ある時、ある場所で

もこ

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4回目〜2年前〜(悠)

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「課長、次の任務はいつですか?何年前に飛ぶんですか?」
俺はちょうど出勤してきた課長を捕まえて隣の小会議室に引き入れて詰め寄っていた。

「い、伊那村くん、おはよう。どうしたんだい?」
俺より少し低い体をのけぞるようにして、俺を見つめる。ハッと我に返って掴んでいた手を離した。

「すみません。でも、次の予定をできれば早く知りたくて…。」
真人に会いに行きたい。でも、20年前なんて言われたらどうしようもない。生田さんや小野寺さんは、20年以上前に飛んでいるからあり得ないことではないんだ。

「上に聞いてみるよ。多分今は調整している所だろうから、直前で変わることもありうるぞ?」
「はい。前回も変わっていたし…。大丈夫です。今現在で何年前に飛ぶことになっているのか聞いてもらっていいですか?」

杉崎課長の温かい言葉に、ほっと力が抜ける。本当の「伊那村悠」の姿で真人に会いに行けるのは後3ヶ月は待たないといけない。次の任務が何年前だろうと、真人に会いに行く俺の決意は変わらなかった。

課長と2人で経理部に戻る。小野寺さんが机拭きを終える所だった。
「すみません!小野寺さん。代わります。」
さっき机拭きを始めたところで課長が入ってきて、布巾を放り出してそのままにしてしまった。

「いいよ。…何かあったのか?」
課長は、「ちょっと出てくる。」と言って、鞄を置くとすぐに出て行った。俺の任務について聞きに行ったのに違いない。
「いえ…任務の事でちょっと…。」
小野寺さんが顔を上げた瞬間に、うなじのところにチェーンが見えた。

『ネックレス…?……ああ…そうか。』
休日に指輪を嵌めていたのに普段はしてない理由…。チェーンで指輪を隠してたんだ。
「そのネックス…指輪…いいですね。羨ましいです。」
俺の言葉に、小野寺さんが一瞬で真っ赤になった。

「おまっ、おまっ……何で?」
「大丈夫です。誰にも言いません。」
小野寺さんの慌てぶりに笑いがこみ上げる…。もうバレてるって分かるだろ?洸一さんもハッキリ『奏は俺のもの』って言ってたぞ?話してなかった?ま、こんな小野寺さんだから洸一さんもほっとけないのかもな。…カワイイ…。

「2月になったら言ってもいい。」
気を取り直したらしい小野寺さんが小さな事で呟いた。
「2月?」
どうして2月なんだ?

「2月に…籍を入れる…。苗字も変わるから…。」
真っ赤なままで俯きながら話す小野寺さんの姿に、本当に羨ましくなった。真人…真人…奥村真人…伊那村真人…奥村…悠…。いつか一緒の苗字を名乗るのも…悪くない…。



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