあ、お互いそれぞれに良さがありますよね。今後はもっとアイデアを交換し合える関係を築いていきたいと思っておりますので、末永くよろしく」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
時間になると、衣笠が進行役としてステージに上がりマイクを握った。
社長が登壇して挨拶すると、いよいよめぐと弦も招かれてステージに上がる。
友好の証の楯を受け取り、マスコミのカメラに笑顔を向ける。
最後にフェアリーちゃんも登場して、記念撮影となった。
が、弦の隣に並んだフェアリーちゃんはやたら弦にぴたりと寄り添い、うふふと言わんばかりのポーズで愛想を振りまく。
(ちょっと、近過ぎない?)
めぐはカメラに向かって微笑みつつ、横目でフェアリーちゃんの動きをうかがっていた。
◇
「ありがとうございました。以上でセレモニーは終了です」
ステージを下りて裏手に回ると、衣笠がめぐと弦に挨拶した。
「これはお二人への記念品です。はい、フェアリーちゃん渡してね」
衣笠から紙袋を受け取ったフェアリーちゃんは、迷うことなく弦に歩み寄る。
「ありがとう、フェアリーちゃん」
弦がにっこり受け取ると、フェアリーちゃんは弦の腕を取ってムギュッと抱きついた。
「あー!フェアリーちゃん?私へのお土産はないのかしら?」
めぐがすかさず二人の間に割って入ると、フェアリーちゃんは「ほい」とばかりにめぐに紙袋を差し出す。
「ありがとう!」
弦の前に立ちはだかってお礼を言うめぐに、やれやれと弦は肩をすくめた。
その後、社長達とランチを食べながら和やかに意見交換をし、無事に視察は終わる。
めぐと弦は一度ホテルに戻って着替えてから、パークの出口で衣笠と最後の挨拶をした。
「衣笠さん、色々とお世話になりました」
「こちらこそ。お二人とも今回は本当にありがとうございました」
「衣笠さんもぜひグレイスフル ワールドにお越しください。今度は私達がおもてなししますので」
「はい、いつかきっと伺います」
「楽しみにしていますね」
笑顔で手を振ってパークをあとにする。
ようやく仕事が終わり、めぐはホッと肩の力を抜くと、弦の手をギュッと握った。
「ん?どした、めぐ」
「だってフェアリーちゃんがべったりくっついてたんだもん」
「へ?フェアリーちゃんにヤキモチ焼いてんの?」
「当たり前だよ。私の彼氏なのに」
「お子ちゃまだな、どっちも」
するとめぐはうつむいて立ち止まる。
「めぐ?」
弦も立ち止まってめぐの顔を覗き込んだ。
「子ども扱いしないで。私だって今に大人の恋愛出来るようになってみせるからね!」
そう言ってキッと弦を見上げると、背伸びをして弦の頬にキスをする。
「ほら、行くわよ」
再び歩き始めためぐに手を引かれて、弦はひとりごちる。
「なんか、違うんだけど……。翻弄されてる?俺」
「ん?何か言った?」
「いえ、何も」
真顔に戻り、弦はおとなしくめぐについて行った。
11
あなたにおすすめの小説
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
思い出のチョコレートエッグ
ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。
慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。
秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。
主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。
* ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。
* 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。
* 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
桜井 響華
恋愛
派遣受付嬢をしている胡桃沢 和奏は、副社長専属秘書である相良 大貴に一目惚れをして勢い余って告白してしまうが、冷たくあしらわれる。諦めモードで日々過ごしていたが、チャンス到来───!?
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
ソツのない彼氏とスキのない彼女
吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。
どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。
だけど…何故か気になってしまう。
気がつくと、彼女の姿を目で追っている。
***
社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。
爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。
そして、華やかな噂。
あまり得意なタイプではない。
どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる