俺様王子から逃げられない

ダヨ

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10 目から水が...

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なんで。なんで。叩かれたのは俺じゃない。なのに涙が止まらない。とまれ。とまれ、こんな王族の前で泣いていいはずがない。


「すまない。配慮が足りなかった。」


きっと、服をめくったことに対してだろう。
悪いのはあたなじゃない。と言いたかったがポロポロと溢れる涙と嗚咽に遮られ言うことができなかった。


怖かったんだ。襲われたことが、押し倒されたことが。なんとかさっきまでは平気だったが、もう一度服を捲られそうになったことと、頬を叩いたことによる罪悪感。一気に感情の波が押し寄せてきて涙となってながれた。


重い空気に包まれた空間で2人は押し黙り1人はヒクヒクと泣いていた。きっと、王子も泣かせるつもりはなかったんだ、冗談でやっただけだきっと。だからわざわざ泣く必要ない。そう自分に言い聞かせ泣くのを必死に堪えた。




う、うぅ気まずい、、
大人気なく泣いてしまった俺に、心配そうにチラチラ見る黒髪イケメン。そして、おそらく気まずすぎてこちらを見れない王子。



しばらく沈黙の後に俺は口を開いた。

「あの、、その、そろそろ家族が心配するんで、、
帰らせてほしいです、、。」

「あ、ぁあ」

突然喋った俺に驚いた黒髪イケメンは頷きながら肯定してくれた。王子はというと少し下を向いて考え事をしているようだ。どこまでも自由な人なんだなと思いながらもベットから立ち上がる俺。それに手を出しエスコートしようとする黒髪イケメンだったが、そんな貴族でもない平民にエスコートするなんてと丁寧にお断りした。



今日は色々ありすぎた。王子にぶつかって怪我させて引き摺って看病したかと思えば襲われて、黒髪イケメンに助けられて、、、

しかも相手はただのイケメンじゃなくて王族だ。本来なら話しかけることすら罪に問われてしまう人たちだ。
そう思い返すと俺の数々の罪はもういいのだろうか、

ちらっと黒髪イケメンを含んだ目で見てみた。察しのいい黒髪イケメンは俺の目を見てすぐに言いたいことに気づいたようだ。



「今日のことは本当に忘れてくれ。何も問題ないし、君に何か被ることはない」

「でも、足に怪我させちゃって、」

「そんなの勝手に怪我させておけばいい、唾をつけてれば治る。」

あぁそんなことか、というように言う黒髪イケメンは随分と王子を雑な扱いするようだ。多分唾じゃなおんない。

「悪いのは全部王子だ、日頃の罰が当たったんだろう。君が気にすることはない」

怪我させたのは俺が100%悪いんだけどね、でも黒髪イケメンは俺がこれ以上気にしないよう気を遣った言葉をくれた。

「じゃあ、罪とか、奴隷とか妾とか、そういうのはいいんですね?」

「あたりまえだ、むしろこっちが謝らないといけない。」


すまなかった。という黒髪イケメンにいえ、と返した。もう今日のことは忘れてしまおう。襲われたのもちょっとした冗談だ、少し森に休憩しようときただけだけなのに外はもう暗い。きっとフランも心配してる。


「それでは」

「暗いから送ってく。また王子みたいなのに襲われたら嫌だろう。」

お別れの挨拶をしたら送ってやる発言をされてしまった。もう子供じゃないし、それに王子みたいなのがたくさんいたらたまったもんじゃない。すぐそこだし


「いえ、近いんで」

「そうか」

黒髪イケメンは頷き、俺は古屋の出口に足を向けた。王子に一言何か言おうと思ったがまだ考え事をしているようだった。まぁ、いいかと思い古屋の出口でぺこっとお辞儀をして森へ足を踏み出した瞬間

パシッと腕を掴まれた。

振り返えってみると腕を掴んでたのは王子だった。

「なんでしょうか、」

まだ何かあるのか、と問いかけたが返事はこない。

黒髪イケメンが「王子もうあきらめてくださ」と言いかけたところで王子が言葉を被せた。


「すまなかった。」

「え?」

え?目線を合わさずに囁かれた言葉は小さすぎて聞こえなかった。

「だから、すまなかったと言っている」

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