運で世界を統べる!?〜不運な私がゲームの世界で〜

六道奏

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第23話 やっぱり・・・

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「おう!戻ってきたか!あんな所で2人で何してたんだ?」

 写真を撮り終えて下へ戻ってくると皆待っていたらしく、なにか雑談をしていた。
 そんな中でジークはトウカ達が戻ってくるのを見るとすぐに話しかけてきた。

「あ!ジーク!!ねぇねぇ!!聞いて!!すごかったんだよ!!!ほんとにね!すごかったんだから!!」

 トウカは先ほどの幻想的な光景が脳から離れず、今まで以上に興奮している。
 そのため、ただでさえ無い語彙力が幼児並みに落ちていて何を言っているのか全く分からない。

 ジークは何言ってんだこいつ?みたいな反応をしていたが興奮しているトウカは気づかない。
 そして、トウカのその様子に見兼ねたアーサーが具体的に説明する。

「あぁ、ジーク。どうやらトウカ様はこの景色をいたく気に入ったらしく、写真を撮りたかったらしい。ここでは目の前に地龍アースドラゴンがいて危険だろう?そのため安全な上ここよりも良い景色だろう木の上まで行ってきたんだ。」

「そうだよ!!だってすごいじゃん!?こんなの見たことないもん!!」

 今も世界樹は目の前にあるのに、話が出るとついつい興奮してしまう。

「もう、トウカったらはしゃいじゃって。ふふふ」

 またやってしまった・・・
 ジャンヌに笑いながら頭を撫でられる。

「ちょっと!?子供じゃないんだからやめてよ!?」

 恥ずかしくて抵抗するが、実はちょっと嬉しかったがこれは内緒だ。

「大丈夫だよぉ。こんな景色よりトウカちゃんの方が可愛いからねぇ」

 ランスロットが何か言ってるがスルーだ…。



「もう!今はそれよりもドラゴンでしょ!?」

 話題を変えようと強引に話を持っていくが、照れ隠しなのがバレバレみたいで、皆ニヤニヤしている。

「ねぇ!ニヤニヤしないでいいから早くやるよ!!」

 そういってトウカはズカズカと地龍アースドラゴンの方へと進んでいく。

 みんなが慌てて着いてくるがお構い無しに突き進む。
 ある程度近づいた所で地龍に鑑定をかけて見るが、レベルどころか種族すら分からなかった。
 レベルが離れすぎていて、ほとんど何も分からないみたいだ。

 分からないと言ってもレベルは??であり、種族は地龍ではなくexecutiveと書いてあった。
 英語がダメなトウカにはどっちにしろ分からないのだった。

「えー、エクスキューティブ?なにこれ…なんもわかんないの…?」

 何もわからなくて少し落ち込んでしまい、気をつけろと言われていたのに注意を怠ってしまう。

 その時、みんながトウカの名前を叫んだ。

「「「トウカ!!」」様!!」

 なんだろう?

 そう思ってふと前を見ると、すぐ目の前に地龍が迫っていた。
 地龍は右前脚を高く上げてトウカを爪で引き裂こうとしている所だった。

「ひっ…」

 殺される!?

 そう思ったが目の前の凶悪な顔をした地龍を目の前にして、体が動かなくなる。
 声をあげようにも恐怖で声帯が閉じてしまい息だけが吐き出される。

 さらに恐怖により腰が抜けてしまった。
 もう駄目だ。そう思って目を瞑る。


 ガンッ

 そんな音が聞こえた。
 どうやらまだ生きているみたいだ

 何が起きたんだろう。
 そう思って目を開けると、そこには意外な人がいた。

 ランスロットだ。
 ランスロットが地龍の強烈な攻撃を辛そうにだが自慢の大きな盾で受け止めていた。

「ぐっ…これぐらいなんの…!」


『GURRRRRRAAAAA』

 地龍は殺すつもりで行った攻撃を意識していなかった別の人物に受け止められた為か、とても大きく吠える。
 恐らく怒っているのだろう。
 その吠えた時の声の大きさは一瞬、鼓膜が破れたのではないかと思ったほどだ。

 さらに、攻撃を受け止めたランスロットに対して何度も爪で斬りかかる攻撃を繰り出している。
 やはりその攻撃の1つ1つが強烈なのだろう。
 1撃受ける度に地面に足を擦る跡を残し、少しずつ押されている。

「【光魔法】フィジカルアップ。」

――フィジカルアップ
相手の攻撃力、防御力を割合で上昇させる。——

 そんな女性の声が聞こえたと思ったら、ランスロットを赤い光の様なものを纏った。
 依然、辛そうな事に変わりは無いが、ランスロットが押されることは無くなった。

 ジャンヌが身体強化系の魔法をかけたみたいだ。


「よくやった。ランスロット。」

「ガハハハハハ!悪いな!油断した!」

「【神聖魔法】ハイヒール。】」

 アーサーとジークがトウカ達の前に立ち、ジャンヌは後ろからランスロットへと回復魔法をかける。

「トウカ様!!お怪我はありませんか!?」

 アーサーは陣形を取るとまずトウカの心配をする。

「あ…うん…ありがとう。」

 トウカの無事が確認できるとニコッと微笑み、地龍と相対し、地龍を警戒しつつ皆んなに指示を飛ばす。

「ランスロット!そのままトウカ様を守りつつ後退しろ!!」
「ジャンヌは援護を!ジーク!好きに暴れろ。」
「ランスロットが攻撃を受けるのに苦戦していたんだ。相手はこれまでの地龍とは違うと思え!」

「「「了解!!」」」

 攻撃でこのメンバーの中でも一番の防御力のあるランスロットを後ろに下げる攻撃力を持つ上、すぐ近くにいた高レベルな他のメンバーが集まる極短期間の間に何度も攻撃を繰り出す巨体に似合わない素早さを持っている。
 みんなが反応すらできなかった中で最初にランスロットが攻撃を受け止められたのは奇跡だ。


『GURRRRRRAAAAA』

 地龍が先程まで押していた自慢の爪での攻撃を後ろに下がることなく受け止められる様になった上、ぞろぞろと人が集まってきた事により、さらに大きく吠える。

 そしてアーサーの雰囲気が変わる。

「このトカゲ風情が・・・」

 冷静に見えたが物凄く怒っている。
 その表情はいつもと違って怖かった。


「トウカちゃんはこっち。」

 いつもとは違うキリッとしたランスロットに手を引かれ連れられて、安全な場所まで下がる。
 そして、ランスロットは大きな盾を持ち、トウカの前へ立って守る。

 先ほど助けられたこともあり、不覚にもちょっとかっこいなと思ってしまった。

「でもやっぱりトウカちゃんは可愛いねぇ。」

 訂正。やっぱりキモかった・・・
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