155 / 667
ひとごと
しおりを挟む
雪兎はベッドから離れた壁の前で手招きをする。ここに来た当初、許可なく自慰をしただなんて理由で首輪を結ばれた、リングが一面に並んだ壁だ。
「……脱いで」
「えっと、服ですか?」
「そうだよ、早く脱いで。雪風の服でしょ? それ。パツパツだし、似合ってないし、丈余ってるし…………本当に似合わない、早く脱いで」
そこまで似合わないと連呼されては、自覚していても傷付く。そう軽口を叩きたくなったが、俺を睨む赤紫は心底苛立っているようで、俺は黙って服を脱いだ。
今まではいつの間にか脱がされている事が多かったから、改めて自分で脱ぐと羞恥心が沸いてくる。
「……足開いて」
雪兎は俺が着替えている間にタオルをお湯で濡らして持ってきた。
無表情のまま、精液がこびり付いた内腿を拭われる。それだけでも足が震えてしまうのに、性器周辺も乱雑に拭われて、俺は甘い声を漏らす。
「ん、終わり」
雪兎はタオルを洗濯カゴに投げ入れ、ベッド脇から貞操帯を持ってくる。
「……また、それですか」
「嫌なの? 嫌だろうね、これがあったら浮気しにくいもんね」
「浮気なんてしてませんよ……」
「……座って、自分で拡げて」
俺は体育座りのように膝を立てて座り、背を曲げて壁にもたれ、開脚する。尻の肉を引っ張って、雪兎に穴を見せる。顔が熱くなるのを感じる、雪兎を見ていられなくなる。
「んっ……ぁ、ユキ様……」
ローションに塗れた指が穴の口をなぞる。僅かに曲がった第一関節が中に入る。
「ふっ……ぅ、ぁあっ……!」
バイブにもしっかりとローションが塗り込まれ、小さなそれは俺の中に抵抗なく入ってきた。
いくら小さくとも、前立腺などに当たらないと言っても、圧迫感は確かにあるし、「入っている」という認識だけで俺は芯を熱くしてしまう。
「次、前ね」
陰茎にカバーのような物が被せられ、根元と亀頭の下がベルトで締められる。半ば勃ち上がっていた陰茎を無理矢理に詰められて、それだけで達してしまいそうになった。
「じゃあ、全体を留めて…………はい、完成」
腰にベルトが巻かれ、金属が擦れ合う音と共にバイブとカバーが固定され、さらに窮屈になる。
「ねぇ、僕もね、分かってるんだよ? 雪風とそういうことしちゃうのは、ポチの意志じゃないし、ポチには責任ないって分かってる。でもさ……」
雪兎はポケットから携帯端末を取り出し、俺に動画を見せた。そこに映っていたのは俺だった、俺が雪風の胸倉を掴み、長々と淫らなキスをする様子が完璧に捉えられていた。
「……気が付かなかった? 隠しカメラ、雪風の趣味だよ。他にもあるらしいけど……これ以上のは見る気しなくて、見てないんだ。ねぇ、何したの? 正直に言ったらそれなりの減刑はしてあげるから、雪風から動画は送られてるんだし、嘘吐いても無駄だよ?」
「その、キスの後、胸だけでイかされて、フェラしてもらって、痣いっぱい付けてもらって、その後……雪風を、抱きました」
雪兎の手が首に触れる。静かに胸をなぞっていくのを感じて、歯型を追っているのだと察する。
「抱いたんだ」
「はい」
「どうだった?」
「……万能感というか、征服感というか、そういうのがすごくて、まぁ、良かったです」
表情が無く、口数も少なく、瞳も冷たいまま。雪兎の感情が全く読み取れない。怒っているのは確かだが、だからどうなのか……が分からない。
「ペットが父親抱くなんてね。本当、見境ない人……まぁ、仕事するかセックスするかしかない人だから、仕方ないけど」
「あ、あの……俺は、あの人が、ユキ様にそっくりだから……その、フェラされてる時も、抱いてる時も、俺はずっとユキ様と重ねてて……」
「そう、良かったね。僕はそういうのしないから、疑似体験出来たなら、おめでとう言わなきゃ」
雪兎の言葉はどこか他人事のようで、それが恐ろしい。
まさか、雪兎に嫌われたのではと、愛想を尽かされたのではと、そんな杞憂ではないであろう不安に襲われる。
「……脱いで」
「えっと、服ですか?」
「そうだよ、早く脱いで。雪風の服でしょ? それ。パツパツだし、似合ってないし、丈余ってるし…………本当に似合わない、早く脱いで」
そこまで似合わないと連呼されては、自覚していても傷付く。そう軽口を叩きたくなったが、俺を睨む赤紫は心底苛立っているようで、俺は黙って服を脱いだ。
今まではいつの間にか脱がされている事が多かったから、改めて自分で脱ぐと羞恥心が沸いてくる。
「……足開いて」
雪兎は俺が着替えている間にタオルをお湯で濡らして持ってきた。
無表情のまま、精液がこびり付いた内腿を拭われる。それだけでも足が震えてしまうのに、性器周辺も乱雑に拭われて、俺は甘い声を漏らす。
「ん、終わり」
雪兎はタオルを洗濯カゴに投げ入れ、ベッド脇から貞操帯を持ってくる。
「……また、それですか」
「嫌なの? 嫌だろうね、これがあったら浮気しにくいもんね」
「浮気なんてしてませんよ……」
「……座って、自分で拡げて」
俺は体育座りのように膝を立てて座り、背を曲げて壁にもたれ、開脚する。尻の肉を引っ張って、雪兎に穴を見せる。顔が熱くなるのを感じる、雪兎を見ていられなくなる。
「んっ……ぁ、ユキ様……」
ローションに塗れた指が穴の口をなぞる。僅かに曲がった第一関節が中に入る。
「ふっ……ぅ、ぁあっ……!」
バイブにもしっかりとローションが塗り込まれ、小さなそれは俺の中に抵抗なく入ってきた。
いくら小さくとも、前立腺などに当たらないと言っても、圧迫感は確かにあるし、「入っている」という認識だけで俺は芯を熱くしてしまう。
「次、前ね」
陰茎にカバーのような物が被せられ、根元と亀頭の下がベルトで締められる。半ば勃ち上がっていた陰茎を無理矢理に詰められて、それだけで達してしまいそうになった。
「じゃあ、全体を留めて…………はい、完成」
腰にベルトが巻かれ、金属が擦れ合う音と共にバイブとカバーが固定され、さらに窮屈になる。
「ねぇ、僕もね、分かってるんだよ? 雪風とそういうことしちゃうのは、ポチの意志じゃないし、ポチには責任ないって分かってる。でもさ……」
雪兎はポケットから携帯端末を取り出し、俺に動画を見せた。そこに映っていたのは俺だった、俺が雪風の胸倉を掴み、長々と淫らなキスをする様子が完璧に捉えられていた。
「……気が付かなかった? 隠しカメラ、雪風の趣味だよ。他にもあるらしいけど……これ以上のは見る気しなくて、見てないんだ。ねぇ、何したの? 正直に言ったらそれなりの減刑はしてあげるから、雪風から動画は送られてるんだし、嘘吐いても無駄だよ?」
「その、キスの後、胸だけでイかされて、フェラしてもらって、痣いっぱい付けてもらって、その後……雪風を、抱きました」
雪兎の手が首に触れる。静かに胸をなぞっていくのを感じて、歯型を追っているのだと察する。
「抱いたんだ」
「はい」
「どうだった?」
「……万能感というか、征服感というか、そういうのがすごくて、まぁ、良かったです」
表情が無く、口数も少なく、瞳も冷たいまま。雪兎の感情が全く読み取れない。怒っているのは確かだが、だからどうなのか……が分からない。
「ペットが父親抱くなんてね。本当、見境ない人……まぁ、仕事するかセックスするかしかない人だから、仕方ないけど」
「あ、あの……俺は、あの人が、ユキ様にそっくりだから……その、フェラされてる時も、抱いてる時も、俺はずっとユキ様と重ねてて……」
「そう、良かったね。僕はそういうのしないから、疑似体験出来たなら、おめでとう言わなきゃ」
雪兎の言葉はどこか他人事のようで、それが恐ろしい。
まさか、雪兎に嫌われたのではと、愛想を尽かされたのではと、そんな杞憂ではないであろう不安に襲われる。
30
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる