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第3章 広く人材を集めよう
第22話 勧誘
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翌日、桜子は一旦家へ戻る楓を送っていった。
その際に、由紀が五十キロほどの米と、業務用のカレー缶その他の日持ちしそうな食料品を土産に持たせたら、楓は非常に喜んでくれた。
由紀は、桜子が不在の間に、もっと大人数が乗れて悪路を走れる車がないか、腕輪の中を検索していた。
軍用車は、多くの人を運べてもどれも三トン半トラックと似たり寄ったりであまり乗り心地は良さそうではない。
フェリーに乗っている車の中に、国内最大手メーカーの車でSUVの代名詞にまでなっている車種があるのに気付いた。
かつて、某国営放送のシルクロードの撮影に用いられたこの車種であれば悪路でも平気であろうと由紀は思った。
**********
その日、桜子が帰宅を待ち構えるように、由紀はSUVを実体化し、三トン半トラックのナンバープレートを取り外して、SUVに付け替えた。
もちろん違法である。しかし、この国ではまだ自動車が少ないせいか、ナンバープレートに車の種類を識別するような文字がないのでばれないだろうと踏んだのである。
そして、三トン半トラックを腕輪に収納した。
「なにこの自動車、どこから持ってきたの?凄いね、こんな自動車初めて見る。
ねえ、これからこの自動車で、女の子の勧誘に行くの?
私も、乗ってみたいな。ねえ、邪魔しないから私も連れて行って。」
翌朝、SUVを見た笙子が一緒に人員の勧誘に行きたいと言い出した。
どうやら、SUVに乗ってみたかったらしい。
結局、押し切られる形で笙子の同行を許したが、それを瑠璃が羨ましそうに見ていたのに由紀が気付き、最終的に四人で人員の勧誘に行くことになった。
今回はかなり山の中に入る予定であり、一、二泊かけて勧誘することになった。
「凄いこの自動車の椅子、凄く座りやすい。それに自動車ってこんなに乗り心地良かったんだ。
私今まで乗ったことなかったから知らなかった。」
この間、笙子は大はしゃぎであった。
由紀たちは、集落ごとに庄屋と見られる家に手土産を持って寄っては、昨年の作柄を聞いては近所に今年身売りに出されそうな娘がいないかを尋ねて歩いた。
手間と時間のかかる作業であったが、ぼちぼち身売りに出されそうな娘と行き当たった。
ただ、由紀たちは初対面の人間に信用してもらうことの難しさを痛感していた。
瑠璃の時だって最初は凄く胡散臭く見られたものを白河屋さんが口を利いてくれて何とか話を聞いてもらったんだっけと、由紀は思い出していた。
今、由紀の目の前にいるのは、瑠璃たちと同じ十四歳の少女を娘に持つ農家のお父さんだ。
「初対面のあんたにうちの娘を預からせて欲しいだと、小娘に何ができると言うんだ。
この集落にゃ、昔から懇意にしている口利きの人がいるんだ。
いざというときには、その人に頼るわ。」
「でも、その人に頼るとそちらにいる娘さんは娼婦になるんですよね。
私に任せていただければ、我が社できちんと研修して、きちんとした仕事ができるんですよ。
もちろん支度金も用意してますし、必要であれば当面のお米も差し上げています。」
「どこにそんな虫のいい話があるんだ。どうせ旨いこと言ってカラユキさんにでもするつもりだろう。」
そんなときに笙子が、
「由紀さんたちは悪い人じゃないよ。私も由紀さんたちにお世話になるんだ。
由紀さんは、病気の母を医者に見せてくれたし、うちの屋敷を借り上げてくれたんだ。
おかげで、私は身売りをしないで済んだんだよ。
それに、由紀さんの後ろ盾には帝都の貴族だっているんだよ。」
と援護射撃をしてくれた。
ここに由紀が現金を出したことで、話の流れが変わり娘を預かることに成功する。
結局、この娘の父親には、現金百圓と玄米百キロを支度金として置いていくこととなった。
この後も、しばしば、笙子と瑠璃は、由紀たちの人員勧誘に同行したが、うまい具合に援護射撃をしてくれるので、由紀たちは非常に助かっていた。
そして、六月下旬には予定より早く当初予定した二十名の人員確保に成功したのである。
その際に、由紀が五十キロほどの米と、業務用のカレー缶その他の日持ちしそうな食料品を土産に持たせたら、楓は非常に喜んでくれた。
由紀は、桜子が不在の間に、もっと大人数が乗れて悪路を走れる車がないか、腕輪の中を検索していた。
軍用車は、多くの人を運べてもどれも三トン半トラックと似たり寄ったりであまり乗り心地は良さそうではない。
フェリーに乗っている車の中に、国内最大手メーカーの車でSUVの代名詞にまでなっている車種があるのに気付いた。
かつて、某国営放送のシルクロードの撮影に用いられたこの車種であれば悪路でも平気であろうと由紀は思った。
**********
その日、桜子が帰宅を待ち構えるように、由紀はSUVを実体化し、三トン半トラックのナンバープレートを取り外して、SUVに付け替えた。
もちろん違法である。しかし、この国ではまだ自動車が少ないせいか、ナンバープレートに車の種類を識別するような文字がないのでばれないだろうと踏んだのである。
そして、三トン半トラックを腕輪に収納した。
「なにこの自動車、どこから持ってきたの?凄いね、こんな自動車初めて見る。
ねえ、これからこの自動車で、女の子の勧誘に行くの?
私も、乗ってみたいな。ねえ、邪魔しないから私も連れて行って。」
翌朝、SUVを見た笙子が一緒に人員の勧誘に行きたいと言い出した。
どうやら、SUVに乗ってみたかったらしい。
結局、押し切られる形で笙子の同行を許したが、それを瑠璃が羨ましそうに見ていたのに由紀が気付き、最終的に四人で人員の勧誘に行くことになった。
今回はかなり山の中に入る予定であり、一、二泊かけて勧誘することになった。
「凄いこの自動車の椅子、凄く座りやすい。それに自動車ってこんなに乗り心地良かったんだ。
私今まで乗ったことなかったから知らなかった。」
この間、笙子は大はしゃぎであった。
由紀たちは、集落ごとに庄屋と見られる家に手土産を持って寄っては、昨年の作柄を聞いては近所に今年身売りに出されそうな娘がいないかを尋ねて歩いた。
手間と時間のかかる作業であったが、ぼちぼち身売りに出されそうな娘と行き当たった。
ただ、由紀たちは初対面の人間に信用してもらうことの難しさを痛感していた。
瑠璃の時だって最初は凄く胡散臭く見られたものを白河屋さんが口を利いてくれて何とか話を聞いてもらったんだっけと、由紀は思い出していた。
今、由紀の目の前にいるのは、瑠璃たちと同じ十四歳の少女を娘に持つ農家のお父さんだ。
「初対面のあんたにうちの娘を預からせて欲しいだと、小娘に何ができると言うんだ。
この集落にゃ、昔から懇意にしている口利きの人がいるんだ。
いざというときには、その人に頼るわ。」
「でも、その人に頼るとそちらにいる娘さんは娼婦になるんですよね。
私に任せていただければ、我が社できちんと研修して、きちんとした仕事ができるんですよ。
もちろん支度金も用意してますし、必要であれば当面のお米も差し上げています。」
「どこにそんな虫のいい話があるんだ。どうせ旨いこと言ってカラユキさんにでもするつもりだろう。」
そんなときに笙子が、
「由紀さんたちは悪い人じゃないよ。私も由紀さんたちにお世話になるんだ。
由紀さんは、病気の母を医者に見せてくれたし、うちの屋敷を借り上げてくれたんだ。
おかげで、私は身売りをしないで済んだんだよ。
それに、由紀さんの後ろ盾には帝都の貴族だっているんだよ。」
と援護射撃をしてくれた。
ここに由紀が現金を出したことで、話の流れが変わり娘を預かることに成功する。
結局、この娘の父親には、現金百圓と玄米百キロを支度金として置いていくこととなった。
この後も、しばしば、笙子と瑠璃は、由紀たちの人員勧誘に同行したが、うまい具合に援護射撃をしてくれるので、由紀たちは非常に助かっていた。
そして、六月下旬には予定より早く当初予定した二十名の人員確保に成功したのである。
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