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9 待っていたプレゼントは静かに渡された。
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遅くなるなら連絡くれれば、太郎の散歩は代わると言ってたのに。
夕方前には帰って来た。
どんな顔でプレゼントを持ってくるのかと、ちょっとの期待とちょっとの不安で待っていた。
隣の部屋に帰って来たあと、しばらく音もなく。
下に降りて行ったあと、太郎が喜んでワンと吠える声と、玄関が閉まる音が聞こえた。
ダメだったんだろうか?
昨日もその前も、階段を駆け上がってそのまま私の部屋に飛び込んできたのに。
私が留守と思ったかもしれないけど。
携帯には何の連絡もない。
しょうがない。話してくれるのを待つしかないし、嘘のご褒美は少し傷が癒えたころに思い出してもらってもいいよ。
まさか捨ててないよね。コンビニのゴミ箱に捨てて来たとか、ないよね?
そっと下に降りる。
お父さんがのんびりとテレビを見ていた。
「お父さん、お兄ちゃん帰って来た?」
「ああ、太郎と出かけたよ。」
「楽しそうな太郎の声は聞こえたけど、お兄ちゃんは普通だった?」
「別に、何だ、喧嘩でもしてたのか?」
「ううん。いい。」
やっぱりお父さんは当てにならない。
優しいだけの男は今一つ、ここぞという時に役に立たない。
阿里さん、ダメですか?
すごくいい奴です。
優しいです。
あんなに浮かれてたんです。
きっとすごくうれしかったんです、すごく好きです。
可愛がってくれると思います。
絶対浮気はしないだろうし、泣かしたりもしません。
そうは思えませんでしたか?
ダメでしたか?
部屋に戻って漫画を読んでいた。
やっぱり二時間くらい散歩してたらしい。
少しは太郎に癒されたんだったらいいけど。
階段を上がって来て、部屋に戻り、私の部屋のドアがノックされた。
やはりテンションマックス有頂天とはいかないらしい。
「はい。」
「椎名、これ気に入ってくれるかな?」
やっぱり元気がない。
出されたプレゼントを今開けても喜べない。
それは聞くでしょう。
「どうだったの?」
もらった小さな袋はそのまま机の上に。
「完全に嫌われた。」
あ~あ。
「何で?プレゼントは一緒に選んでくれた?」
「ああ、気に入ってくれると嬉しいって。最後に選んだのは俺だから。」
「うん、ありがとう。・・・じゃあ、どうして?」
店員さんに妹へのプレゼントと言ったら誤解されたらしい。
まあ、横にいたら彼女だと思うから、そう聞かれて慌てたんだろう、目に浮かぶ。
妹のふりをされて、『お兄ちゃん』と言われたと。
なかなか乗りのいい阿里さんだ。
ビックリしただろうお兄ちゃん、残念そうに困惑する顔が浮かぶ。
『本当にお兄ちゃんと買い物してる気分でした。』
そう言われたと。
怖がって近寄ってくれないと言ってたこの間よりは進歩だと思うけど。
「つい、聞いてしまったんだよ。」
「なにを?」
「原市が好きなんじゃないかって。」
ええええ~、何で・・・・って気になるところだよね、分かるけど。
「どうしてそんな失礼なことを聞くのかって思うよ。」
「多分思われたんだと思う。笑顔も消えて、俯かれて。馬鹿正直に『手伝うことはできない。』って言ってしまった・・・・。」
ああ~、ダメじゃん。
「ちゃんと伝えたの?お兄ちゃんの気持ち、諦めるまで待つでもいいし、ずっと好きだったでもいいから、何か伝えたの?」
「その前に逃げられた、食事のお礼を言われて、約束の買い物は終わったから帰りますって、そう言われて、走って行った。」
当然追いかけなかったんだろう。
呆然と見てたんだろう。
「ねえ、それから連絡してないの?謝ってないの?誤解だとか、何とか、伝えたいことは別にあるとか。」
「何も。」
「もう~!!」
携帯を出してぼんやり眺めるお兄ちゃんが可哀想に思える。
このままじゃあ、しばらくお通夜の食卓になるじゃない。
さすがに変だと気がつくよ。
「謝って。とにかく、今なら間に合う。早くしないと手遅れになるよ。」
「もう駄目だと思う。最後に酷く傷ついた目をされた。IDも消去されてるかも。」
「じゃあ、見てよ、消去されてなかったら、すぐに謝って。」
思わず自分のことのように低い声になった。
だいたいいつからそんな弱虫になったの?
動かない手から、携帯を取り上げて、見た。
「あるよ、ALLYさん。これでしょう?」
「本当にただの先輩にもなれなくなるよ、無神経なヤツって思われたまま嫌われ者だよ、いいの?」
背中を押して部屋に戻した。
「連絡を取って、話がしたいって。」
きっと聞いてくれる。絶対大丈夫。そう思ってドアを閉めた。
しばらくは部屋で立ち尽くしてそう。
ドンドンとドアを叩いてから、下に降りた。
「どうした?やっぱり喧嘩か?」
お父さんがうすらぼんやりと聞いてくる。
「そう。」
そう言うことでいい。説明する気もないし。
下に降りたと分かったから連絡してるだろう。
太郎のところに行く。
まだハゲてもいない頭を撫でる。
しばらく太郎にも被害が及ぶかどうかだよ、太郎も励ましてよ。
首の下を撫でる。
「ワン。」
ああ、太郎は本当に単純でいい。
難しくしてるのは誰なんだ、それは絶対お兄ちゃんだろう。
怒ってるんだろうか?
もし本当に原市さんのことが好きなら落ち込んでるかも。
嫌なことを言ったお兄ちゃんが嫌いになるかも。
彼女がいても、それを分かってても、好きになるのかな?
そんな一途な人なのかな?
仲直りして欲しいのに。出来たら、話をして、お兄ちゃんの気持ちを分かって欲しいし、応えて欲しい。
あんまりいい予感がしない、なかなか部屋には戻れない。
プレゼントも開けられないじゃない。
夕方前には帰って来た。
どんな顔でプレゼントを持ってくるのかと、ちょっとの期待とちょっとの不安で待っていた。
隣の部屋に帰って来たあと、しばらく音もなく。
下に降りて行ったあと、太郎が喜んでワンと吠える声と、玄関が閉まる音が聞こえた。
ダメだったんだろうか?
昨日もその前も、階段を駆け上がってそのまま私の部屋に飛び込んできたのに。
私が留守と思ったかもしれないけど。
携帯には何の連絡もない。
しょうがない。話してくれるのを待つしかないし、嘘のご褒美は少し傷が癒えたころに思い出してもらってもいいよ。
まさか捨ててないよね。コンビニのゴミ箱に捨てて来たとか、ないよね?
そっと下に降りる。
お父さんがのんびりとテレビを見ていた。
「お父さん、お兄ちゃん帰って来た?」
「ああ、太郎と出かけたよ。」
「楽しそうな太郎の声は聞こえたけど、お兄ちゃんは普通だった?」
「別に、何だ、喧嘩でもしてたのか?」
「ううん。いい。」
やっぱりお父さんは当てにならない。
優しいだけの男は今一つ、ここぞという時に役に立たない。
阿里さん、ダメですか?
すごくいい奴です。
優しいです。
あんなに浮かれてたんです。
きっとすごくうれしかったんです、すごく好きです。
可愛がってくれると思います。
絶対浮気はしないだろうし、泣かしたりもしません。
そうは思えませんでしたか?
ダメでしたか?
部屋に戻って漫画を読んでいた。
やっぱり二時間くらい散歩してたらしい。
少しは太郎に癒されたんだったらいいけど。
階段を上がって来て、部屋に戻り、私の部屋のドアがノックされた。
やはりテンションマックス有頂天とはいかないらしい。
「はい。」
「椎名、これ気に入ってくれるかな?」
やっぱり元気がない。
出されたプレゼントを今開けても喜べない。
それは聞くでしょう。
「どうだったの?」
もらった小さな袋はそのまま机の上に。
「完全に嫌われた。」
あ~あ。
「何で?プレゼントは一緒に選んでくれた?」
「ああ、気に入ってくれると嬉しいって。最後に選んだのは俺だから。」
「うん、ありがとう。・・・じゃあ、どうして?」
店員さんに妹へのプレゼントと言ったら誤解されたらしい。
まあ、横にいたら彼女だと思うから、そう聞かれて慌てたんだろう、目に浮かぶ。
妹のふりをされて、『お兄ちゃん』と言われたと。
なかなか乗りのいい阿里さんだ。
ビックリしただろうお兄ちゃん、残念そうに困惑する顔が浮かぶ。
『本当にお兄ちゃんと買い物してる気分でした。』
そう言われたと。
怖がって近寄ってくれないと言ってたこの間よりは進歩だと思うけど。
「つい、聞いてしまったんだよ。」
「なにを?」
「原市が好きなんじゃないかって。」
ええええ~、何で・・・・って気になるところだよね、分かるけど。
「どうしてそんな失礼なことを聞くのかって思うよ。」
「多分思われたんだと思う。笑顔も消えて、俯かれて。馬鹿正直に『手伝うことはできない。』って言ってしまった・・・・。」
ああ~、ダメじゃん。
「ちゃんと伝えたの?お兄ちゃんの気持ち、諦めるまで待つでもいいし、ずっと好きだったでもいいから、何か伝えたの?」
「その前に逃げられた、食事のお礼を言われて、約束の買い物は終わったから帰りますって、そう言われて、走って行った。」
当然追いかけなかったんだろう。
呆然と見てたんだろう。
「ねえ、それから連絡してないの?謝ってないの?誤解だとか、何とか、伝えたいことは別にあるとか。」
「何も。」
「もう~!!」
携帯を出してぼんやり眺めるお兄ちゃんが可哀想に思える。
このままじゃあ、しばらくお通夜の食卓になるじゃない。
さすがに変だと気がつくよ。
「謝って。とにかく、今なら間に合う。早くしないと手遅れになるよ。」
「もう駄目だと思う。最後に酷く傷ついた目をされた。IDも消去されてるかも。」
「じゃあ、見てよ、消去されてなかったら、すぐに謝って。」
思わず自分のことのように低い声になった。
だいたいいつからそんな弱虫になったの?
動かない手から、携帯を取り上げて、見た。
「あるよ、ALLYさん。これでしょう?」
「本当にただの先輩にもなれなくなるよ、無神経なヤツって思われたまま嫌われ者だよ、いいの?」
背中を押して部屋に戻した。
「連絡を取って、話がしたいって。」
きっと聞いてくれる。絶対大丈夫。そう思ってドアを閉めた。
しばらくは部屋で立ち尽くしてそう。
ドンドンとドアを叩いてから、下に降りた。
「どうした?やっぱり喧嘩か?」
お父さんがうすらぼんやりと聞いてくる。
「そう。」
そう言うことでいい。説明する気もないし。
下に降りたと分かったから連絡してるだろう。
太郎のところに行く。
まだハゲてもいない頭を撫でる。
しばらく太郎にも被害が及ぶかどうかだよ、太郎も励ましてよ。
首の下を撫でる。
「ワン。」
ああ、太郎は本当に単純でいい。
難しくしてるのは誰なんだ、それは絶対お兄ちゃんだろう。
怒ってるんだろうか?
もし本当に原市さんのことが好きなら落ち込んでるかも。
嫌なことを言ったお兄ちゃんが嫌いになるかも。
彼女がいても、それを分かってても、好きになるのかな?
そんな一途な人なのかな?
仲直りして欲しいのに。出来たら、話をして、お兄ちゃんの気持ちを分かって欲しいし、応えて欲しい。
あんまりいい予感がしない、なかなか部屋には戻れない。
プレゼントも開けられないじゃない。
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