俺様ボスと私の恋物語 海外編

福山ともゑ

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(18)母にカミングアウト

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 「買い出しからしないといけないね」
お母ちゃんの言葉で、我に返った。
 「ランチは外で食べるか。トモはどうするの?」
…それは、どういう意味なのかな?

家というか屋敷に入り部屋を眺めていた私は、あることに気が付いた。
キッチンが広い。
福岡の家のキッチンよりも広いのだ。

私は思わず聞いていた。
 「ねえ、お母ちゃん」
 「なに?」
 「ここキッチン広いね」
 「日本ではないからね」
まあ、それもそうだが…。

 「ランチは外で、外食しようよ。荷物持ちになるからさ、色々と買わないと、ね。」

そして、もう一つ聞いてみた。
さっきから気になってたことだ。
 「温室だよね、あれは」
行ってみる?と聞かれ、即答した。
行ってみたい、と。
そして、行ってみると広い。
しかも、日本では見慣れた物が溢れるように栽培されていた。

人参、ほうれん草、イチゴ、あれは…トウモロコシ?
もう食べれるよって言ってくれたので、温室の脇の水道で手を洗い、トウモロコシを齧る。
んっ…。
美味いし、甘い。

この温室は、両隣の2軒の人達と共同で栽培してるものらしい。
それで、室温を一定に保ち、一年を通して食べれる食材を作ってるとのこと。
お母ちゃんを見てると、トウモロコシを4本ほど採ってる。
 (ん、4本とも食べる気か?)と思っていたら、「潰して粉にするの」と教えてくれた。
粉にしてどうするんだろう?
その疑問はすぐに解けた。
キッチンに入ると、トウモロコシの身だけをコソゲ落とし、それをミキサーにかけていく。
粒状にしたトウモロコシは、何度も篩いに掛けられサラサラになっていく。
そのサラサラ状態に計量カップで図った水分を含むと、まるで魔法にかかったように昔に戻った感じを受けた。
そうだ、お母ちゃんがよく焼いてくれてた、お焼だ。
でも、なんか違う。

水分を含んでゼリー状になったソレを大きめなボールに入れてる。
そこにバターを加えては混ぜていく。
分かった。
パンだ。
しかも、トウモロコシだから砂糖は入れなくてもOKだし、バターには塩も含まれてる。
さすが想像力の母だ。
昔と変わってない。

そのうち、「うしっ!」と声が聞こえた。
その捏ねた生地をラップで包みボールに入れ、タオルでボールを包む。
 「今は冬だからね、こうやって温めておくの」と言いながら、明日の朝食の分だからね。と釘を刺された。
そうだね、発酵させないとね。


ランチと買い物から帰ってくると、温室に向かった。
その日は、ぐっすりと眠れた。

お母ちゃんは、本当に寛いでいる。
あまり敷地から出ることもなく、心配していた危険もない。
私は観光気分を味わい、市街地に行っては色々と見ていた。

この数日間、穏やかにパースで平穏を味わっていた。
ある日、いきなり聞かれた。
 「友明、その左目はどうしたの?」
え、左?
何の前触れもなく振られて、何も言えなかった。
すると、お母ちゃんは続けてくる。
 「なんか変だなと思っていたのよ。左方向を向くのに、不自然な形で向いたりするし…。
黒目が動いてない。」
黙っていたら、もっと続けてくれる。
 「だから言ったのよ。来なくて良いと」
そんな時から分かってたんだ…。
 「ほんとに、お母ちゃんには叶わないな…」と呟くと、話は長くなるよと切り出してから話し出した。

シンガポールで起こった銃撃戦の事から、こっちの事を。
 
黙って聞いていたお母ちゃんは、静かに口を開いてきた。
たった一言だった。
 「トモ。貴方は知ってるでしょ。私の左目がどんな状態なのかを。」

誰にも気づかれることはないようにしようと振舞っていた私は、その言葉で気が付いた。
 (お母ちゃんは、だからこそ気が付いたのか…)と。

私は知らなかった。
その夜、お母ちゃんが泣いてた事を。


そして、もう1軒貸してるという家。
入り口が違うので、私は全然と言っていいほど気が付いてなかったのだ。


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