竜王陛下の愛し子

ミヅハ

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甘ったるい※(微)

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 ルカが竜族になってから一週間が過ぎた。つまりはもうベッドから出る事が可能になった訳だが、忙しいはずのレイフォードはしょっちゅうルカの様子を見に来るし散歩には必ず同行する。
 本当の番になってから過保護が増している気がして、ルカは嬉しいような照れ臭いようなもじもじする気持ちを抱いていた。
 それからもう一つ。

「⋯ん、ゃ⋯レイ⋯」
「ん?」
「もうや⋯⋯これいじょ、は⋯」
「⋯触っていいか?」
「だ、だめ⋯っ」

 また一緒に寝るようになり、額や頬には唇で触れてくれるレイフォードに我慢出来なくなったルカが三日目の夜に口付けてから舌を絡めるようなキスをまたするようになったのだが、どうしてもルカの下肢が反応してしまいそのたびにレイフォードは手で治めてくれていたのだ。
 最後までしないのはルカの体調や体力を考慮してくれているからだというのは分かるが、ルカはそれが不満だった。

「このままだと辛いだろう?」
「大丈夫⋯ほっとけばいつか小さくなるから⋯あっ」
「出した方がスッキリする」
「ゃ、ん⋯っ⋯レイだって、おっきくなってるくせに⋯っ」
「私はいい。ほら、こっちに集中して」
「ん、ん⋯っ」

 触らなくていいって言ってるのに、レイフォードはどうしてもルカを気持ち良くしたいのか隙をついて刺激してくる。そうなるともう抵抗も出来なくて、ルカは追い上げられるままに達した。
 余韻で震えている間に身綺麗にされ服を整えられる。

「いい子だ。さぁ、そろそろ寝ようか」
「⋯俺も、レイの触りたい⋯」
「また今度」

 このやり取りもここ数日の当たり前になっていた。
 ぶすくれながらも大きな手に髪を撫でられれば心地良さで目蓋が重くなり、ルカはものの数分もすれば寝息を立て始める。
 それを見て深く息を吐いたレイフォードは、痛いくらいに張り詰めている自身に眉を顰めると目を閉じて無理やり寝る体勢に入った。
 この凶悪なものは、まだ出してはいけない。



 朝、目が覚めて一番最初に見えるのは綺麗な寝顔だ。
 最近はルカの方が早起きで、今は身動ぎ一つせずレイフォードの眠る姿を見る事が日課になっている。

(よく寝てるなぁ)

 竜族になる前はレイフォードの方が先に起きている事の方が多かったが、ここまで熟睡してくれると一緒に寝ている身としては嬉しい限りだ。だって、それほど安心してくれているという事だから。
 閉じられた目蓋から生える長い睫毛をじっと見ていたら、腰に乗っているだけだった腕が背中を抱き寄せ薄い唇が額に触れた。

「おはよう、ルカ」
「おはよ、レイ」

 腕枕をしていた方の手が頭を撫で唇が目蓋から頬に滑り、最後に首筋へと口付ける。

「ん⋯擽ったい」
「ルカは相変わらず良い匂いがするな」
「それはレイだろ? 俺、レイの匂い好き」

 痕をつけるでもなく、戯れのように啄まれゾワゾワとした感覚が背筋を這い上がる。
 ソフィアが使う香油以外に自分が匂うようなものはつけてなくて、緩く頭を振ったルカはレイフォードの首に腕を回すと彼の耳の後ろを嗅いだ。そこは番同士だけが感じる事の出来るフェロモンが発せられる場所なのだが、ルカはそれを良い匂いだと認識しているらしい。
 それはレイフォードにとって何よりも嬉しい事だった。

「ずいぶんと可愛らしい事を言ってくれる」
「だって本当の事だし」
「ルカが良い匂いなのも本当の事だがな」
「⋯⋯自分じゃ分かんないや」

 腕を鼻に寄せ匂いを嗅ぐがまったくもって分からない。諦めてレイフォードに擦り寄ると頬にキスされた。

「そろそろソフィアが来る時間だが…離れ難いな」
「またすぐ会えるのに?」
「私は、ルカをずっとこの腕の中に収めておきたいんだよ」
「俺はクマのぬいぐるみか」
「それほど愛くるしくはあるが、ルカでないと意味がない」

 どういう事だと見上げると、ふっと笑って上体を起こしたレイフォードが覆い被さってきた。梳くように前髪が撫で上げられ露わになった額に唇が触れる。

「抱き返して貰えないと悲しいからな」
「それは確かに⋯」
「ルカの可愛らしい手が私に触れないなど耐えられない」
「何言って⋯」
「ルカ」
「ん」

 起きてからずっと空気が甘い。
 レイフォードの声も表情も言葉も触れる手も、全部が甘すぎて戸惑っていると殊更に優しく名前が呼ばれ口付けられた。
 長い指が肩から腕を滑って手まで辿り指を絡めるように握られる。
 触れるだけで離れたが、朝から甘味をドカ食いしたかのような甘ったるさが口の中に広がり、ルカは空いている方の手で口元を隠した。

「ま、まだ口、濯いでないのに⋯」
「だから舌までは入れていないだろ?」
「そういう事じゃなくて⋯」
「ん?」

 言いたい事が伝わっていなくて、絡まった指を握り返しながら首を振ると器用に片眉を跳ね上げる。
 口付けは好きだけど、それにはもう絶対付随して欲しい事があった。

「俺が舌くっつけるの好きだって知ってるくせに⋯」
「⋯⋯はぁ⋯」
「な、何⋯?」

 口を隠していた手でレイフォードの襟元を摘み、少しだけムッとして言うとどうしてか盛大な溜め息がつかれルカの上に倒れてきた。背中が浮くくらいぎゅっと抱き締められたと思ったら、鎖骨のあたりを思いっきり吸われて思わず声が漏れる。

「ルカはもう少し、自分の言葉が如何に私を刺激するかを考えた方がいい」
「ん⋯何⋯」
「私は、悪い大人だからな」

 首や肩周りに何度もチクリとした痛みが走りルカの息が上がる。
 レイフォードの言葉の意味が分からずにただされるがままのルカは、ソフィアが扉をノックするまで彼のものだという印を付けられまくっていた。
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