冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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静止したエレベーターの上へ (水月+ヒト・サン・荒凪・ネイ)

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物部が呼び出し、荒凪が全滅させた魑魅魍魎の死骸もすっかり消えた。大型の怪異の残骸はまだ少し残っているが──お、化けガエル居たのか。嫌な思い出が蘇るな。

「痛っ……いっ、たぁ……!」

「早く立ってよ兄貴、手ぇ貸してあげてるんだから」

「無茶言わないでください! 足二発も撃たれてるんですよ!? 痛っ、はぁ……無理、歩けない……サン、おぶってください」

「え~……」

「役に立たないくせに着いてきたんだからそれくらいやりなさい!」

「兄貴の足を縫った小人を見つけたのはボクだよ」

「サン……ヒトさんは俺を守って怪我しちゃったんだ、もう少し優しくしてあげてよ。背の高いヒトさん運べるの、フタさんとサン以外には居ないし……フタさんも怪我してるから、ね? サン、俺からもお願い」

何とか立ち上がりはしたものの、支えなしでは立ってもいられない。当然歩くなんて出来やしない。足に大怪我を負ったヒトの姿は見ているだけで胸が痛む。

「…………はぁ。水月に言われちゃ仕方ないね」

「ありがとうサン! 髪、前に回しておくね」

人をおぶるのには邪魔な長髪を身体の前に回し、屈んだサンの背にヒトがおぶさる。

「いっ……! 痛っ、痛……痛いっ! 乱暴に持ち上げないでくださいよ! はぁ、はぁ……も、変な汗出てきた……痛い……」

「きゅう~……ひとぉ」
「……ごめんなさい」

「ぁ? あぁ……そういえばあなた達の呪いでしたね、この傷……あなたの意思ではなかったんでしょう? 気に病むことはありませんよ」

「僕達嫌う……して欲しくない」
「ヒト、俺達に優しかった。好き」

「……嫌ってませんから。あなたを取り戻せてよかった……また、ウチに遊びに来てください」

意外だ。ヒトの性格なら荒凪に恨み言を吐くと予想していた。以前、化け物丸出しな見た目の荒凪をすぐに受け入れて浴室を貸してくれたことも、その際に何の文句も言わなかったことも、意外に思ったんだったか。荒凪が絡むとヒトは意外な一面ばかり見せてくる。

(爬虫類好きだから荒凪きゅんに優しいのでしょうか)

荒凪の下半身は魚っぽいヒレが生えているだけでほぼ蛇だからなぁ、と改めて眺めてみる。

「きゅ? みつき、何?」
「怪我、痛い? 歩けない?」

「え? あぁいや、俺は平気……わっ!?」

四本の腕でひょいと抱えられてしまった。お姫様抱っこと呼べるのだろうか、これは。腕が四本だと安定感が段違いだ、非常に心地いい。

「まひろ、どこ行く?」
「真尋、歩ける?」

「物部も怪異も使ってなかった一番奥の扉が気になる。あっちに進むぞ。あと、俺は怪我してない」

「分かった。あっち」
「真尋、怪我治った」

蛇のように下半身をくねらせて進む荒凪の腕の中は快適だ、振動がない。体調が悪い時に抱き上げられて運ばれたって、乗り物酔いを起こすことはないだろう。

「快適快適……痛っ!?」

「きゅ!? みつきごめん!」
「ごめんなさい。水月、長い」

壁に足をぶつけられてしまった。横抱きで運ばれるには扉の幅が足りなかったらしい。一旦下ろしてもらい、体育館のように広かった部屋に比べると格段に狭い通路に下ろされる。

「またエレベーター……ですか?」

「前社長いわく物部の本体は地下に居るそうで、ようやくゴールが見えてきたって感じですね」

ボロボロの羽織りを腕にかけた秘書がエレベーターのボタンを操作する、二つしかないそれを片方ずつ押し、同時に押し、連打し、首を傾げる。

「……電気通ってませんねコレ」

「籠城かな。エレベーター以外に階層の移動方法がない以上、エレベーターを止めてしまえば僕達は物部の元に辿り着けない」

「さっき乗ったエレベーターも止められてたら、一旦帰るとかも出来ませんね」

「餓死か衰弱死待ち? 随分と気の長い話だね。ヤクザや子供だけならともかく、僕が居るんだ。救出部隊が送り込まれてくるよ」

「公安も居ますしね。影薄いけど」

「怪異相手は専門じゃないんです、影が薄くて当然でしょう」

ネイはムッとした顔で秘書に言い返す。

「公安ってなんかこう……出来ないんですか? このパネル剥がしてコードとか引っ張り出して、パソコンとかに繋いでコントロール乗っとるみたいなこと」

「出来ませんよ! 公安警察を何だと思ってるんですか」

「サイバーパンクニンジャ」

ハッキング云々なら穂張事務所の社員の方が適した者が居たのでは、と社員の中でも小柄な男に視線をやる。タブレットを持っている彼は俺の視線に気付くと眉間に皺を寄せた。

「若、ネットに繋がってない機械のハッキングは基本無理。常識だと思う」

「ですよね……」

じゃあどうすればいいんだろう。物部が地下に居るとして、そこから動かないならここで時間を食っていても大丈夫だけれど、もし他に脱出口があったら? 救助を待っている間に物部が逃げたら?

「コンちゃんとサキヒコくん……それからフタさんとこの猫ちゃん達は下行けるよね?」

「すり抜けて行けばいいだけじゃからのぅ、霊体のみのワシらには児戯よ」

「……コントロールルーム的なの探してきてもらうとか、ぁーいや危ないかなぁ……下にさっきよりヤバい怪異とか居たら、そんな少人数じゃちょっとね」

「みつき、下降りたい?」

「ん? うん……」

言い切るが早いか、荒凪は尻尾をエレベーターの扉に叩きつけた。凹んだそれは鈍く嫌な音を立てて外れ、奈落へと落ちていった。いや、案外遠くないところに落ちたようでガゴォンッという音が程なくして聞こえてきた。

「降りれるようにはなったな。ナイス荒凪」

「きゅ、まひろ喜んだ」
「水月は? 嬉しい?」

「……え、これ降りれる判定?」

エレベーターの乗る部分……あの昇り降りする箱の部分は今、下の階に停まっているのだろう。四角い穴を恐る恐る覗いても、暗くて何も見えないけれど。

「ドアが落ちた音的にそんな高くもなさそうですし、飛び降りましょう。降りたらハッチ開けてエレベーター入って、また荒凪にドア壊してもらったら下の階行けますよ」

「とっ、飛び降り!? エレベーターでそんなドンドコやったらワイヤー切れちゃいますよ! 行けたとして帰りはどうするんですか!?」

「下にコントロールルームあるかもって言ったの鳴雷さんじゃないですか。動くようにしに行きしましょう」

「ドア壊しちゃうんですよね!?」

「エレベーターには最悪床さえあればいいでしょう。ドアのないエレベーター、海外には結構あるそうですよ?」

「みつき、降りる、こわい?」
「俺達、抱っこする。怖くない」

「いやそういう問題じゃ、待って待って抱えないでやだやだ飛び降りないで! 荒凪くん!? 君俺の言うこと絶対聞くって習性はっ……あぁあああっ!?」

荒凪は四本の腕で俺を無理矢理抱え、単なる枠となった壊れた扉の跡をくぐり、飛び降りた。
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