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四 偽モノの、婚約者ができました。
side遙音3
しおりを挟む歩く地雷原こと春芽さんをして、『やろうと思えばなんでも出来る』と言わしめさせるうちの一人のくせに、自分を気にかけること、手をかけることをしない。
心底自分をどうでもいいと思っている奴だ。
そんなんだからよく風邪も引くんだよ。
なんでかその日のうちに治っちまう体質? だから、全然気にしてねえみたいだけど。
熱あろうが何だろうが、毎晩春芽のいる警察署へ行っちまうしな。
自己管理に関しては、八つも年下の俺の方がてめえに気をかけている自覚すらあるくらいだ。
……そんなだから、華取さんが手を廻したとかそーいう理由なら納得だけどな。
そうならそうと言ってくれればいいものを。
ちゃんとした理由があるなら誰に言うこともない。からかうために雲居や春芽には言うけど。
「……美味かったなー」
昨日のめっちゃうめえ夕飯を思い出した。せっかく旧館まで行ったんだから、昼飯もぶんどってくればよかったなー。
「………」
――華取咲桜。名の記された記憶のファイルをめくる。
華取在義の一人娘。母親は四歳のときに亡くなっている。目立つことはないが正義感が強く、間違いと思えば教師相手でも退かない肝がある。
大人しそうな外見だが、それに似合わない通り名もあるそう。それとは別であるが、二宮さんに言わせれば、評価は「在義の娘」。
炎の塊、太陽の塊と警察内部で評される、華取在義の愛娘。つまりは華取咲桜もその資質があるということ。
「……炎の塊、ね」
それが華取さんに匹敵するレベル、とか言われたら引くしかないけど。
俺の中での華取さんの評価はそういうもんだ。
まずは遠目に観察してみるか。
一年生の教室は本館の二階。華取咲桜のクラスを正面から見える別館の空き教室に入った。
別館は、生徒の出入りは自由。特に問題の起きない藤城学園では、鍵はあってないようなものだ。
いくら大きな問題がないとはいえこのご時世、こいうとこ、ちょっと改善の余地あると思う。
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