隣の猫

JUN

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牛丼

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 涼子と礼人は付き合っている。というか、最近婚約した。
 そして、食事に関しては基本的に礼人の管轄だ。礼人が食事を大切に捉えているという事も大きいが、涼子の料理が壊滅的な事も同じくらい大きい。
 今日も礼人がエプロンをしてキッチンに立ち、涼子はテーブルに座って、事件の事を話していた。
「死因は絞殺で、首を幅3センチ程度の帯状の布で締めた事によるもの。死亡推定時刻は、昨日の22時から1時」
 礼人はそれを聞きながら鍋の火を止め、丼にご飯をよそいながら言った。
「その時間帯なら、あの辺りは人通りが途絶えて、目撃者はいそうにないな」
「じゃあ、胃の内容物からして、死ぬ1時間前くらいに食べたと思うけど。レストランとかに、行ってない?」「成程。メニューがわかれば、扱っていそうな店を回れるな。
 で、内容物は何だったんだ?」
 鍋の中身を、ご飯にかける。
「牛肉、玉ねぎ、米、卵、しょうが、豆腐、ねぎ、わかめだけど。何かしら」
 涼子が首を傾けながら言う声を聞きながら、礼人は丼を見下ろした。
「……牛丼と味噌汁だな」
 今日の夕飯は、牛丼だった。
 まあ、解剖医も刑事も、それで食べられなくなるような細い神経など持っていない。
「牛丼。美味しそう」
「味噌汁は豆腐とわかめとねぎじゃなく、玉ねぎとわかめだけどな。
 さあ、食うか」
 丼と味噌汁のお椀をテーブルに置き、椅子に座って、2人で手を合わせる。
「いただきます」
「んん、美味しい」
「しょうがは多目がいいよな」
 ぱくぱくと食べる。
「牛丼屋か。明日から早速回るか」
「ん。
 それから、口の中の桜の花びらは現場にあった木のもので、死後に詰め込まれていたらしい。
 あと、両膝に土がついていたのと、肩甲骨の間に圧迫痕があった。
 被害者が膝をついた姿勢で、後ろから肩甲骨の間に犯人が膝でも押し当てて、首に巻いた凶器を引っ張ったんだと思う」
「ああ、成程な」
 礼人はそれを想像した。
「被害者は30代の男だ。それを跪かせるんだから、犯人はやっぱり男か?」
 涼子はもぐもぐとしながらしばらく考えた。
「何らかの理由でかがんでたら簡単かも。例えば、落ちたものを拾うとか、地面をよく見ようとしたとか」
 礼人は少し考え、
「何かを拾わせたとかが自然かな。靴は紐のついていないタイプだったしな。
 おかわりは?」
「お腹いっぱい。御馳走様でした」
「ご馳走様」
 手を合わせた。








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