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14.俺の目標
しおりを挟むヴァンケズが作ってくれた網にキノコを並べて焼くと、一気に美味しそうな匂いが広がる。
さっきの枝をフォーク代わりに突き刺して食べる俺の隣で、ヴァンケズも楽しそうだ。
だけど、俺はさっきからキノコ食べてるけど、隣のヴァンケズは焚き火が消えないように枝をくべるばかりで、キノコに手を伸ばそうとしない。こいつだって、お腹が空いてるはずなのに。
「お前も食えよ!!」
ちょうどよく焼けたキノコを差し出してみても、ヴァンケズは首を横に振る。
「俺はいい。リューオ、食べて」
「なんでだよ!! お前も食うんだよ!!」
「でも……」
「いいから食え!!」
半ば無理矢理渡すと、ヴァンケズはやっと受け取ってくれた。それでもまだ口をつけない。なんだか悩んでいるみたいだ。
「……本当に、いいの……? リューオだって、お腹空いてるんじゃ……」
「俺が取ったキノコだぞ。お前も食べろ! そのために二人分とったんだぞ!」
「……うん……」
それでもそいつは少し悩んで、やっとキノコを食べてくれた。
「……おいしい」
「だろ? 俺はこれが気に入った!!」
「うん……俺も……こんなの、食べたことない……」
「だったらもっとたくさん焼いてやる」
そいつがキノコを頬張ると、なんだか嬉しくて、俺は網の上にもっとキノコを乗せようとした。
けれどヴァンケズは、俺の手を握って止めてしまう。
「危ない。俺がするよ」
「これくらい、危なくもなんともねーよ……」
「リューオは人族なんだし、気をつけたほうがいい。さっきも、魔物の前に平然と出ていくし……」
「いいんだよ。俺は。魔物にも勝つから。それよりお前こそ、ちゃんと魔力回復しろよ!!」
「うん……」
頷いてヴァンケズは、集めた草を、持っていた瓶に詰め始めた。
「魔力も少し回復したし、これでさらに効率よく魔力を回復させる薬を作れそうだ。そしたら、リューオに魔法、使わせてあげる」
「は? あ、あの話なら、そんなに焦らなくていい」
「焦ってなんかない……リューオにお礼がしたいだけ。ねえ、リューオ……」
「なんだよ?」
「……俺の目標にしていい? リューオにいつか、魔法使ってもらうこと」
「……そんなのが目標でいいのか? 他にあるだろ……」
「いいんだよ。俺が一番やりたいことだから」
「……ふうん……俺は魔法が使えるようになるなら嬉しいけどな! じゃあ、俺はお前の封印解くのを目標にする」
「え……」
「俺の魔法のためだ! いつか魔法使えるようになったら、金とか出せるか!?」
「……そ、それは無理かな……そんな魔法はないよ」
「そうか……やっぱり金は稼がないとダメか……じゃあ稼ぐぞ! 金!! どうやったら金を稼げる!?」
「ここでできそうなことは……素材を集めてみることかな」
「素材?」
「リューオが持ってるそれとか」
ヴァンケズは、俺が持っている枝を指差した。
「これが……素材?」
「武器や防具、魔法の道具を作る材料になるんだ。日用品に使われているものもある。それはありふれたものだから、そんなにお金にはならないけど、物によっては高価なものもある。希少だったり、多くあっても入手がひどく難しいものには値がつく。もちろん、品質も大事だけど……」
「……他にどんなものがあるんだ!? 金になりそうなもん!!」
「さっきの回復の薬草とか……」
「あれはお前の回復に使うんだ」
「……回復に使えるものは高く売れるよ?」
「だめだ!! お前には、いつか魔法使えるようにしてもらうんだからな!!」
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