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第二章
4:死神さんと僧侶
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「七ちゃん、どないしたん? 後ろおらへんかったさかい、どこ行ったんかと」
「すみません、橘さんから名札をもらっていました」
春子さんと合流して、更衣室へ案内してもらう。更衣室は事務所の隣にあった。入ってみると、壁際に縦長のロッカーが六つ並んでいた。奥の方は段ボール箱や大小の荷物が積まれて物置状態になっている。
「七ちゃんのロッカーは奥から三番目やで。ちょっと待ってな、今制服出すさかい」
春子さんは奥に歩いていき、積み上げられた段ボール箱から一つを手前に引き出す。中を開けると、ビニールの包装がされたグリーンジャケットがぎっしり入っていた。サイズを確認してもらい、一着を渡される。着てきたコートを脱いで、さっそくビニールの包装を取る。
グリーンジャケットに袖を通すと、それまで遠くにあった緊張が一気に押し寄せてきた。
ジャケットはノリがきいていて色が強い。色あせている春子さんのものと比べると、その違いは一目瞭然だ。いかに春子さんが長くここで働いてきたかが分かる。
更衣室の片隅におかれた姿見の前に立ち、橘さんからもらった名札を胸元につけて、改めて自分の姿を見た。黒のパンツにグリーンジャケットを着たわたしは、どこか別人に思える。
学校でもなく、家でもなく、まったく新しい場所へ踏み込んだ新しい自分。まだ汚れ一つない真っさらな制服はわたしの心そのものだ。これを、わたしはこれからどんどん汚していくんだろう。
そう思うと、自然と背筋が真っ直ぐ伸びた。
「うん、よう似合おうてるでぇ七ちゃん。制服は一応エプロンもあるさかいな。夏はエプロンにすんのもアリやで。まぁいうても、この境界は季節がないさかい夏も涼しいんやけどね」
姿見の傍らで春子さんが満足そうに頷く。わたしはちょっと気になって春子さんを見た。
「あの……春子さんってここの正社員になるんですか? いつからここに……?」
「うちはパートやで、パート。ここにはそれなりに長うおるでぇ。新太くんが入るより前におるさかいね。ちなみに新太くんは契約社員。うちら専門屋はここの従業員なれど、正社員にはなれへんのや。絶対」
「……専門屋のスーパーなのにですか?」
「まぁ話すより、実際見てもろた方が早いやろうねぇ」
春子さんは相変わらず温和に微笑んで答えをはぐらかす。
つと、そこで天井のスピーカーから軽快なチャイムが鳴った。続けて女性の声でアナウンスが流れる。
『おはようございます! いらっしゃいませ! 本日もご来店下さいまして、誠にありがとうございます! 当店、ただいまより開店です!』
「あら、開店やね。ほな行こか」
「そういえば……橘さんから聞いたんですけど、この境界って時間という概念がないんですよね。ここの時間はどうなっているんですか……?」
「ん? 普通に現世の時計を持ってきてんで? ほら宇宙も昼とか夜とか分からへんさかい地上の時間を使うてるいうし、それと同じやね」
ああ、なるほど……。そう思えば分かりやすい。
「時間って今まで気にしたこともなかったですけど、なかったらやっぱり大変ですね」
「そやでぇ七ちゃん。時間がなかったら困るんやさかい、時給が」
春子さんはウフフと笑いながら、親指と人さし指をくっつけお金を示すジェスチャーをする。関西人である。
一緒に更衣室を出て、バックヤードの一角に向かう。
そこは搬入口と称した場所で、乱雑に物が溢れている周囲とは違い広い空きスペースを持っていた。搬入口自体は自動シャッターとなっており、天井から冷たい鋼色のシャッターが降りている。その傍に何かを待つようにしてぼんやり佇んでいる大地くんがいた。
「大地くん、もうそろそろ来るかいな。ちょっと開けてもろてええ?」
「ウス」
歩み寄った春子さんに大地くんは一つ頷く。傍らの壁にあるシャッター用のボタンを押した。シャッターは甲高い警告音を上げて、開演する弾幕みたくゆっくりと上がっていく。
その先の光景に、わたしは思わず目を丸くした。
てっきり夕暮れ時の外に繋がっていると思い込んでいた向こうは、完全な暗闇だった。
光もなく、音もなく、風もない。すべて黒に染まった世界。なんだかずっと見ていると吸い込まれそうで怖い。
「春子さん、ここって一体……」
「あの世やね。触れたら死ぬで」
「あの世⁉」
「七ちゃん、人は死後どないしてあの世に逝くと思う? 三途の川とか場所知ってはる?」
隣からそっとわたしの両肩に手をおいた春子さんが唐突に訊いてきた。わたしは問いの意味が分からず眉根を寄せる。
「それは……死んだら勝手にそこに行くようになっているとか? ワープみたいな感じで」
「うーん、ちょっとちゃうなぁ。もっと死の世界いうたら、都合のええもんあるやろ。死の世界の住人にして死を司るものといえば……?」
「それは――」
わたしが目を見張った先で、暗闇の中から針みたいな光が二つ生まれる。それは見る見る内に大きくなっていき、一台の大型トラックが姿を見せた。エンジン音を唸らせて、搬入口であるこちらにお尻が向くように車体の向きを変える。その際、トラックの荷台に刻まれた社名がバックヤードから差し込む光に照らされた。
『ANOYO FOODS(株)常世死神商店』
か、(株)ってなんぞぉ~?
「うちら専門屋はこの世のもんやないモンが見えとる。それはつまり、あの世のモンが見えとるっちゅうわけや。死者を誘う死神と、死者を祓う専門屋が、出会わへんはずがないわな」
唖然とするわたしに構わず、春子さんはのんびり続けた。
「まぁ、ちょーっと昔の話やねん」
***
それはむかしむかし――仏教が伝来したり安倍晴明がいたり、悪霊・怨霊はたまた妖怪が世の中を跋扈していた頃のこと。あるところで死神さんと僧侶が出会いました。
死神さんはあの世の案内人。ご臨終した人間をあの世へ導き、ガイダンスをすることがお仕事です。しかし中には、この世に未練があってあの世に行きたくないと言う死者もいます。死神さんは案内人なれど、死者を無理やりあの世へ連れて行くことはできません。地道に説得させるしか方法がなく、この世に居残る死者にはずいぶんと手を焼いておりました。
一方、僧侶は怨霊退治に行く途中でした。当時お祓いの力を持つのはもっぱら僧侶、陰陽師、巫女などといった人間たちで、依頼があれば海千山千越えて赴いていたそうです。しかし、化け物との戦いに次ぐ戦い、老いと体力、道なき道を進まなければならない過酷な環境などあって、多くのお祓い屋が疲弊していました。僧侶もその内の一人でした。
この世に居座る死者をなんとかしてあの世に連れて行きたい死神さん。この世に居座る死者をあの世に送れるけど体力がない僧侶。お互いすぐに意気投合し、協力し合うことになりました。
死神さんは、お祓い屋たちが修行の場としていた霊場に祭りを開いて、死者を集めてはと提案をしました。これならお祓い屋たちの体力も心配いらないし、死者も楽しい思いをして成仏すれば一石二鳥です。僧侶は喜んで賛同し、仲間に声をかけて霊場に集まりました。
こうして、死神さんたちがバックについて、あの世とこの世を繋ぐ境界に縁日が生まれました。今ではこの縁日も商業化。あの世では『死神株式会社』が設立し、その子会社として冥土スーパー系列が誕生しました。お祓い屋たちは仲間意識をもって『専門屋』と名を改め、今日も元気に働きます。めでたしめでたし。
***
「……つまり、この店って死神が経営しているってことですか」
「そう。そやからうちら専門屋は正社員にはなれへん。なるんやったら死ななあかんさかいね。この店で社員なんは店長と副店長だけや。つまり、店長たちは死神さん」
春子さんはウフフと笑う。まだ会ったこともない店長たちなのに、一番大事な秘密を知ってしまった気がする。
「心配せぇへんでも雇用内容は充実してんで。お給金も一人暮らしするには困らへんくらいやし、福利厚生だってバッチリや。あとここは週一で定休日もあるし。強いて言うなら人手が足らへんさかい多少残業があるのんが難点かいな」
ははぁ、と気の抜けた返事を返す。聞けば聞くほど雲を掴むような、全然現実味の沸かない話だ。まぁあの世なんて初めて見たわけだし、早々状況が飲み込めるわけがない。
不意にトラックのエンジン音が切れる。運転席のドアが開いて、ドライバーが出てきた。業者らしく水色のツナギ姿で頭にタオルを巻き、ひょっとこのお面を被っていた。
「ちわ~す。お世話になってます、ANOYOフーズですぅ」
ひょっとこ男はヘコヘコしながらこちらに歩いてきて、荷台の扉のロックを解除する。それから荷台の中に乗り込むと、荷物を昇降させるパワーゲートを降ろした。わたしは隣の春子さんに訊く。
「春子さん、あのひょっとこさんは何ですか」
「あれが死神さん」
「死神ですか」
「そう、死神。見たら分かるやろう?」
いや分からん分からん。
「死神さんは人やないさかい顔もないんよ。そやからああして面を被って顔がある体(ルビ てい)を作ってるっちゅうわけ。まぁ気味悪がらへんでも気のええ連中やで。ハロウィンシーズンは黒のマントと鎌持って本気で仮装してくるくらいやさかい、遊び心あるんよ」
遊び心っていうかシャレになってない。
荷物を積んだ六輪台車を押しながら、ひょっとこ男こと死神さんが荷台の奥から出てくる。傍らにいた大地くんが慣れた動きで搬入口と暗闇のギリギリまで歩み寄った。まさしく命を懸けた仕事なのに、境界線の際まで攻める彼はプロとしか言いようがない。
「さぁさぁ次はいよいよレジ行ってみよか、七ちゃん。本番はこれからやでぇ~」
春子さんは軽く手を叩いてわたしの背中を押す。――が、不意に押されたものだから、わたしは思わずつんのめった。ぐらついた一寸先は、正真正銘の闇……!
「わ、わ、わ……!」
わたしはギュッと目を瞑って身を固くする。けれどもあの世にダイブしそうになった体は搬入口との境目で、まるでトランポリンのように弾き返された。綺麗な弧を描いて、わたしは咄嗟に手を伸ばした大地くんに抱き留められる。
その瞬間、またしても妙なこそばゆさが背中に走った。
「うわひゃっ⁉」
「七ちゃん⁉」
慌てて春子さんが駆け寄ってくる。大地くんがパッと手を離すと、こそばゆさは嘘みたいになくなった。
「堪忍! 怖い思いさせてもうたなぁ~。一応搬入口には結界張ってあるさかい生者はあの世には干渉できひんねん。そやけどホンマ堪忍な!」
「や、すみません、わたしも……大丈夫です」
手を合わせて謝る春子さんに、わたしはハハ、と乾いた笑いを零す。結界があるなら先に言ってほしかった……。寿命が縮んだ。
「あ、柏木さんもすみませんっ。なんか変な声出しちゃって。支えてくれてありがとうございます!」
急いで隣にいる大地くんに頭を下げる。大地くんはとくに動揺した様子もなく、相変わらずぼんやりした顔で「ウス」と短く答えただけだった。たぶん受け止めたついでに声が出たんだと思っている。誰も今のことは気づいていないようだ。
それにしても何かおかしい。橘さんといい今といい、なんか背中がこそばゆくなる時がある。いや、今のは結界に跳ね返された衝撃で偶然そういう感覚になったのかもしれない。わざわざ騒ぎ立てるほどでもないし……やっぱり気のせいなのかな。
「まぁとりあえず、気ぃ取り直して次行こか。レジはちゃんと安全やさかい」
「あ、はい」
もう一度手を叩いて仕切り直した春子さんに頷いて、わたしも気分を切り替える。こちらに軽く手を上げる大地くんに一礼してから店内に向かった。
バックヤードと店内を隔てるスイングドアを抜けると、一気に視界が明るくなる。開店したての店のわりにはお客の姿が数えるほどしかいなかった。皆それぞれ歳相応の格好をして、陳列棚に並ぶ商品と睨めっこしている。よく見たら半透明でもなく、足もついていた。実体がある。
春子さんにそれを訊いてみると、それはここが境界だからと教えてくれた。境界はあの世とこの世が混ざっている世界なので、現世では姿が見えない霊もここでは実体化するらしい。ちなみに、お客さんは会計をどうしているかというと、六文銭を現金に換金して使っている。換金額には限りがあるから、みんな節約してこの閑散ぶりだという。
「そういえば……ここに来るお客さんって何を買うんですか? ていうかここって何を売っているんですか?」
「まぁ生鮮食品はあらへんねぇ、ここは。肉も魚も野菜も惣菜も調味料も置いてへん。あるんは酒とお菓子と、パンとかアイスやね。さすがに幽霊に生もの売ってもしゃぁないさかい、買ってすぐ食べられるモンを揃えてるで。あと意外と人気なんは雑貨やろか」
春子さんは突き当たりの角を曲がる。パン・和菓子コーナーの隣は、雑貨コーナーがあった。アクセサリーブースの前を通りがかると、小さな宝石箱みたいな小物や装飾品が並んでいる。どれもよく手が込んでいた。
「これって……誰が作ってるんですか」
「死神さんやね。雑貨は全般、死神さん」
「全部ですか」
「そう。ハンドメイドや。冥土だけに」
言わんでいいのに。
レジ前に出る。三台あるレジは一番右端にあたる『3』のレーンランプが灯っており、ゆかりちゃんが会計作業をしていた。「めやぐだじゃっ」と言って赤べこ並みにお辞儀を繰り返す。何を言っているのかは分からないけど、一応接客には問題ないらしい。
春子さんは顔を上げたゆかりちゃんに軽く手を振って、わたしと一緒に『2』のレジに入った。
「七ちゃんはコンビニとかスーパーでレジ打ちしたことはある? アルバイトの経験は?」
「いえ、ないです。これが初めてのバイトです」
「それやったら教え甲斐があってええわぁ。とりあえず、コレつけようか」
春子さんはポケットから『研修中』と文字が入った黄色の腕章を取り出す。これが取れたら一人前らしい。わたしは今さらながらおずおずと訊いた。
「あの……わたし霊感があるだけで祓う力とかないんですけど、いいんですか? ここで本当に働いても」
「もちろん! 霊感あるだけで大歓迎に決まってるやないの。祓う力がなくとも、七ちゃんに手ぇ出すお客さんはうちが片っ端からぶっ飛ばすさかい。拳で」
「物理攻撃なんですか……」
「暴力は一番の厄払いやで」
この人ホントにお祓い屋さんかなぁ。
とりあえず一通り春子さんからレジの所作と機械の扱いを教わってから実践に移る。
レジ前の通路に対して斜め四十五度の向きで立ち、お腹の前で両手を重ねて立っていると、ほどなくして一人のサラリーマンがレジに来た。くたびれたスーツを着て、なんだか少しナヨっとした人だった。
「い、いらっしゃいませ!」
「これ……お願いします」
力みながら挨拶したわたしに、サラリーマンさんは牛乳に浸されたパンみたいにフニャリと笑い、持っていたカゴをカウンターに置く。わたしもそのカゴに手を伸ばすと、ちょうどサラリーマンさんの手にほんの少しだけ当たった。
その瞬間、またしてもというか、今回は強烈なこそばゆさが背中に走った。
「わわわわわっ⁉」
「七ちゃん、どないしたん⁉」
いきなりその場でタコ踊りを始めたわたしに仰天して春子さんが声を上げる。サラリーマンさんもギョッとして後ずさった。ていうか、ちょっと、こそばゆい……!
「わわわわわっ、背中! 背中何かいませんか⁉ 背中かがなんか、おかしいんス……!」
わたしは春子さんに背中を向けて必死に指をさす。なんというか、小人に背中を撫で回されているような、くすぐったいというより気色悪い感覚だ。しかも今回は長い。
「七ちゃん、ちょっとそのまま!」
春子さんは鋭く言い放つ。肩越しに胸の前で剣印を作ったのが見えた。
「六根清浄、急々如律令!」
言い終わらないうちに思いっきりわたしの背中を叩く。バチコン! と派手な音が店内に響いたと思ったら、わたしの視界の端から何か黒いものが飛び出した。
「なんか出た!」
わたしは咄嗟に黒いものを目で追う。空中に出た黒いものは一瞬停止ボタンでも押したかのようにピタッと止まると再びこちらに返ってくる。わたし目がけて真っ直ぐに飛んできて――わたしの脇を通過し、背後に飛び込んだ。急いで後ろを振り返る。
そこには、空き缶くらいの背丈をした小さいおじさんが、春子さんの膨らみのある胸に大の字になってしがみついていた。
「すみません、橘さんから名札をもらっていました」
春子さんと合流して、更衣室へ案内してもらう。更衣室は事務所の隣にあった。入ってみると、壁際に縦長のロッカーが六つ並んでいた。奥の方は段ボール箱や大小の荷物が積まれて物置状態になっている。
「七ちゃんのロッカーは奥から三番目やで。ちょっと待ってな、今制服出すさかい」
春子さんは奥に歩いていき、積み上げられた段ボール箱から一つを手前に引き出す。中を開けると、ビニールの包装がされたグリーンジャケットがぎっしり入っていた。サイズを確認してもらい、一着を渡される。着てきたコートを脱いで、さっそくビニールの包装を取る。
グリーンジャケットに袖を通すと、それまで遠くにあった緊張が一気に押し寄せてきた。
ジャケットはノリがきいていて色が強い。色あせている春子さんのものと比べると、その違いは一目瞭然だ。いかに春子さんが長くここで働いてきたかが分かる。
更衣室の片隅におかれた姿見の前に立ち、橘さんからもらった名札を胸元につけて、改めて自分の姿を見た。黒のパンツにグリーンジャケットを着たわたしは、どこか別人に思える。
学校でもなく、家でもなく、まったく新しい場所へ踏み込んだ新しい自分。まだ汚れ一つない真っさらな制服はわたしの心そのものだ。これを、わたしはこれからどんどん汚していくんだろう。
そう思うと、自然と背筋が真っ直ぐ伸びた。
「うん、よう似合おうてるでぇ七ちゃん。制服は一応エプロンもあるさかいな。夏はエプロンにすんのもアリやで。まぁいうても、この境界は季節がないさかい夏も涼しいんやけどね」
姿見の傍らで春子さんが満足そうに頷く。わたしはちょっと気になって春子さんを見た。
「あの……春子さんってここの正社員になるんですか? いつからここに……?」
「うちはパートやで、パート。ここにはそれなりに長うおるでぇ。新太くんが入るより前におるさかいね。ちなみに新太くんは契約社員。うちら専門屋はここの従業員なれど、正社員にはなれへんのや。絶対」
「……専門屋のスーパーなのにですか?」
「まぁ話すより、実際見てもろた方が早いやろうねぇ」
春子さんは相変わらず温和に微笑んで答えをはぐらかす。
つと、そこで天井のスピーカーから軽快なチャイムが鳴った。続けて女性の声でアナウンスが流れる。
『おはようございます! いらっしゃいませ! 本日もご来店下さいまして、誠にありがとうございます! 当店、ただいまより開店です!』
「あら、開店やね。ほな行こか」
「そういえば……橘さんから聞いたんですけど、この境界って時間という概念がないんですよね。ここの時間はどうなっているんですか……?」
「ん? 普通に現世の時計を持ってきてんで? ほら宇宙も昼とか夜とか分からへんさかい地上の時間を使うてるいうし、それと同じやね」
ああ、なるほど……。そう思えば分かりやすい。
「時間って今まで気にしたこともなかったですけど、なかったらやっぱり大変ですね」
「そやでぇ七ちゃん。時間がなかったら困るんやさかい、時給が」
春子さんはウフフと笑いながら、親指と人さし指をくっつけお金を示すジェスチャーをする。関西人である。
一緒に更衣室を出て、バックヤードの一角に向かう。
そこは搬入口と称した場所で、乱雑に物が溢れている周囲とは違い広い空きスペースを持っていた。搬入口自体は自動シャッターとなっており、天井から冷たい鋼色のシャッターが降りている。その傍に何かを待つようにしてぼんやり佇んでいる大地くんがいた。
「大地くん、もうそろそろ来るかいな。ちょっと開けてもろてええ?」
「ウス」
歩み寄った春子さんに大地くんは一つ頷く。傍らの壁にあるシャッター用のボタンを押した。シャッターは甲高い警告音を上げて、開演する弾幕みたくゆっくりと上がっていく。
その先の光景に、わたしは思わず目を丸くした。
てっきり夕暮れ時の外に繋がっていると思い込んでいた向こうは、完全な暗闇だった。
光もなく、音もなく、風もない。すべて黒に染まった世界。なんだかずっと見ていると吸い込まれそうで怖い。
「春子さん、ここって一体……」
「あの世やね。触れたら死ぬで」
「あの世⁉」
「七ちゃん、人は死後どないしてあの世に逝くと思う? 三途の川とか場所知ってはる?」
隣からそっとわたしの両肩に手をおいた春子さんが唐突に訊いてきた。わたしは問いの意味が分からず眉根を寄せる。
「それは……死んだら勝手にそこに行くようになっているとか? ワープみたいな感じで」
「うーん、ちょっとちゃうなぁ。もっと死の世界いうたら、都合のええもんあるやろ。死の世界の住人にして死を司るものといえば……?」
「それは――」
わたしが目を見張った先で、暗闇の中から針みたいな光が二つ生まれる。それは見る見る内に大きくなっていき、一台の大型トラックが姿を見せた。エンジン音を唸らせて、搬入口であるこちらにお尻が向くように車体の向きを変える。その際、トラックの荷台に刻まれた社名がバックヤードから差し込む光に照らされた。
『ANOYO FOODS(株)常世死神商店』
か、(株)ってなんぞぉ~?
「うちら専門屋はこの世のもんやないモンが見えとる。それはつまり、あの世のモンが見えとるっちゅうわけや。死者を誘う死神と、死者を祓う専門屋が、出会わへんはずがないわな」
唖然とするわたしに構わず、春子さんはのんびり続けた。
「まぁ、ちょーっと昔の話やねん」
***
それはむかしむかし――仏教が伝来したり安倍晴明がいたり、悪霊・怨霊はたまた妖怪が世の中を跋扈していた頃のこと。あるところで死神さんと僧侶が出会いました。
死神さんはあの世の案内人。ご臨終した人間をあの世へ導き、ガイダンスをすることがお仕事です。しかし中には、この世に未練があってあの世に行きたくないと言う死者もいます。死神さんは案内人なれど、死者を無理やりあの世へ連れて行くことはできません。地道に説得させるしか方法がなく、この世に居残る死者にはずいぶんと手を焼いておりました。
一方、僧侶は怨霊退治に行く途中でした。当時お祓いの力を持つのはもっぱら僧侶、陰陽師、巫女などといった人間たちで、依頼があれば海千山千越えて赴いていたそうです。しかし、化け物との戦いに次ぐ戦い、老いと体力、道なき道を進まなければならない過酷な環境などあって、多くのお祓い屋が疲弊していました。僧侶もその内の一人でした。
この世に居座る死者をなんとかしてあの世に連れて行きたい死神さん。この世に居座る死者をあの世に送れるけど体力がない僧侶。お互いすぐに意気投合し、協力し合うことになりました。
死神さんは、お祓い屋たちが修行の場としていた霊場に祭りを開いて、死者を集めてはと提案をしました。これならお祓い屋たちの体力も心配いらないし、死者も楽しい思いをして成仏すれば一石二鳥です。僧侶は喜んで賛同し、仲間に声をかけて霊場に集まりました。
こうして、死神さんたちがバックについて、あの世とこの世を繋ぐ境界に縁日が生まれました。今ではこの縁日も商業化。あの世では『死神株式会社』が設立し、その子会社として冥土スーパー系列が誕生しました。お祓い屋たちは仲間意識をもって『専門屋』と名を改め、今日も元気に働きます。めでたしめでたし。
***
「……つまり、この店って死神が経営しているってことですか」
「そう。そやからうちら専門屋は正社員にはなれへん。なるんやったら死ななあかんさかいね。この店で社員なんは店長と副店長だけや。つまり、店長たちは死神さん」
春子さんはウフフと笑う。まだ会ったこともない店長たちなのに、一番大事な秘密を知ってしまった気がする。
「心配せぇへんでも雇用内容は充実してんで。お給金も一人暮らしするには困らへんくらいやし、福利厚生だってバッチリや。あとここは週一で定休日もあるし。強いて言うなら人手が足らへんさかい多少残業があるのんが難点かいな」
ははぁ、と気の抜けた返事を返す。聞けば聞くほど雲を掴むような、全然現実味の沸かない話だ。まぁあの世なんて初めて見たわけだし、早々状況が飲み込めるわけがない。
不意にトラックのエンジン音が切れる。運転席のドアが開いて、ドライバーが出てきた。業者らしく水色のツナギ姿で頭にタオルを巻き、ひょっとこのお面を被っていた。
「ちわ~す。お世話になってます、ANOYOフーズですぅ」
ひょっとこ男はヘコヘコしながらこちらに歩いてきて、荷台の扉のロックを解除する。それから荷台の中に乗り込むと、荷物を昇降させるパワーゲートを降ろした。わたしは隣の春子さんに訊く。
「春子さん、あのひょっとこさんは何ですか」
「あれが死神さん」
「死神ですか」
「そう、死神。見たら分かるやろう?」
いや分からん分からん。
「死神さんは人やないさかい顔もないんよ。そやからああして面を被って顔がある体(ルビ てい)を作ってるっちゅうわけ。まぁ気味悪がらへんでも気のええ連中やで。ハロウィンシーズンは黒のマントと鎌持って本気で仮装してくるくらいやさかい、遊び心あるんよ」
遊び心っていうかシャレになってない。
荷物を積んだ六輪台車を押しながら、ひょっとこ男こと死神さんが荷台の奥から出てくる。傍らにいた大地くんが慣れた動きで搬入口と暗闇のギリギリまで歩み寄った。まさしく命を懸けた仕事なのに、境界線の際まで攻める彼はプロとしか言いようがない。
「さぁさぁ次はいよいよレジ行ってみよか、七ちゃん。本番はこれからやでぇ~」
春子さんは軽く手を叩いてわたしの背中を押す。――が、不意に押されたものだから、わたしは思わずつんのめった。ぐらついた一寸先は、正真正銘の闇……!
「わ、わ、わ……!」
わたしはギュッと目を瞑って身を固くする。けれどもあの世にダイブしそうになった体は搬入口との境目で、まるでトランポリンのように弾き返された。綺麗な弧を描いて、わたしは咄嗟に手を伸ばした大地くんに抱き留められる。
その瞬間、またしても妙なこそばゆさが背中に走った。
「うわひゃっ⁉」
「七ちゃん⁉」
慌てて春子さんが駆け寄ってくる。大地くんがパッと手を離すと、こそばゆさは嘘みたいになくなった。
「堪忍! 怖い思いさせてもうたなぁ~。一応搬入口には結界張ってあるさかい生者はあの世には干渉できひんねん。そやけどホンマ堪忍な!」
「や、すみません、わたしも……大丈夫です」
手を合わせて謝る春子さんに、わたしはハハ、と乾いた笑いを零す。結界があるなら先に言ってほしかった……。寿命が縮んだ。
「あ、柏木さんもすみませんっ。なんか変な声出しちゃって。支えてくれてありがとうございます!」
急いで隣にいる大地くんに頭を下げる。大地くんはとくに動揺した様子もなく、相変わらずぼんやりした顔で「ウス」と短く答えただけだった。たぶん受け止めたついでに声が出たんだと思っている。誰も今のことは気づいていないようだ。
それにしても何かおかしい。橘さんといい今といい、なんか背中がこそばゆくなる時がある。いや、今のは結界に跳ね返された衝撃で偶然そういう感覚になったのかもしれない。わざわざ騒ぎ立てるほどでもないし……やっぱり気のせいなのかな。
「まぁとりあえず、気ぃ取り直して次行こか。レジはちゃんと安全やさかい」
「あ、はい」
もう一度手を叩いて仕切り直した春子さんに頷いて、わたしも気分を切り替える。こちらに軽く手を上げる大地くんに一礼してから店内に向かった。
バックヤードと店内を隔てるスイングドアを抜けると、一気に視界が明るくなる。開店したての店のわりにはお客の姿が数えるほどしかいなかった。皆それぞれ歳相応の格好をして、陳列棚に並ぶ商品と睨めっこしている。よく見たら半透明でもなく、足もついていた。実体がある。
春子さんにそれを訊いてみると、それはここが境界だからと教えてくれた。境界はあの世とこの世が混ざっている世界なので、現世では姿が見えない霊もここでは実体化するらしい。ちなみに、お客さんは会計をどうしているかというと、六文銭を現金に換金して使っている。換金額には限りがあるから、みんな節約してこの閑散ぶりだという。
「そういえば……ここに来るお客さんって何を買うんですか? ていうかここって何を売っているんですか?」
「まぁ生鮮食品はあらへんねぇ、ここは。肉も魚も野菜も惣菜も調味料も置いてへん。あるんは酒とお菓子と、パンとかアイスやね。さすがに幽霊に生もの売ってもしゃぁないさかい、買ってすぐ食べられるモンを揃えてるで。あと意外と人気なんは雑貨やろか」
春子さんは突き当たりの角を曲がる。パン・和菓子コーナーの隣は、雑貨コーナーがあった。アクセサリーブースの前を通りがかると、小さな宝石箱みたいな小物や装飾品が並んでいる。どれもよく手が込んでいた。
「これって……誰が作ってるんですか」
「死神さんやね。雑貨は全般、死神さん」
「全部ですか」
「そう。ハンドメイドや。冥土だけに」
言わんでいいのに。
レジ前に出る。三台あるレジは一番右端にあたる『3』のレーンランプが灯っており、ゆかりちゃんが会計作業をしていた。「めやぐだじゃっ」と言って赤べこ並みにお辞儀を繰り返す。何を言っているのかは分からないけど、一応接客には問題ないらしい。
春子さんは顔を上げたゆかりちゃんに軽く手を振って、わたしと一緒に『2』のレジに入った。
「七ちゃんはコンビニとかスーパーでレジ打ちしたことはある? アルバイトの経験は?」
「いえ、ないです。これが初めてのバイトです」
「それやったら教え甲斐があってええわぁ。とりあえず、コレつけようか」
春子さんはポケットから『研修中』と文字が入った黄色の腕章を取り出す。これが取れたら一人前らしい。わたしは今さらながらおずおずと訊いた。
「あの……わたし霊感があるだけで祓う力とかないんですけど、いいんですか? ここで本当に働いても」
「もちろん! 霊感あるだけで大歓迎に決まってるやないの。祓う力がなくとも、七ちゃんに手ぇ出すお客さんはうちが片っ端からぶっ飛ばすさかい。拳で」
「物理攻撃なんですか……」
「暴力は一番の厄払いやで」
この人ホントにお祓い屋さんかなぁ。
とりあえず一通り春子さんからレジの所作と機械の扱いを教わってから実践に移る。
レジ前の通路に対して斜め四十五度の向きで立ち、お腹の前で両手を重ねて立っていると、ほどなくして一人のサラリーマンがレジに来た。くたびれたスーツを着て、なんだか少しナヨっとした人だった。
「い、いらっしゃいませ!」
「これ……お願いします」
力みながら挨拶したわたしに、サラリーマンさんは牛乳に浸されたパンみたいにフニャリと笑い、持っていたカゴをカウンターに置く。わたしもそのカゴに手を伸ばすと、ちょうどサラリーマンさんの手にほんの少しだけ当たった。
その瞬間、またしてもというか、今回は強烈なこそばゆさが背中に走った。
「わわわわわっ⁉」
「七ちゃん、どないしたん⁉」
いきなりその場でタコ踊りを始めたわたしに仰天して春子さんが声を上げる。サラリーマンさんもギョッとして後ずさった。ていうか、ちょっと、こそばゆい……!
「わわわわわっ、背中! 背中何かいませんか⁉ 背中かがなんか、おかしいんス……!」
わたしは春子さんに背中を向けて必死に指をさす。なんというか、小人に背中を撫で回されているような、くすぐったいというより気色悪い感覚だ。しかも今回は長い。
「七ちゃん、ちょっとそのまま!」
春子さんは鋭く言い放つ。肩越しに胸の前で剣印を作ったのが見えた。
「六根清浄、急々如律令!」
言い終わらないうちに思いっきりわたしの背中を叩く。バチコン! と派手な音が店内に響いたと思ったら、わたしの視界の端から何か黒いものが飛び出した。
「なんか出た!」
わたしは咄嗟に黒いものを目で追う。空中に出た黒いものは一瞬停止ボタンでも押したかのようにピタッと止まると再びこちらに返ってくる。わたし目がけて真っ直ぐに飛んできて――わたしの脇を通過し、背後に飛び込んだ。急いで後ろを振り返る。
そこには、空き缶くらいの背丈をした小さいおじさんが、春子さんの膨らみのある胸に大の字になってしがみついていた。
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