きっと私は悪役令嬢

麻生空

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「こんなに僕を捉えるのに……何故今まで見つけなかったのか……ねぇエド、社交界でエドに会った事がないのは何故なんだ?」

ルドルフ様は私の頬に手を添えたまま問い掛けて来る。
最初の方は意味が良く分からなかったけど、お兄様も直接ルドルフ様とお話した事はないと言っていたから、ルドルフ様がお兄様を認識していないのは分かっていた。

「毎回参加はしているのですが、そう言えば不思議ですね」
まぁ、お兄様は昼行灯だから気付かれないだけだと思うけど、一応嫡男だし成人もしているからお父様と一緒に社交界へも出席している。
何せ、何度も言うようだけどお兄様は昼行灯だから。
良くお兄様が言っていたセリフがあったな……確か……
「皆さん父にだけ意識が行くようで、気付かれないのかもしれませんよ。それに、途中からは軽食コーナーに身を寄せていますので」
確か、そんな事を言っていた。

「……そうでしたか。軽食コーナーは殆ど行きませんので……僕とした事が気付かなかったのですね……残念だ」

眉を下げるルドルフ様。

何が残念だっかのか?この際それは良い。
「あの……何故急に社交界の話なのですか?」

今までの話の流れで何故社交界?

「実は、来月王宮である夜会に招待されていて、もし良ければエドも来ないかな?と思ったんだ」
夜会への招待なら普通は婚約者を誘うよね。
何故に婚約者の兄を?

胡乱うろんな眼差しでルドルフ様を見たのは不可抗力だと思う。

「勿論。婚約者であるエリスのエスコートはするよ」

何だか婚約者はついでみたいな言い方だな。

「それで、もし良ければ二人に僕から当日の服を贈らせて貰いたいんだ」

「えっ?二人分ですか?」
なんか可笑しくない?
男が男に服を贈るとか?
婚約者ならまだ分かるけど。
何故に婚約者の兄にまで?
「これでも結構なろくは貰っているんだけど、なかなか使う時がなくってね。その機会を僕にくれないだろうか?」

お金は多くあった方が良いに決まってるのにそれを使いたいだなんて、変わった人だな。
でも、エリスで参加するとなると、エドの方は正直いらないんだけど、買うだけ無駄だよね。
どうしよう。

ジリジリと見つめられているけど、ここで断って変なフラグが立つのは嫌だし。
無駄遣いは嫌いなんだけどなぁ。
これは必要経費だろうか?
まぁ、自分のお金じゃないんだし。
「では、お言葉に甘えさせて頂きます」
と言っておく。

すると、ルドルフ様はホッと息を吐き出した。

「良かった。断られるかと、凄く緊張したんだ」
ルドルフ様は草むらに腰を落としそのまま横になると、こちらをチラリと見た。

「エドも横になろう。気持ち良いよ」

そして、何故か幸せそうに微笑む。

知っている。

お兄様と良くここで寝そべって空を見たんだ。

白い雲が色々な形になって、私達をワクワクさせた。

私は仕方がないとばかりにルドルフ様の隣に寝そべって空を見上げる。

令嬢ならはしたないだろうその行動も男の子なら許される。

この世は不公平だなぁ。

そう思いながら空を眺めた。

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