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第1章 どこか見覚えがある国に飛ばされました。
第4話 親切なお爺さんに話を聞く
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金策の当てが外れて、ガックリと項垂れる由紀たち。
こうなったら、米の露天販売でも始めようかとも思ったが、そもそも人が歩いていない。
もうお昼になるのに駅前で人っ子一人いないのはどうなんだと由紀が思っていると、
「おやおや、小奇麗なお嬢さんたちがこんな田舎でどうされた。なんぞ、お困りですか?」
と声がかけられた。
由紀が顔を上げると、訪問着らしき和服を着て、杖をついた品の良さそうな老人が目の前にいた。
老人は白髪交じりの髪に、丸眼鏡をかけて好々爺とした笑みをたたえていた。
桜子が、老人に警戒しつつも、
「はい、少々訳ありで、質屋で少し金策を考えていたのですが、ご覧のとおり今日は休みのようで困っていたところです。」
桜子の言葉に対し、老人はすこし驚いた表情を見せ、
「お嬢さん、貴族の娘さんじゃろう?正月早々、質屋で金策なんて、本当に訳ありなんじゃな。
どうだろうか、お嬢さんが質草にしようとしたもの、私が買い取らせてもらってもよろしいかな。
わしの家は、この辺りで代々庄屋を任されてきた家でな、百姓だけどそれなりに金子は蓄えてる。
貴族様の持ち物なんて、百姓には金では買えない物ばかりじゃて、少し色をつけるよ。」
「いえ、貴族の娘ではありませんし、質草と考えてたのは数物の食器ですよ。」
「訳ありなんだろうから、深くは聞かんよ。
ただ覚えておきなされ、昨今、平民の娘はそんな生地も仕立ても良い服は着ておらんよ。
そっちの小さいお嬢さんは、あんたのお付きの下女かね。
服装を見ると生地も仕立ても貴族様のものほどじゃないけど、まだ新しくてどこも擦れてない。
流石に貴族様の奉公人って感じがするね。
身分を隠したいのじゃったら、もう少しみすぼらしい格好をせにゃ。
で、質草を見せてもらえるかね?」
桜子は、由紀に視線を向けうなずく、由紀はザックから取り出す振りをしてティーカップを一客腕輪から実体化した。
それを、目の前の老人に手渡す。
「おお、これは舶来物のティーカップか。
白磁で表面の透明感がある輝きがいいのう。
これは、おそろいのティーポットはあるのかな。あとカップは全部で何客ある。」
由紀は、ティーポットがあることとカップは十客あることを告げた。
「そうか、そうか、良ければ五十圓で買い取るがどうじゃろう?
もし、それで良ければ、これからうちに来てもらえんか?
代金の支払いと品の受け渡しをしようじゃないか。」
老人の申し出に対し、桜子は問い返した。
「申し訳ないが、五十圓という価格は、貨幣価値としてはいかがなものだろうか?
正直なところ、私が常識がないのは自覚しているんだが、判断ができないので教えて欲しい。」
「こりゃたまげた!本当に箱入りのお嬢様なんじゃな。
貴族の娘さんでも、物の値段も分からんと悪いやつに騙されるよ。
この間、新聞で見た去年の大卒初任給の平均が七十三圓って書いてあったよ。
だいたい、その六割七分といったところだから、悪くない値付けだと思うよ。」
桜子は、由紀に視線を送りお互いに肯いた後、
「わかりました、それでお売りしましょう。」
と老人に返事をした。
老人は、満面の笑顔で、
「じゃあ、我が家に来ていただきましょうか。
いやあ、今年は正月から珍しいお客さんを迎えられるし、珍しい物も手に入るしで、めでたいな。」
といって、上機嫌で笑った。
十五分ほど歩いただろうか、由紀の目の前には、ひときわ大きな藁葺屋根の日本家屋があった。
まさに、お屋敷といった感じである。
引き戸の玄関にはガラスが使われており、広い土間の先の上がり待ちの板の間には、金箔張りの屏風が置かれていた。
土間に入った老人が奥に声をかけると、「お帰りなさいませ。旦那様。」といいながら奥から老婆がでてきて老人からコートを受け取った。
「お客様におもてなしの準備を頼む。」と老人が指示すると、「承知しました。」と老婆は答えて奥へ下がった。
老人は由紀たちに、座敷に案内し、座布団を勧めると床の間を背に座り、
「たいしたおもてなしもできないで悪いね。
本来は、住み込みの奉公人もいるんだけど、皆帰れる範囲から来てるので、正月は帰省させているんだ。
今日は、この家はわしと婆やだけなんだ。
もてなしの準備ができる前に、取引を済ませてしまおう。
金子を用意するので、卓の上にティーセットを出しておいてくれないかい。」
といって老人は襖の奥に引っ込んでしまった。
由紀は、桜子に指示されて卓上にティーポットとカップアンドソーサー十組を並べた。
手提げ金庫をぶら下げて戻って来た老人は、元居た位置に座り由紀が出したセットを一つ一つ手にとり丁寧に観察した後、
「素晴らしい。傷一つ見当たらないし、絵付けのミスも見られない。
五十圓と言ったのは訂正しよう。これなら、百圓で買い取ろうではないか。
それに、お嬢さん達は何やら訳ありの様だし、特別に正貨で買い取ろう。」
と言って、目の前になにやら金貨を積み出した。
二十圓金貨が四枚、五円圓貨が二枚、一圓札が四枚、五十銭玉が十枚、十銭玉が十枚で合計百圓となった。
由紀が老人の意図がわからず、
「この支払い方に意味があるのですか?」
と思わず尋ねた。
「お譲ちゃんの年頃では知らないだろうけど、今この国は大変危険な綱渡りをしているんだよ。
外国に戦争を仕掛けて諸外国から爪弾きにされて、世界連盟という機関から脱退してしまったんだ。これが、一昨年の話。
つい先月だって、軍縮条約を一方的に破棄してしまった。
景気が悪いのに軍事費はかさんで、国庫は底をつきそうな状態なんだ。
一方で、東北の方は冷害でここのところ凶作が続いていて、娘を売りに出さなければやっていけない状況なんだ。
要は、国が傾き始めているんだ。傾いた国の貨幣価値なんかあっという間に目減りするからね。
だから、この金貨だよ。これは、正貨と言って本来貿易に使われるものだけど、こっそり溜め込んでおいたんだ。
金の価値は、国際相場があるから、この国の通貨価値が下落しても金の価値は残るから。
お譲ちゃんたち、何か訳ありで、しかもお金を持ち合わせていないんでしょう。
だから、目減りしない正貨で払ってあげようかと思ってね。
でも、普通の店では正貨は使わないから、十圓分は紙幣と硬貨にしたんだ。
当面は十圓くらいあれば事足りるかと思うから。
お金が足りなくなったら、銀行へ行けば正貨を紙幣に両替してくれるさね。」
話を理解した由紀たちは老人に感謝し、
「色々、ご配慮いただき感謝します。
申し送れましたが、私は華小路桜子と申します。
横に居るのが、連れの山縣由紀(ゆき)にございます。
この度は、至らぬ点をご教授いただき有難うございました。」
と桜子が自己紹介を兼ねてお礼を述べた。
由紀を女性として紹介したのが気になったが、何か考えがあるのだと思い由紀は黙っていた。
「華小路さんとは、もしかして小石川の華小路子爵家のお嬢様ですか?」
と、今度は老人が驚きを露わにして訊いた。
「あら、小石川の本宅をご存知でしたか?」
「ええ、もう五十年以上めのことですが、小石川にある帝都高等師範学校に通っていたので、子爵邸の前は良く通りました。
わしも、若いころは帝都にあこがれていて、本当は帝都大学に行きたかったんですが、庄屋ごときに払える学費じゃなくて、学費が無償の高等師範に行ったんですわ。
華小路家の姫様にお目通りがかなうとは思っても居ませんでした。
あ、失礼。まだ名乗っても下りませんでしたな。
わしは、山本耕作と申しこの辺りの庄屋をやっております。
といっても、わしは、定年まで松山中学と川越中学で教鞭をとっていました。
家業は分家に丸投げで、差配するだけの名ばかり庄屋ですがね。」
そこへ、昼食の用意ができたと老婆が声がかかり、由紀たちはおもてなしを受けることになった。
昼からお酒が入ってご機嫌の山本翁が饒舌になったので、桜子は思い切って身の上を打ち明けてみることにした。
「山本翁、実は聞いてもらいたいことがあるのだが良いだろうか?」
「姫様のお話を聞かせていただけるのであれば、この老いぼれには光栄なことですが?」
「実は、私の家は確かに小石川にあり華小路子爵と呼ばれていた。
だが、それは私の生まれる五十年以上昔のことなんだ。
私と由紀は、初日の出を見に山を登ったのだが、途中で道に迷ってここに着いたんだ。
どうも、ここは元々私達が居た場所とは違うようなのだ。
私たちのいた国は、八十年前に世界を相手に戦争をして負けて、身分制度のない平等な社会になったのだ。
だから、絵空事のようだが、八十年以上前に迷い込んだのかと思ったが、それも違うようなのだ。
だって、八十年前まで、私の家は華族と呼ばれていたが、貴族という呼称はしていなかったし、帝都に住める人間が限定されているという話も聞かなかったのだ。
ここは、いったいどこなのか?
もし良かったら、この社会のことを色々と詳しく教えてはくれないだろうか?」
山本翁は、半信半疑であったが、由紀が機転を利かせて出したお金(紙幣、硬貨、しっかり日本国という国名と年号が書いてある)と生徒手帳(由紀の学校はこの国には存在しないらしい)をみて、桜子の話を信じてくれたらしい。
由紀たちは、数日の間、山本翁の許に滞在し、この社会の常識や情勢について教授を受けることとなった。
こうなったら、米の露天販売でも始めようかとも思ったが、そもそも人が歩いていない。
もうお昼になるのに駅前で人っ子一人いないのはどうなんだと由紀が思っていると、
「おやおや、小奇麗なお嬢さんたちがこんな田舎でどうされた。なんぞ、お困りですか?」
と声がかけられた。
由紀が顔を上げると、訪問着らしき和服を着て、杖をついた品の良さそうな老人が目の前にいた。
老人は白髪交じりの髪に、丸眼鏡をかけて好々爺とした笑みをたたえていた。
桜子が、老人に警戒しつつも、
「はい、少々訳ありで、質屋で少し金策を考えていたのですが、ご覧のとおり今日は休みのようで困っていたところです。」
桜子の言葉に対し、老人はすこし驚いた表情を見せ、
「お嬢さん、貴族の娘さんじゃろう?正月早々、質屋で金策なんて、本当に訳ありなんじゃな。
どうだろうか、お嬢さんが質草にしようとしたもの、私が買い取らせてもらってもよろしいかな。
わしの家は、この辺りで代々庄屋を任されてきた家でな、百姓だけどそれなりに金子は蓄えてる。
貴族様の持ち物なんて、百姓には金では買えない物ばかりじゃて、少し色をつけるよ。」
「いえ、貴族の娘ではありませんし、質草と考えてたのは数物の食器ですよ。」
「訳ありなんだろうから、深くは聞かんよ。
ただ覚えておきなされ、昨今、平民の娘はそんな生地も仕立ても良い服は着ておらんよ。
そっちの小さいお嬢さんは、あんたのお付きの下女かね。
服装を見ると生地も仕立ても貴族様のものほどじゃないけど、まだ新しくてどこも擦れてない。
流石に貴族様の奉公人って感じがするね。
身分を隠したいのじゃったら、もう少しみすぼらしい格好をせにゃ。
で、質草を見せてもらえるかね?」
桜子は、由紀に視線を向けうなずく、由紀はザックから取り出す振りをしてティーカップを一客腕輪から実体化した。
それを、目の前の老人に手渡す。
「おお、これは舶来物のティーカップか。
白磁で表面の透明感がある輝きがいいのう。
これは、おそろいのティーポットはあるのかな。あとカップは全部で何客ある。」
由紀は、ティーポットがあることとカップは十客あることを告げた。
「そうか、そうか、良ければ五十圓で買い取るがどうじゃろう?
もし、それで良ければ、これからうちに来てもらえんか?
代金の支払いと品の受け渡しをしようじゃないか。」
老人の申し出に対し、桜子は問い返した。
「申し訳ないが、五十圓という価格は、貨幣価値としてはいかがなものだろうか?
正直なところ、私が常識がないのは自覚しているんだが、判断ができないので教えて欲しい。」
「こりゃたまげた!本当に箱入りのお嬢様なんじゃな。
貴族の娘さんでも、物の値段も分からんと悪いやつに騙されるよ。
この間、新聞で見た去年の大卒初任給の平均が七十三圓って書いてあったよ。
だいたい、その六割七分といったところだから、悪くない値付けだと思うよ。」
桜子は、由紀に視線を送りお互いに肯いた後、
「わかりました、それでお売りしましょう。」
と老人に返事をした。
老人は、満面の笑顔で、
「じゃあ、我が家に来ていただきましょうか。
いやあ、今年は正月から珍しいお客さんを迎えられるし、珍しい物も手に入るしで、めでたいな。」
といって、上機嫌で笑った。
十五分ほど歩いただろうか、由紀の目の前には、ひときわ大きな藁葺屋根の日本家屋があった。
まさに、お屋敷といった感じである。
引き戸の玄関にはガラスが使われており、広い土間の先の上がり待ちの板の間には、金箔張りの屏風が置かれていた。
土間に入った老人が奥に声をかけると、「お帰りなさいませ。旦那様。」といいながら奥から老婆がでてきて老人からコートを受け取った。
「お客様におもてなしの準備を頼む。」と老人が指示すると、「承知しました。」と老婆は答えて奥へ下がった。
老人は由紀たちに、座敷に案内し、座布団を勧めると床の間を背に座り、
「たいしたおもてなしもできないで悪いね。
本来は、住み込みの奉公人もいるんだけど、皆帰れる範囲から来てるので、正月は帰省させているんだ。
今日は、この家はわしと婆やだけなんだ。
もてなしの準備ができる前に、取引を済ませてしまおう。
金子を用意するので、卓の上にティーセットを出しておいてくれないかい。」
といって老人は襖の奥に引っ込んでしまった。
由紀は、桜子に指示されて卓上にティーポットとカップアンドソーサー十組を並べた。
手提げ金庫をぶら下げて戻って来た老人は、元居た位置に座り由紀が出したセットを一つ一つ手にとり丁寧に観察した後、
「素晴らしい。傷一つ見当たらないし、絵付けのミスも見られない。
五十圓と言ったのは訂正しよう。これなら、百圓で買い取ろうではないか。
それに、お嬢さん達は何やら訳ありの様だし、特別に正貨で買い取ろう。」
と言って、目の前になにやら金貨を積み出した。
二十圓金貨が四枚、五円圓貨が二枚、一圓札が四枚、五十銭玉が十枚、十銭玉が十枚で合計百圓となった。
由紀が老人の意図がわからず、
「この支払い方に意味があるのですか?」
と思わず尋ねた。
「お譲ちゃんの年頃では知らないだろうけど、今この国は大変危険な綱渡りをしているんだよ。
外国に戦争を仕掛けて諸外国から爪弾きにされて、世界連盟という機関から脱退してしまったんだ。これが、一昨年の話。
つい先月だって、軍縮条約を一方的に破棄してしまった。
景気が悪いのに軍事費はかさんで、国庫は底をつきそうな状態なんだ。
一方で、東北の方は冷害でここのところ凶作が続いていて、娘を売りに出さなければやっていけない状況なんだ。
要は、国が傾き始めているんだ。傾いた国の貨幣価値なんかあっという間に目減りするからね。
だから、この金貨だよ。これは、正貨と言って本来貿易に使われるものだけど、こっそり溜め込んでおいたんだ。
金の価値は、国際相場があるから、この国の通貨価値が下落しても金の価値は残るから。
お譲ちゃんたち、何か訳ありで、しかもお金を持ち合わせていないんでしょう。
だから、目減りしない正貨で払ってあげようかと思ってね。
でも、普通の店では正貨は使わないから、十圓分は紙幣と硬貨にしたんだ。
当面は十圓くらいあれば事足りるかと思うから。
お金が足りなくなったら、銀行へ行けば正貨を紙幣に両替してくれるさね。」
話を理解した由紀たちは老人に感謝し、
「色々、ご配慮いただき感謝します。
申し送れましたが、私は華小路桜子と申します。
横に居るのが、連れの山縣由紀(ゆき)にございます。
この度は、至らぬ点をご教授いただき有難うございました。」
と桜子が自己紹介を兼ねてお礼を述べた。
由紀を女性として紹介したのが気になったが、何か考えがあるのだと思い由紀は黙っていた。
「華小路さんとは、もしかして小石川の華小路子爵家のお嬢様ですか?」
と、今度は老人が驚きを露わにして訊いた。
「あら、小石川の本宅をご存知でしたか?」
「ええ、もう五十年以上めのことですが、小石川にある帝都高等師範学校に通っていたので、子爵邸の前は良く通りました。
わしも、若いころは帝都にあこがれていて、本当は帝都大学に行きたかったんですが、庄屋ごときに払える学費じゃなくて、学費が無償の高等師範に行ったんですわ。
華小路家の姫様にお目通りがかなうとは思っても居ませんでした。
あ、失礼。まだ名乗っても下りませんでしたな。
わしは、山本耕作と申しこの辺りの庄屋をやっております。
といっても、わしは、定年まで松山中学と川越中学で教鞭をとっていました。
家業は分家に丸投げで、差配するだけの名ばかり庄屋ですがね。」
そこへ、昼食の用意ができたと老婆が声がかかり、由紀たちはおもてなしを受けることになった。
昼からお酒が入ってご機嫌の山本翁が饒舌になったので、桜子は思い切って身の上を打ち明けてみることにした。
「山本翁、実は聞いてもらいたいことがあるのだが良いだろうか?」
「姫様のお話を聞かせていただけるのであれば、この老いぼれには光栄なことですが?」
「実は、私の家は確かに小石川にあり華小路子爵と呼ばれていた。
だが、それは私の生まれる五十年以上昔のことなんだ。
私と由紀は、初日の出を見に山を登ったのだが、途中で道に迷ってここに着いたんだ。
どうも、ここは元々私達が居た場所とは違うようなのだ。
私たちのいた国は、八十年前に世界を相手に戦争をして負けて、身分制度のない平等な社会になったのだ。
だから、絵空事のようだが、八十年以上前に迷い込んだのかと思ったが、それも違うようなのだ。
だって、八十年前まで、私の家は華族と呼ばれていたが、貴族という呼称はしていなかったし、帝都に住める人間が限定されているという話も聞かなかったのだ。
ここは、いったいどこなのか?
もし良かったら、この社会のことを色々と詳しく教えてはくれないだろうか?」
山本翁は、半信半疑であったが、由紀が機転を利かせて出したお金(紙幣、硬貨、しっかり日本国という国名と年号が書いてある)と生徒手帳(由紀の学校はこの国には存在しないらしい)をみて、桜子の話を信じてくれたらしい。
由紀たちは、数日の間、山本翁の許に滞在し、この社会の常識や情勢について教授を受けることとなった。
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