甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー

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一章 私の居場所

6 宿

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白い虎の戦士に抱えられた桃と、その隣を時折小走りでついてくる金髪の犬族の少年。旅の道中、ベンとフィンは終始険悪な雰囲気を漂わせていた。

「おいベン、その雌本当に獣人か?『人間』 すぎないか?あとこの甘ったるい匂いやべぇだろ。正直、理性保つのが大変だ。よくそんな至近距離で涼しい顔してられるな…」
「黙れフィン、雌じゃない。桃だ。桃は………耳と尻尾のない…多分サルかリスだ!」
「いやいやいや、無理あるって」

その会話を聞きながら、桃は居心地の悪さを感じていた。サルにもリスにも見えないって私何!?この世界の未確認生物なの?UMAなの??オカピーなの?

「フィンくん、ベンさん。あの……迷惑かけてごめんなさい」
「迷惑なんてかけられていない。もっと頼れ、そしてもっと食べろ。お前はか弱すぎる。」

桃がそっと囁くと、ベンは食い気味で即答、フィンは目を丸くし、

「……ッ、(雌が謝るなんて…)チッ、面倒な女だぜ!桃は守られてればいいんだよ!」

フィンはそう吐き捨てた。



日が暮れてきた頃、ちょうど出発地点から、賢者の森のちょうど半分のところの街に着いた。

「今日はここの街の宿で休もう」
「ふぅー、やっとか。こんなスピードで移動したのはじめてだ…」
「よく着いてきたな。フィン。明日はもっと飛ばすぞ」
「2日かかるって言ってたよな!?普通馬族でも1週間はかかる距離だぞ?しかももっとスピード上げるって…半日削ってんじゃねーよ!!」

フィンがギャーギャー文句を言っているが、息切れすらせず、ベンに着いて来れている時点でフィンもただの犬族の孤児ではないことが見て取れる…


桃がベンの腕の中から見た街は、そこそこ栄えていて、整備されていた。本で見たヨーロッパの街並みのようだった。もう、日が暮れていて店は酒屋が何軒かしか空いていないが、昼はどんなに活気があるのだろうと、想像できるような活気のある街だった。

「この宿にしよう。桃、絶対に声を出すな、フードを深くかぶれ…よし、入るぞ」
「ここか!おおー、宿なんてはじめてだぜ!」

深いフードの中からでもフィンがブンブン尻尾を振っているのが見えて、思わず笑みが溢れた。
ベンは小鳥の囀り亭という、こじんまりした綺麗めの宿を選んだ。

「いらっしゃいっぴよ!」
「2部屋1泊。ひとつはベッドが二つの部屋にしてくれ」
「申し訳ないっぴ、もう大部屋一部屋しか空いていないピヨ」
「…わかったじゃあそれで…あと夕食と明日の朝食もつけてくれ」
「了解ぴよ~じゃあ食事付きで銀貨2枚と銅貨6枚ぴよ」

ベンは財布からお金を取り出し小鳥の店主に払った。

「まいどぴよ~部屋は203号室ぴよ夕食は部屋までお届けするピヨごゆっくりぴよよーん」

ベンは鍵を受け取り、3人で部屋に向かった。


部屋に入り、バタンと扉を閉めるベン。

「うひょー!!ベッドだ…何年振りだろ…」
フィンがテンション高めになっている。

一方でベン…窓や鍵を徹底して閉めて、カーテンをして…

ーーーなにしてるんだろ…


「よし、確認した。桃、もう喋っていいぞ。ローブも脱いでいい。」

自分を守る為確認していたと知って心が熱くなる。
ふぅ…と安堵の息をついてローブを脱ぐ。

「ふぁーーー!つっっっ…かれたー!」
ローブを脱ぎ捨てた桃は思いっきりベッドにダイブした。
「よく頑張ったな。もうすぐで食事が来るはずだ、それまでゆっくりしてるといい」

「お前、そんなキャラだったのかよ…にしても…野暮ったいローブでわかんなかったが、お前絶対人間だろ!!こんな美人な獣人存在するわけねぇよ!しかも雌ってやべーだろ。戦争起きるよまじで」
「黙れフィン…だから今強い夫を増やす旅中なんだ。お前も早く強くなれ」
「…俺も夫になれるのか…?」
「どうなんだ?桃」

この時桃は半分寝ぼけていて内容をほとんど聞いていなかった。

「ふぇ?…うん…」

「良かったなフィン。お前も夫だ。」
「おう!…でもなんかこいつ寝ぼけてないか?」
「…発言に責任を持つべきだ。」
「そ、そうだよ…な」

こうして、桃に2人目の夫が誕生したのだった。
(この後、フィンが夫になったことを聞いた桃は、まぁ~フィンくん可愛いからいっか♡尻尾と耳触らせてもらお~♡と案外あっさり受け入れたとさ…)

(俺…男として見られてないのか…)
(フィン…強くなれ)

食事を済ませた3人はその日眠りについた。



翌朝

桃は目を覚まし、まだ眠たげに体を伸ばす。隣では、少し窮屈そうに丸まって寝ているフィンの姿があった。子犬のように無防備なその寝顔に、桃は小さく微笑む。

「お……おはよう、フィンくん」
「ん、……おはよ」
まだ寝ぼけているフィンに桃はいたずらをすることにした。
「フィンくん。お耳触らせてくれない?」
「ん~…いーよ」
「ありがとっ!」

桃はワクテカ顔でフィンのふわふわの犬耳に手を伸ばした。

さわっ、

「んんっ…」

さわさわさわ

「うっっ…んんっ…あっ!ん、」

フィンの少し卑猥な声に、なんだか悪いことをしている気分になってくる…でもこの手触り…最高

「フィ、フィンくん…?その、尻尾も触らせて、くれない?」

「…ん…」

「じゃあ、触るね…?」

背徳感に包まれ、でももふもふの誘惑に勝てず、ドキドキしながらゆらゆら揺れている尻尾へ手を伸ばしたその時

「もーも、そこまでだ」
耳元で低い艶やかな声が響いた。
「うきゃあっっっ!!!」
驚いて発した桃の奇声にフィンも目覚めた。

「うわっ!!なに??」

「桃が寝ぼけてるお前の耳を触っていた。尻尾まで触ろうとしていたから止めてやったぞ」
「え、ええ!?ちょ、桃!?何してんだよ。」
「だ…だってぇ、そこに、もふもふがあったから…」
「何、登山家みてぇなこと言ってんだよ!」
「?この国にも登山家いるの?」
「いるぞ、ユキヒョウ族のジョージア・マロニーの名言だろ?」
「あ、そ、そうなんだ?」
「そんなことより!お前、尻尾触るとか襲われてぇのか!?」
「え?なに?どういうこと?」
「桃、獣人にとって、耳や尾は性感帯だ」
「うっそーーーー!!!ほんっっとごめん、フィンくん、ごめんね?あまりにも可愛くてさ、もふもふ…」
「べ、別に……寝ぼけてて覚えてねぇからいいよ。で、でも!俺以外にはやんなよ?……もうちょい落ち着いたら思う存分触ってくれても構わねーから(小声)」

「ん?最後なんか言った?」
「な、なんでもねーよ!桃のばーか」
「はー?なによ!バカっていう方がバカでしょ!」
「うるせーばかばかばーか」
「むきーーー!!」
「じゃれあいもその辺にしとけ。俺は食事をとりに行ってくるからフィン、頼んだぞ。あと、桃、準備しとけ」

「「はーい」」

微笑ましい年下組の様子を見てベンはささっと食事を取りに行った、

3人はささっと食事と準備を済ませ、(今日は桃のあまりをフィンが食べました。)宿を後にした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


次回狼さん登場します!お楽しみに~


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