ある時、ある場所で

もこ

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4回目〜2年前〜(悠)

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「どうしてこの土地にいるんだ?」
狼狽た龍也にさらに問い詰める。龍也の勤め先は都内のはず…。
「ち、長期出張で…。あと1週間で東京に戻る。」
「じゃあ、もうこの店に来るな。バラされたくなかったら…。…キス以外、何もしてないだろうな?」
今までに何回真人に触れた?キスしたのは何回だ?問い詰めたい…。キス以上は…まさか…あるのか…?

「な、ない。ナイナイ。ないから。じゃ、真人くん、コーヒーごちそうさまっ!」
大慌てで、逃げるように去っていく龍也の姿にホッとする。あの様子じゃあ、キス以上は…ないな。大雨の中を傘もささずに走り去る龍也の姿を、窓越しに確認した。俺がさしてた傘…放り出してきた….ま、いいか。

龍也の姿が見えなくなり、真人に向き直った。真人は俯いてまだ微かに震えていた。怖かっただろう。…大丈夫か?
「真人…?」
俺の呼びかけ反応するように、少しだけ後ずさる姿に不安になる。真人…待ってた?待てなかった?俺は…会いたかった。この1ヶ月が待ち切れなかったぐらい。俺はメガネを外してスイッチをオフにし、ポケットに入れた。

「真人….会いたかった!」
ようやく真人を抱きしめる。前より少しだけ身長が伸びた。髪の毛は茶色だ。「minori's coffee」で見た通り…。瞳は…?顔が見たい…。俺の全身の血が真人に向かって流れ出す…。

「触るなっ!」
真人に突き飛ばされて、頭が冷える。頭から徐々に全身が冷えていった。…真人…待てなかった…よな…。
「真人…ごめん…。」

「3年だぞっ!3年!…どこをどう考えたら待ってたなんて思えるんだ?」
当たり前だ。俺なら無理。あの時のことは事故にあったと思って忘れようとするだろう…。でも…。
「真人…どうしても来れなかったんだ…。待ってて欲しかった。…俺の願望。…ただ…それだけ。」
今言えることを正直に。俺にはそうするしか術がなかった。

気がつくと、こちらを睨みつけた真人の目から涙が溢れていた。頬を大粒の涙が流れ落ちていく…。俺の腕が、引き寄せられるように持ち上がっていった。
「真人…泣かないで…。」
顔を持ち上げる。…見えた。俺がずっと囚われていた瞳。5年前のあの時から頭の隅に住み続けた瞳…。
「泣いていても…綺麗だ…瞳。…ずっと…ずっと求めていたんだ。この瞳…。真人を…。」

「…ゆうっ!」
俺の名前を呼んで抱きついてきた真人。本当の名前でなくとも今はいい。この熱が、この真人自身が本物なら…。思いの丈を込めて真人を抱きしめる。またここから始めるんだ。
「真人…もう一度最初からやり直しさせて?…待ってなかったとしてもいい。…これから…また…始めさせて?」

「待ってたよっっ!ずっと…。気が遠くなるぐらい…。夢だったのかもって自分が信じられなくなるぐらいっ!」
「真人……!」
真人の言葉が俺の全身に響いた。嬉しい…。今まで生きてきて、こんなに嬉しかったことはない。俺は迷わず真人に口づけていた。龍也のそれを上書きしたい。もし、他の誰かにキスをされていたら…それも俺のもので上書きする…真人は…俺のものだ。



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