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24.嬉しいです!
しおりを挟む扉が閉まるやいなや、キートティーグ様が私を怒鳴りつける。
「お前……フィリレデリファっ……!! よくもっ…………僕らを騙すつもりだったんだな……王族はいつもこうだ! 僕らを騙していいように使って、必要なくなったら見捨ててっ……! こいつらのせいでっ…………僕らの仲間はっ……!!」
キートティーグ様の怒りは、ついに魔法の鞭に姿を変えて、私に襲いかかってくる。
私は鍵を手に入れていないのだから、怒るのも当然だ。しかし、手がないわけではない。扉を開くためにも、こんなところで打たれている場合ではない。
腕を魔法で強化して、鞭を迎え打つ用意をする。
けれどキートティーグ様の鞭は、私に届く前に激しい音を立ててちぎれて飛んでいく。クウォリアス様の魔法が、キートティーグ様の魔法を防いだのだ。
「クウォリアス様っ……!? 何をなさるのです!?」
驚いたのは私だけではない。魔法を防がれたキートティーグ様もだ。
「クウォリアスっ…………お前っっ……!!」
ついに怒り心頭に発したらしい。彼はクウォリアス様に短剣を握って飛びかかる。
けれど、冷静を失ったその一撃は、あっさりクウォリアス様に止められてしまう。
キートティーグ様の腕を握って止めたクウォリアス様は、彼に静かな口調で言った。
「落ち着け。キートティーグ」
「落ち着け……? 扉は開かず、仲間の回復はできないのに? お前は仲間を見捨ててこの女につくの…………? そんな奴なら、もうここで殺すっ……!」
「俺を殺せば、扉は開かないぞ」
「開く気もないくせに、何をっ……!」
喚くキートティーグ様の手を離し、クウォリアス様は私に振り向いた。
「なんの策もないわけではなさそうだな」
「ええ……冷静になっていただけて、嬉しいですわ」
答えて私は、手を握り魔法を使った。すると、手から溢れた魔力は形を作って、かなり出来の悪い鍵になる。
「私の魔力だけでは、これが限界です……」
私が握る鍵を見下ろしたクウォリアス様は、首を傾げた。
「……先ほどの鍵を模して作ったものか?」
「ええ……一度は鍵に触れましたから」
「一度鍵に触れただけで、ダミーを作れるのか?」
「……嫌味ですか? クウォリアス様。これはダミーとも呼べない代物です。ですが、少なくとも、鍵穴に入れることはできるはずです」
「そうか…………」
鍵を持つ私の手を見下ろしていたかと思えば、クウォリアス様は、自らの手をそっと近づけてくる。
咄嗟にその手を引っ叩いた。
「何をするのですっ!!??」
「鍵に触れようとしただけだ。俺もあの時、鍵を見ている」
「……それがなんだと…………」
言いかけて、握った鍵を見上げる。するとそれは、さっきよりもずっと、本物に近い形に変わっていた。
「これは…………」
見ただけで、これだけのものが再現できるなんて……恐ろしい魔力だ。
「……クウォリアス様…………」
「どうした?」
「……これが終わったら……どうかまた、お手合わせ願います……あの街で剣を向いた時のように……」
「令嬢にしては、好戦的じゃないか……構わないぞ」
「ありがとうございます!!」
「…………これまでで一番嬉しそうだな」
「当たり前ですわ! あなたに冷静さを取り戻していただいた甲斐がありました!!」
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