運命の糸の先に

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第31話

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 私たちはそれぞれの飲み物を楽しみながら、穏やかな時間を過ごしていた。

 カフェでしばらく話していると、健人が立ち上がった。

「じゃあ俺はここで」

 健人が微笑んでそう言った。

 その笑顔はどこか潔く、彼らしい爽やかさを帯びていた。

「もう行くの?」

 今の心地よい時間が終わってしまうのが少し残念だった。

「そろそろ友達探さないと」

 そうか、友達…

「今度は私たちが友達と会えるように協力するよ」

 ここまで連れてきてくれたから、今度は私が力になりたい。

「大丈夫だよ。俺には携帯があるしね」

 健人は冗談交じりに笑顔を見せた。
 それがまた彼らしい。

「もう。今日はいろいろありがとう。またね」

 私は健人に手を振りながら、微笑んで言った。

「うん。また会社でね」

 健人は軽く手を振り返して、あっという間にカフェを後にした。

「最後の最後まで爽やかなんだから」

 私は独り言のように呟いた。

 ふと瑞稀の様子が気になった。

 特に表情を崩しているわけではないのに、なんだか少し機嫌が悪そうに見えた。

 キャラメルマキアートの甘さが心を和ませてくれるけれど、その一方で瑞稀の態度が気になって、心が落ち着かない。

 しばらく様子を見ていたけれど、瑞稀はブラックコーヒーを飲むだけで何も話さない。

 普段通りといえばそうなのだけど、微妙に違うこの空気が気になる。

 気付かないふりをしてやり過ごそうとも考えたけれど、やっぱり耐えきれず、私は意を決して口を開いた。

「ねぇ、なんか怒ってる?」  

 少し不安を感じながら、恐る恐る尋ねた。

 もし私が何か気に障ることをしてしまったのだとしたら謝りたい。

「別に怒ってねぇよ」  

 瑞稀はすぐに答えたけれど、その声はいつも以上にぶっきらぼうだった。

 明らかに何かあるように思えて、私はさらに問いかける。

「でもなんか機嫌悪そうだよ?」  

 瑞稀の態度を見つめながら、少しでも本音を引き出せればと、穏やかに促す。

「昔からこんなだけど」  

 瑞稀は視線を逸らしながら短く答えた。

 その声には普段と違うトーンが感じられる。

「違うよ。瑞稀はぶっきらぼうで口数は少ないけど、ちゃんと優しいじゃん」  

 瑞稀の無骨なところも含めて、彼の良さをちゃんとわかっているつもりだった。

 瑞稀は黙ったまま何も言わない。

 …もしかして、

「私が迷子になったから怒ってるの?」  

 瑞稀がそんなことで怒らないとは思うけど、念の為…

「だから違うって」  

 瑞稀はやや強めの口調で否定した。

 その声に苛立ちを感じ取ったけれど、正直その理由がわからなくて、さらに困惑する。

「じゃあなんで?」  

 瑞稀は黙ったまま、口を開こうとしない。

「もういいよ。」  

 私は小さく溜息をついて、これ以上聞くのはやめようと思った。

 言いたくないみたいだし。
 私に対して怒ってもないみたいだし。

 その瞬間、瑞稀がぽつりと呟いた。

「…仲良いんだな」  

 その言葉に思わず戸惑い、瑞稀の顔を覗き込んだ。

「え?あ、健人と?」

 少し間抜けな声を出してしまった。

「あぁ」  

 瑞稀はカップに目を落としたまま答えた。
 何を言いたいのだろうか。

「そうだね。同僚だし、明るくていい子だよ。でも、急にどうして?」

 瑞稀の微妙な反応が気になって仕方がない。

「別に」  

 瑞稀はそっけなく答える。

 別にって感じでもないけどなぁ。
 その反応に少し考え込む。

「…あ、もしかして嫉妬してるの?」  

 からかうように言ったけれど、瑞稀が嫉妬なんて考えられな




「そうだよ」
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