裕也の冒険 ~~不思議な旅~~

ひろの助

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第7章。「西の宇宙」

4、4人の帝王

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ーー4人の帝王ーー

イジーの話は終わった。
「祈りの王よ」
声が聞こえた。
裕也は、自分がそう言われたのを気にすることなく声に聞き耳を立てた。
脳裏に人の顔が浮かぶ。
静かに目を閉じた。
菱形ひしがた輪郭りんかくに、黒い大きな目があり、
 鼻口は小さい。
 ぞくに言う宇宙人だな)
「私は、イオーです。帝国の総領主そうりょうしゅ。第一王です」
また、顔が浮かぶ。
(鼻が少しへちゃげている。)
「私は、イブーです。うふふ。これ。今のは、私の娘です」
娘の顔も浮かぶ。
(娘の顔も鼻がへちゃげている。
 一族の遺伝いでんだろか。
 愛嬌あいきょうのある子だ)裕也は、そう思った。
また、顔が浮かぶ。
(今度は、口がラッパの様にとがっている)
「私は、イラーです。お見知り置きを」
また、顔が浮かぶ。
(今度は、口も鼻も普通だが、少しきばが生えている。)
「私は、イアク。殺生も自然の摂理せつりと心得る。
 お見知り置きを」
そして、顔は消えた。

ーー王と民衆(1)ーー

裕也は、いつものように朝の祈りをしていた。

ご本尊の四隅の四天王から宇宙人の顔がが出ている。
(イォーの子かな?
 何で顔が出てるのかな。)裕也は不思議に思っていると。
(裕也。おはよう)イォーの子の意識が流れてきた。
(朝の挨拶でもしにきたのかな)裕也は、自分を納得させた。

「さー。仕事に行こう」
裕也は、元気よく部屋を出た。

ーー王と民衆(2)ーー

裕也は、朝7時に会社に着いた。
そして、仕事を始める。
消費税の改定に伴うシステムの保守を行っている。
8時30分ごろになると他の社員も出勤してくる。
「おはよう」裕也の上司の北見が出勤してきた。
「おはようございます」裕也は挨拶あいさつした。
「今日、10時から消費税の改定についてのシステム保守の打ち合わせをするぞ。
裕也」
北見は、ミーティングの時間を告げた。
「了解です」裕也は答えた。
10時になって、ミーティングを行う会議室の席に着いた。
会議は、北見、裕也、そして新人の3名で構成されている。 
全員が席に着いた。
北見は(消費税の改定に伴うシステム保守のミーティングを行う)と言おうとした。しかし、声が出ない。
裕也は、北見を見つめていた。北見の顔にイォーの子の顔が薄く映る。
そして、イォーは、ほほ笑んだ。
(仕事の邪魔じゃまをしちゃだめだよ。イォー)裕也はイォーに心の声で呼びかけた。
(なぜ、声が出ないんだ。何かに体が乗っ取られているみたいだ)北見はいらだった。
裕也の声が聞こえる。
(イォー?誰だ。)北見は、裕也に(イォー)と心で呼びかけた。
裕也の顔に宇宙人の顔の影が映る。
(こいつが会議の邪魔をしているのか?)北見は思った。
北見の束縛そくばくは解放されていた。
みんなにも裕也の顔に宇宙人の顔が映ったのを見た。


ーー王と民衆(3)ーー

会議は、何とか終わった。
裕也の居る場所に何らかの磁場じばが生じているのかもしれない。
裕也の体は宇宙全体と繋がっていた。
会社の人は、宇宙人の顔が現れるのが面白くてイォーの子を呼び出していた。
イォーの子も最初は面白がっていたが、だんだん体が乗っ取られる感じが強くなり、精神が疲れ始めていた。
イォー(西の宇宙の王)は、息子の異変に気づいた。
(何とかしないと息子が危ない)そう思ったイォーは、
裕也の会社の社長を呼び出せば、
息子の呼び出しは無くなるのではないかと思い。
会社の社員の心を通じて社長を呼びだした。
社員も会社の社長の顔が映るので驚いたが、皆は、面白がって社長を呼び出した。
本物が呼び出されているとは思わなかった。
呼び出しはエスカレートして、
日本の首相を呼び出したり、
アメリカや外国の大統領を呼び出したり、
どんどんひどくなってきた。
でも、皆は、本物が呼び出されているとは思っていなかった。
しかし、イォーの息子の呼び出しは、無くなって西の王は安心した。

ーー王と民衆(4)ーー

(このまま、呼び出していると何かの罰を受けないとも限らない。)
裕也は、何とか普通の状態に戻せないかと考えた。
(まずは、社長が憤慨ふんがいする前に何とかしないと)
裕也は、社長に心の声で呼びかけることにした。
(社長。システム開発部の裕也です。
呼び出されてお困りではないですか?)
暫くして、
(ちっと、仕事が手につかない。裕也君。
これは、どうしたことなのかな?)
社長から返事があった。
(僕の磁場のシステムの影響かもしれません)
裕也は、答えた。
(どうすれば、呼び出されなくなるかな?)
社長は、尋ねた。
(今の段階では、この事象は、私の居る部屋に限られています。
実際の手段で、みんなと親密になるのは、嬉しいけど、
社長に用のあるときは、ちゃんとした会社の正規のルールで提案をするようにと
部長に電話してみんなに伝えてもらえませんか。
みんなも本当に社長が呼び出されていることが理解できると思います。)
裕也は、社長に現実に対応することをうながした。
(わかった)社長は、その案を実行することにした。
そして、部長のデスクの電話がかかる。
部長は、数分話して、そして、裕也が言ったさっきの話をみんなに伝えた。
「システム開発室のみんなにお知らせです。
………
要件があるときは、ルールにのっとって提案するようにお願いします」
皆は、リアルに社長が呼び出されていることを実感した。
そして、悪ふざけでと軽い気持ちで思っていたことを反省した。

ーー王と民衆(5)ーー

社長への呼び出しは収まった。
しかし、イォーの息子が呼び出されて出てきて、また首脳への呼び出しが始まる。
皆もイライラしている。
裕也は、部屋全体に意識を広げた。
イォー息子が呼び出されても、ほいほい出てこないように
裕也も察知さっちし一緒に我慢がまんした。
裕也は首脳への呼び出しも我慢した。
みんなも、落ち着きを取り戻してきて我慢するようになってきた。
この事象に対応するには相互理解と努力が必要なのである。
みんなは、裕也の意識に触れ覚醒かくせいしたのかもしれない。
しかし、心の声が聞こえたり、話せたとしても超能力ではない。
テレビに出ても金儲かねもうけには使えない。
仕事は社会のシステムに乗っ取らなければならないもので、
裕也の磁場は、言うなれば宗教のシステムである。
空中に肉が漂っている。
裕也は、不思議そうに見ていた。
それは、裕也に近づいて来て腕に着いた。
ひんやりとした感覚がした。
裕也は、会社の人が裕也にリレーションしたのだと分かった。
社長は、王である。社員は民だ。
しかし、リレーションの主体は主である。
裕也は、主なのである。
裕也は、静かな穏やかな気の中にいる。
西の宇宙の王と民も裕也にリレーションした。

西の宇宙(完)

つづく。

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