悲哀人形日記 

龍賀ツルギ

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第二部 蘭から薔薇へ 第二章

集結

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パールこと矢沢友江は横浜出身横浜在住。
フリーターをやりながらバンドをやっている。
バンドではドラムス担当。
友江のバンドは大学の軽音部レベルでプロを目指せるレベルにないが、バンド内は不良学生時代からの気の合う仲間同士であり友江も今の気楽な境遇が気に入っていた。
また友江もいつかドラムで身を立てたいと考えていた。
実は友江の実家は横浜で古くからの任侠の家であり、友江は家では若い衆からお嬢やお嬢さんと呼ばれていた。
高校卒業後には素性を隠して大手電機メーカーに就職。
大手電機メーカーがたちの悪い総会屋に恐喝された時に父親の矢沢恭介が組長の鷹矢組が総会屋に裏で話をつけた件で代わりに友江を就職させたのだ。
ところが友江は歯車なんかやだね!と会社をやめてしまいフリーター。
せっかく大手のカタギの会社に就職を斡旋してやったのに、辞めた事で父娘で大喧嘩となり友江は家を出たのだ。
母は友江が子供の頃に病死してるので父一人、娘一人であり、恭介は友江を溺愛してはいたが、昔堅気な強情な性格でありなかなか父娘和解が出来ないでいた。

「全く親父も強情だぜ。まあアタシも人の事は言えねえが…」

友江がそんな事を考えながら愛車の150CCスクーター。イエローのマジェスティを走らせて久しぶりに実家に顔を出した。
組長恭介が寂しがってる事をよく知る若頭の武藤が、たまに実家に顔を出して欲しいと友江に頼み込んだのだ。

「おかえりなさい!お嬢!
「おかえりなさいませ!
「親父さんが喜びます!」
「嬉しいっす!お嬢さん」

✧これだ!これだからたまに家に顔出すと。だから嫌なんだよなあ。サファイアやルビー、アンバー達もあたしがヤクザの娘なんて知られたら、二度と和希の調教会に呼んでもらえねえよ。まったく…

「よっ…友江。久しぶりだな。
どうだいい男は出来たか?
俺みたいなイカした男がよ『笑』」

✧はっ…あたしにこんな口調で話しかける事はうちの若衆には絶対できねえ。
親父に指を詰めさせられるからな。
こんな事をあたしに言えるのは親父の恭介と兄弟分の…

吹雪會組長、水原柾『まさき』。

水原はリーゼントに口ひげ、服はスーツが大嫌いだから関東の極道が集う大集会に着る礼服だけ。
赤いブルゾンにTシャツにジーンズ、ウェスタンブーツとまるで1970年代のアメリカ映画の様な姿。
水原は映画オタクで特に1960年代後半から1980年代にかけての映画が好きだった。
また水原は友江の父、矢沢恭介の兄弟分ゆえに友江が幼い頃からの知り合いで可愛がってもらったのだ。

「なんだよ。水原のおじさんか。うちになんか用?」

「ああ。ちょっと野暮用でな。
うちの吹雪會も最近大きなトラブルに巻き込まれて組員総出で対処していた間、矢沢の兄弟には縄張りの面倒見てもらってたからな。
お礼も兼ねてさ。
でも友江も今の感じじゃまだいい男には巡り合ってねえな『笑』」

「うっせえよ!余計なお世話だぜ!」

「ハハハハハ!まあそのうちに見つかるさ。
友江は口は悪いがお前は母に似て美人だからな。
それよりなにか困った事があれば遠慮なく相談しな。
俺は相手が政治家や外国人傭兵だろうが相手に出来る頼りになる男だからな。」

「頼らねーよ!
何いってんのか意味が分からねえ?
なんだよ外国人傭兵って。そんな相手に喧嘩売るヤクザがいるか?」

友江は自分が学生時代から使っていた部屋に戻る。
友江が家を出たままの部屋。
親父は用事でまだ夜にならないと帰って来ないらしい。

✧いけねえ…センチな気持ちになってきちまったぜ…

✧親父がいなけりゃ直ぐに下宿先に戻ってもいいんだが、勝手に帰ると来た意味がないからなあ…
するとスマホにメールが…
誰だよいったい?
えっ…トパーズ…まさかまた和希の調教会か!『喜』
ーーーーー
アンバーこと隅田明奈は高校3年。
さいたま市在住で高校は進学校だが、学校では根暗なメガネと呼ばれて友達はいなかった。
ましてや明奈はBL大好きでありまたSMも大好きだったのだが、こんなコアな趣味をクラスメイトに話せる訳もなく、部活も全くやっていない。
そんな明奈にとって年が近いサファイアや年上ではあるがルビー、トパーズ、パールと親交が持てた事は嬉しかった。
また明奈はネットに詳しくハッキングも出来る。
そんな明奈にもトパーズこと紗季からのメール。
そのメールを読んだ明奈は驚愕。

「こっ…こっ…これは…いけませんねえ…是非ともサファイアに協力しなくては!」
ーーーーー
ルビーこと武田麻里子は大学バレーボールの選手。
バイでも有り大学では同性にもてるので付き合ってる彼女もいる。
もっともサディストでも有り調教会では和希のような美少年を責めたのは本当に興奮したのだが。
大学バレーの練習後にスマホを見るとパールからのライン。
何かしら?と思ってラインの内容を確認した麻里子の顔色が変わった。

✧何やらサファイアや和希に大きた問題が起こったようね。
ならば助けなければいけないでしょう。
ーーーーー
翌日、以前5人が別れた上越新幹線の駅にあるスターボックスで待ち合わせ。
真希は不安だった。
真希は九藤学園の制服。
真希が相手にする稲垣太蔵は地元では政治家や暴力団すら使う実力者。
以前稲垣を探っていたフリーライターが謎の死を遂げたりしている化け物。
そんな稲垣を相手にする事に力を貸してなどくれるだろうか?
もし…稲垣に怖れを抱いて…誰も来なかったら…
私一人で和希を…救い出せるだろうか?
恐怖で黒ハイソックスを履いた足がガクガク震える…

「お待たせ!サファイア!」

真希を呼ぶ声はトパーズこと中森紗季。
真希は紗季を見た瞬間…
大量の涙が瞳から溢れ出た。

ルビー「武田麻里子」
アンバー「隅田明奈」
パール「矢沢友江」
そして中森紗季…

✧みんな…みんな…来てくれた…来てくれたんだ…
和希を助ける為に頼りになる仲間が…誰一人欠ける事なく…❗️『涙』
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