最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました

湊一桜

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【第二章】婚約者編

20. 犯人は兄上

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 赤い丸を消し終え、部屋に戻った私たち。先に戻ったレオンたちも、案の定余裕の表情をしている。

「21個」

「18個」

 お互いの手柄を見せ合って、

「私たちの勝ちだな」

レオンは口角を上げて言う。きっと、私が一緒に行かなかったことに腹を立てているのだろう。
 そんなレオンの挑発に乗るつもりもなく、

「レオン様、お見事です」

なんて逆に褒め称える私に、彼が狼狽えたのは言うまでもない。私はいつの間にか、レオンという人を上手く扱えるようになっている。

 こうしてひと息つき、タブレットを見ると……

「あれ? 全部回収したはずなのに、また赤い丸が動いています」

そう告げながら、ゾッとした。受信機を付けた人間は、今も少しずつ増え続けているのだ。

「これは元を潰さないといけないだろう」

 レオンは腕を組んで低く呟く。その言葉に、各々が頷いた。



「私は、殿下たちが動かれている間、グルニア帝国のコンピュータにハッキングを続けました」

 ハンスさんがパソコンの画面を見せながら、私たちに告げる。そのパソコンには、ひときわ大きな赤丸が表示されている。それは、宮廷のちょうど真ん中辺り、私すら立ち入ったことのない部屋にいる。

「ここは……」

 レオンが顔を強張らせた。

「未使用の受信機、および親機がある場所です。
 受信機には、この部屋から信号が送られていました」

 ハンスさんの言葉に、レオンが掠れた声で告げた。

「兄の部屋だ」

 ……え!?

「兄が部下に受信機を付けて、操っていたのか……」

 そうであって欲しくないと思っていたが、犯人はヘルベルト様だったのだ。ヘルベルト様はグルニア帝国と手を組み、私を捕らえ、レオンを痛めつけようとしていたのだ。
 失望と怒りが湧き起こる。だが、実の兄に裏切られたレオンは、淡々としている。……淡々と見せかけているのかもしれない。

「私は今から父上に報告に行く。
 ……いや、皆で行こう。ハンスの件も、誤解されないうちに話しておかなければならない」



 こうして、私たちはレオンを先頭に、今まで起きたことを国王陛下に報告に行った。陛下はレオンの話を聞き、頷いていた。

「それでは、グルニア帝国と手を組み、我が国を混乱に陥れたのはヘルベルトだと言うのか」

 普段は優しそうな陛下だが、国のこととなっては訳が違う。眉間に皺を寄せ、厳しい顔でレオンに聞く。

「その可能性が考えられます、父上」

 レオンは低く頭を垂れる。だから私たちも、陛下の前に跪いた。

「ただ、兄上から話を聞くまでは、兄上を犯人だと断定してはならないと存じます」

「そうだな……」

 陛下は頷き、近衛騎士団にヘルベルト様を捕らえるよう告げる。そして、騎士たちが部屋を出たあと、静かに告げた。

「レオン、お前にはいつも助けられている。礼を言おう。
 そして、ヘルベルトが我が子であることを残念に思う」

 陛下がそう告げるのを聞き、レオンは浮かない表情をしていた。私はそんなレオンの様子がとても気になる。レオンはこの件に関する思いを、一人で抱え込んでいるのだろう。





 陛下との話を終え宮廷を出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。

「マリウス。ハンスを客人の間へ。
 我が国に戻り、国を救ったハンスをもてなすよう侍女たちに伝えてくれ」

 マリウス様は一礼し、ハンスさんを連れて去っていく。

「リリー、今回の件も世話になった。
 褒美は後ほど授ける。今日は帰ってゆっくり休め」

「ありがとうございます」

 リリーも頭を下げて去っていく。そしてレオンの隣には、私だけが残された。居心地の悪い沈黙が続く。見上げると、レオンはやはり寂しげな顔をしていて……

「レオン様」

 思わず聞いていた。

「少しお話出来ないでしょうか」

 レオンは目を細め、少し嬉しそうに私を見る。

「それならば、私の部屋で話をしよう」

「……え? 」

 レオンの部屋!?思わずたじろいでしまう私の手を、レオンは不意に握る。そして、耳元で優しく囁く。

「やっと二人きりになれた。私は、ローザを欲している」

 低くて甘い声に、頭の中がくらっとする。体が熱を持つ。

「私は不安だった。この世界に戻ってから、ローザが私から距離を取るから」

「ごめんなさい……」

 でも、レオンは王太子だ。宮廷内の目もあり、やはり馴れ馴れしくは出来ない。しかも、私が急に馴れ馴れしくすれば、マリウス様の絶好のターゲットになるだろう。

「分かっている。……だが、二人の時は私に気を許して欲しい」

「……はい」

 私が頷くと、レオンは幸せそうに私を見る。そして、そっと身を寄せる。こうやって二人でいると、私も幸せだと思ってしまった。必死でレオンのアピールから逃げていた日を思い出すと、滑稽だと思った。今や私は、レオンを求めて止まないのだから。

 こうして私は、再びレオンと一夜を過ごした。




 
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