俺様王子から逃げられない

2 森に倒れていたのは

いつもならすぐぴょこぴょこっと来てくれるのに今日は気づきもしない。どうしたのだろうと近づくことにした。リスは大きな木の奥で何かの周りを回っていた。生えている綺麗な花たちを踏まないよう避けながら近づいき、おーいリスーと声をかけると


「っうわっぁ、」


突然、足がなにかにひっかかった。

勢いのまま転びそうになり咄嗟に受け身をとろうとしたが、、まずい！下には友達になったリスがいる！
リスは怯えた表情をしてこちらをみていた。スローモーションに見えたその一瞬は、俺とリスの数々の思い出が湧き上がってきた。リスかもわからない生き物だったが、動物にしてはやけに表情が豊かだったな。
ぁあこのままお別れなんて嫌だ！！

そう思った瞬間
地面に着く前に誰かの腕が俺の腹に巻きついた。
その腕の力に流されるままその人の上に転んでしまった。



「っ、ぃってぇ、」

「っつう、、」　



思わず痛みからうめき声があがった。相手も同じようで、しばらくその人の腕の上で腹ばい状態になってしまった。目の前にはたくさんの雑草があり、地面に倒れていたことに気づいた。



「・・・おい、はやくどけ」

「っぅ、」




近くで聞こえた低めの声の持ち主を見ようと顔を向けると、顔がドアップで映し出された。思ったよりも顔と顔の距離が近かったのだ。



「ひっ！？」



びっくりして声もでない。2人で向かい合いながら倒れている状態だったのだ。向こうがチッと舌打ちをしたかと思うと、俺の腹の下にあった腕を引き抜き眉を顰めながら上体を起こした。


はっ！！それよりも、リスは！？リスはどうなった？！リスの安否を行おうと無理矢理意識を浮上させた。
上体を起こしぱっと振り向くと体をプルプル震わせながら涙ぐむリスがいた。潰さなかったことにほっと胸をおろし



「潰そうとしてごめんよぉ～」




と、精一杯の謝罪をこめながらそのプルプル震える体を掬い上げた。プルプル怯えてる姿も可愛い。落ち着けようと何度か真っ白なフワフワの体を撫でるとだんだん震えもおさまってきた。潰そうとした自分をゆるしてくれと懇願もこめながら、
今度美味しいパン持ってくるねっと。

そんなリスとの和やかな時間も束の間


「おい」


その一声で状況を思い出させられた。
そうだ俺は足をひっかけ俺のドジで転びそうになったところを助けてもらったのだ。
リスをそっと置き声の主を振り返った。


ｺﾞｸッ

思わず息を飲み込んだ。

そこにいたのは豪華な顔をした若い青年だった。風に靡く銀髪は先ほど倒れたせいか少し乱れているが、お手入れのされている綺麗な髪であり、瞳は青みがかった色をしていて陽の光を浴びるとキラキラ輝いて見える。スッと通った鼻筋や薄い唇は彫刻のように美しい造形だった。先ほどはパニックでなにも見えていなかったがこんなにも美しい人だったのか。

あわてて謝罪をしようと口を開いたが、言葉を発する前に片方の手で顎をガシッと掴まれてしまった。







「ご、ごめんなひゃい」