次期魔王の教育係に任命された

第3章

78. 夕食

その後、アクア達と合流した僕は二人にお礼を言うとアクアと共に帰路に着く。予想していた時間より遅くなってしまったが夕食を作るには十分な時間だ。

今日はちょっと簡単なのにしようかな。

そう思いながら手を進めて行く。

「アクアー！野菜千切るの手伝ってー！」

アクアの部屋に向かって声を掛けるが一向に返事がない。あれ？と思い、部屋を覗くとベッドで眠るアクアの姿を見つけた。

フフッ、今日ははしゃぎ過ぎたのかな？

僕はクスッと笑うとブランケットも掛けずに眠る彼にソッと掛け、静かに部屋を後にした。






それから少ししてインカさんが帰って来る。

「ただいま…あれ？アクアは？」

いつもと違う様子に直ぐ気が付いた彼はアクアを探し始めた。

「アクアなら寝てますよ。今日はちょっとはしゃぎ過ぎちゃったみたいです。」

「…そうか。なら夕食はショウと2人きりだな。」

何故かしみじみと言われ恥ずかしくなる。僕はそれを誤魔化すようにいつもより声を大きくして彼を食卓に招くと口を開いた。

「あっあのインカさん、今日はいつもより簡単なものになっちゃったんですが…。」

「ああ、気にするな。ショウはいつも美味しい食事を作ってくれるからたまには楽してくれていい。それに出来合いの物でもいいんだぞ？」

「いや、それは僕があんまり好きじゃないし2人には栄養のあるものを食べて欲しいから…。」

「そうか…やはりショウにアクアの母親になって欲しいと言ったのは間違いじゃなかったな。」

そう微笑む彼に「覚えてたんだ…。」と驚く。

あれからベッドが別なのは当たり前で激しかったボディタッチも無くなった為、てっきりその約束は無効になったものだと思っていた。僕としてもお世話になっている間はアクアの面倒や家事全般を請け負うつもりだったので必然的に母親役にはなっていたが、それはお世話になる対価でむしろ家政婦のようなつもりだった。

「…しかし、ショウには一度振られているからな、だから早急に事を進めようとは思っていない。ただ…俺の気持ちがショウの負担になってしまうことを危惧しながらもこんなに近くにいるショウに触れられないのも辛い…。悪いな、お前にとっては居心地が悪いだろう…？」

困ったように笑う彼に僕の方が困ってしまった。僕にとっては居心地が良過ぎるくらい良くしてもらっているが、かといって彼の気持ちに応えれない自分がいつまでもここにいてもいいのかと悩んでしまう。そんなこと、ここに助けを求めた時点で分かっていたことなのにいつまでも甘える自分が許せなかった。