俺の名前は今日からポチです

ムーン

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ふたまた、に

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画面越しにも分かるくらいに胸を大きく上下させる荒い呼吸、そんなにも苦しい状態だというのに口を手で覆っている。
仰け反った雪風の状況は彼の部下達は正しく理解出来ないだろう。聞こえるのは体調を心配する声だけだ。

「……っ、ん……ぅ…………いや、えっと……虫、デカい虫が出てな。おーい誰かー……」

そんな言い訳が通用するものだろうか。

『虫……ですか? はぁ……』
『どうせまた誰か連れ込んでるんじゃないんですか』

勘のいい奴が居るな。

「いやいや、誰も連れ込んでない。俺最近会社にも誰も連れ込んでなかったろ?」

姿勢を戻した雪風は息を荒くしているが、冷静に返した。賢者タイムか? いや違う、雪風は中だけで絶頂を迎えて射精は出来ていない。パンパンに張った陰茎は相当苦しいはずだ、まだ彼の熱は冷めていない。

『そういえば社長最近大人しかったような……』
『こんな話やめましょうよ、仕事中ですよ』

雪風は嘘はついていない。俺はこの家に住んでいるのだから「連れ込んだ」とは言わない。仕事部屋には連れ込んだだろ……と反論されたなら「俺は自分の意思でここに入った、雪風に連れ込まれたんじゃない」とでも言おうか。

「俺もそろそろ歳だからな、落ち着かないと」

一人に絞る、という意味だろう? 絶世の美男の最後の恋人に選ばれるなんて、なんて光栄なことだろう。

「いやまだ四十にはなって、なっ……い……けどな」

雪風は真面目に働いている。俺も恋人の務めを果たさなければ。
俺は苦しそうに張った陰茎をそっと握り、全体に広がり毛布にまで滴っていた先走りの汁のぬめりを利用し、優しく扱いた。

「……く、ぅっ…………ふっ、ちょっ、と……待てよっ……」

あまり刺激を与えないように優しく優しく扱いていると、雪風は俺の手を掴んで止めた。

『え? ぁ、は、はい。おい、スライド一旦止めろ』
『社長、やっぱり体調が優れないのでは?』

「ぁ、いやっ……お前らは、続けろ……」

『え……じゃあ、誰に?』
『説明再開しますが、よろしいですか?』

俺の手を引っ張っても快感のせいで力が抜けて引き剥がせないと悟った雪風は、俺の手に手を重ね、俺の手越しに陰茎を握った。

「……んっ、ん……ふ、んっ……ぅ…………」

俺の手を使って自慰をしている。俺の手はオナホじゃないんだ、俺は俺の意思で自分の手を動かす。

「ふっ、ふ……ぅ…………んぅっ!?」

雪風に上下させられていた手に力を込め、亀頭をぎゅっと握った。親指の腹で鈴口を弄ってやると、雪風は口を押さえて額を机の端に乗せ、快楽に呻いた。

『えっ、ちょ、社長! 社長!? 大変……』
『やっべぇマジで倒れた!? おい誰か電話! 社長の側近さんに電話!』

貧血か何かで意識を朦朧とさせていると思われたようだ。手を止めても雪風は起き上がらず、休憩を堪能するだけだ。
結局リモートワークは中断され、部下に連絡を受けてやってきた雪風の側仕えの使用人が雪風をベッドに運んだという演技をして、会議用のアプリを落としてくれた。

「…………すいません」

「当主様の望みだったのならポチさんに落ち度はありませんよ」

流石にやり過ぎたと素直に反省し頭を下げると、使用人はにこやかに許してくれた。

「……しかし当主様、家に住んだ途端に仕事に身が入らなくなったとなれば、せっかく前当主様が許してくださった坊っちゃまとの同居が白紙撤回となるのでは?」

「……っ!? それはまずい! 雪成には報告しないでくれ、頼む……!」

「そう言われましても……仕事の進捗を誤魔化すのは難しいかと。真面目に仕事した方がコストパフォーマンスがよろしいかと」

雪風は激しく首を縦に振り、貧血だと部下に誤解された今日はとりあえずメールの確認などをすると伝えた。使用人は部屋を去り、雪風は宣言通りにメールフォルダを開いた。
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