俺様王子から逃げられない

5 弱っているらしい

「大丈夫ですか、」


「・・うるせぇ、はやくいけ」




ここで置いてったら人間として最低な気がする。
あきらかにさっきまでの威勢が消え失せていた。


すみませんといいながら少しおでこに触れてみると、驚いた。明らかに体温が熱い。先ほど手を掴まれた時は気づかなかったが熱があるのかもしれない。熱があってもあんな力を出せるなんて、、、少し状態を起こしてやり池の水を掬って飲ませた。山から降りてくる川の途中に溜まったこの池は綺麗に透き通っている。おそらく人間が飲んでも害はない。

気づいてしまったが、足から血が出ている。絶対俺のせいだ、さっき転んだ時に石かなんかで切ってしまったのだろう。ずっと立たずに座っていたのもきっとこれが原因だ。もう一度すみませんと言いながらズボンをめくり、応急処置をした。



「すみません、しみるかもしれないです。」


「、、ぃ、っつ」



自分の服をちぎり池の水を吸い取って傷口に絞った。こんなに血が出ていたら痛いわけがない。なんでさっきは気づかなかったんだろう。水を絞った服で足をぎゅと結びこれ以上血が出ないよう止血した。



この辺で休めるところは古屋しかない。


こんな森の中いつ誰がくるかもわからないのにこのままここに放置するのは、、きっとそれこそまずい。
とりあえずオンボロの古屋に連れて行くことにした。





「あの、、、たてますか、？」



「は？なめてんじゃねぇよ」



そんな強がりも虚しく立てていない。まあ、痛みと熱で立てるわけがない。背負っていこうと思ったがあまりの体格差に無理だと判断し引きずってくことにした。



「ごめんなさい。引きずります、汚れてしまった服はあとで弁償するので今は大人しく引きずられててください」



「・・・いくらすると思ってる」



と、小さい声で呟いた。かと思えばチッと舌打ちをし、意識が朦朧としてきたのかゆっくり目を閉じていった。
きっと強い言葉を使っていたがかなり限界だったんだろう。それにしても、いくらすると思ってるという言葉が頭にこびりついて離れない。弁償するとか言ってしまったがそんな高いものなのだろうか、、


静かな森の中、綺麗な男を引きずっている異様な光景をみているのは動物たちだけだ。
とても綺麗に造形された顔立ちに上手く仕立てられている服そして、やけに威圧的で乱暴な言葉を使うこの男は一体何者なんだろう。



とりあえず古屋まで運べた。意識を失ったのか寝ているのかわからないが、簡易用のベッドに寝かせタオルをかけた。そっと顔に触れ熱を確認してみたがとても熱い。
池で汲んできた冷えた水をタオルに吸い取り少し絞ってからおでこに乗せた。

看病はとくいだ。小さい頃はよく体の弱い弟が風邪や病気にかかるので看病していた。熱はとても苦しいのを知っている。だから、小さな弟の手を握り大丈夫だからね、とよく声をかけていたもんだ。
弟は今頃何をしているのだろう。元気でいてくれてるのかな。



それにしても本当に綺麗な顔をしている。
口を開かなければモテる典型的なやつだな。眠っている姿は人形のようにもみえ、どうにも見惚れてしまう。先ほど服の隙間からチラッと見えてしまったが、しっかりと鍛えられている体は引き締まっていて少し憧れた。それはそうと、パン屋ということもあってあまり運動しない俺は少しヒョロヒョロで小柄だ。どうりでさっき手を振り払えなかったわけだ。



何度目かの濡れたタオルをおでこに置いた。しばらく時間が経ち、仕事が心配になってくる頃。
もう日も落ちかけていた。




すると顔についた長いまつ毛がフルフル震え、美しい青い目が開いた。