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22.今は
しおりを挟む知らないというのは嘘で、グラウワウル殿下が鍵の魔法をかけたことは明らか。
それなら、どこかに鍵があるはず。それがないと、誰にもここを開くことができなくなってしまう。
クウォリアス様は、キャラルイトル様の胸ぐらを掴んで言った。
「……鍵を持っているな……?」
「そんな……なんのことでしょう……私は……知りません……」
「お前しかいないだろう……鍵を出せ」
「それは困ります……鍵なんてないんです!」
「嘘が下手だな。鍵を出せ」
「クウォリアス様……しかし…………その……」
「出せないのなら仕方がない。ここで少し、痛い目にあってもらおうか?」
「そんな……私どもは何も知りませんっ……! 鍵も……ないんじゃないかな……なんて……」
「……それで隠しているつもりか…………これで最後だ。鍵を出せ……」
「…………クウォリアス様……落ち着きましょう……何を聞かれても、私にも、できることと、できないことがあるのです」
「そうか……」
クウォリアス様の顔が怒気で埋め尽くされる。その感情とともに、彼の足元から、絡みつくように炎が湧いてくる。炎の魔法……それも、拷問の時に使われる魔法だ。
「クウォリアス様っ……! おやめください!!」
私が叫んでも、クウォリアス様はまるで聞いていない。見たことがないような顔をして、キャラルイトル様の襟元を離そうとしない。よほど頭に血が昇っているようだ。
気持ちはわかる。
馬車の中で寝ていた人は、ひどい怪我だった。包帯を巻いて、ピクリとも動かない上に、毒で顔色も悪い。おそらく、回復の魔法だけでは長くもたない。
魔物からこの地を必死に守ったのは彼らなのに、回復の魔法の薬一つも渡さずに追い返そうとされて、ひどい怒りの感情も湧くだろう。
けれど、ここで彼らを拷問したからと言って、事態は解決しない。王家に口止めされたことを、王家に仕える魔法使いが話すことはできない。そんなことをすれば、ひどい罰を受ける。自分だけではない。その一族にまで影響が及ぶかもしれないのだ。
それに、例えば彼らを痛めつけて仮に話したとしても、そんな真似をすれば、クウォリアス様たちの方が逆賊になる。
キャラルイトル様たちに話させるわけにはいかない。けれど、このままクウォリアス様を放って置くわけにも行かない。
ここは、ここが勝手知ったる砦の中であることを利用させてもらいましょうか。
私は、風の魔法を纏い、キャラルイトル様の胸ぐらを掴むクウォリアス様の手を弾き飛ばした。
クウォリアス様の手からは逃れたキャラルイトル様は、悲鳴をあげて、他の魔法使いたちの元へ逃げて行く。
代わりに、クウォリアス様の恐ろしい目が私に向けられた。
「…………どういうつもりだ? フィリレデリファ……」
「……クウォリアス様…………」
怒りと殺意に支配された目……その視線で、人の首も切り裂けそう。
鳥肌が立つ。
けれど、今はその気迫に負けるわけにはいかない。
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