俺様王子から逃げられない

ダヨ

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16 色づくマーキング。ライルside

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ライルside  続きます。



王子が公務を放棄したまま帰ってこないのだ。


職務放棄なんてしよっちゅうだ。
でも、それをカバーしてしまうほど王子は仕事が早く要領がよかった。

今日も抜け出した先はきっと例の、変なの。でも見に行っているのだろうと呑気なことを考え、申し訳程度の机の上に置かれたメモをみつめていた。

一応使える身としてどこかに行ってしまう王子のことは探さないといけない。
そして王子も一応、いつもの場所。と一言だけ紙に添えて部屋を出ていった。いるかいらないか程度の言葉を残し職務中に出て行くなんて、本当に困った主人でしかない。

それでも、そこまでして探しに行くほど王子の興味をひくその、変なの。はどのようなものなのだろう。

出て行く王子を適当に探すふりをしていつものようにその辺でぶらぶらし、いい頃合いになったら王宮に帰るようにする。
だから、抜け出すなんて日常茶飯事で気にすることはないはずなのだが。

王子は夕方になっても帰ってこなかった。
流石に護衛として、王子をここで待っている訳には行かない。あの人は俺より剣が強かったりする。俺も一応国内随一の剣を持っているはずだが、あいつには勝てない。
まあ、だから、心配する必要なんてないのだが王子は何をやっているのか帰ってこない。
俺が怒られるのは嫌なので仕方なく探しに行くことにした。


あてはある。というか、そこしかない。
あの森だ。その例の少年の場所。
王子が行っただろう場所を目指して足を進めた。


そこからの出来事は驚きの連続だった。

森では、王子が行きそうなところを探したが見つからず困っていたところを変な生物が案内してくれた。
それもそのはず、真っ白な毛に包まれた丸い物体がきゅうきゅうと鳴いているのだ。
啖呵を切っているつもりなのか、身体に対して少し大きいお腹を見せながらキーと鳴くと、あろうことか顎を使って道を示してきた。

なんだこの生意気な生物は。
考えている暇もなく、その真っ白な何かは走り出した。

「あ、おい」

なんなんだ。でも俺に道を示しということは何かあるということなんだろう。
この訳の分からない生物についていくのはどうかと思うが、なんだか着いて行った方がいい気がした。
丸いからだは小さい手足に対して大きく重そうに見えるのに随分と軽快に走っている。

たどり着いたのは一つの古屋だった。

「ここは・・・」

すると、古屋からは「やだ、やめて」などの抵抗の声が聞こえてくる。

まさか。
あそこに。

そんな予感を抱えつつ古屋を突破した。
勢いよく扉を破ると案の定王子が誰かに覆い被さっている姿が見えた。

こんなところにいたのか。

俺は怒りとともに王子に悪態をぶつける。また余計なことをしやがったなと思いながらもブツブツと言葉を放つ俺の顔を睨むと王子は舌打ちをしベットから立ち上がった。

正直こんなことには慣れていた。
その、例の少年を見つける前まではよく、平民を捕まえて掻い摘んでいたのだ。

閨の相手なんて王子はいくらでもいるはずだ。平民でなくても容姿の整った相手なんていくらでも用意できる。なんなら令嬢からのラブコールだって激しいのに。

それでも王子は、それがつまらないらしい。
なぜか平民を好み、時々掻い摘んでいた。

王子としてどうかとおもうが、上手く平民の格好をし変装すれば意外とバレないものだった。第一に王子がこんなところにいるはずがないというのがあり、気づかれることはなかった。
きっと、みんな超絶美形の一般人だとでも思っているのだろう。

だから、久々に掻い摘んでいる王子にため息が出た。
一国の王子であろうお方が、こんな印象を下げるようなことをして、、。
とりあえず鬱憤と共に釘を刺した。
王子はなんも気にしていないようだが。

そんなことをしていると声がかかった。

「あの、あなたは?」と控えめに発せられた声は凛としていて聞きやすいものだった。

声の主の方をみてみると、

驚いたことに、黒髪と黒目をもった少年がベットに座っていた。
一目見た瞬間、あぁ。この子か。と、すぐに理解できた。
きっと、この子がその例の少年なんだと。

たしかにとても可愛らしい顔をしていた。
小柄な体格に、大きな目とちょこんと座る形のいい鼻。
果実のように色づく頬。
どうにも吸い寄せられてしまうような見た目をしている。

俺は王子に問いかけた。例の少年じゃないですか。と、でも、その言葉を言い終わる前に口を塞がれしまった。
どうやら禁句らしい。

だが、その子はどこか怯えるような眼をしていた。
まさかと思うがこの王子、、、

王子とはいえそんなこと許されない。
いや、俺が許さない。
貞操の無事を聞くが、どうやら貞操は無事らしい。

それでも、その瞳は不安と怯えが混ざっていたため原因を探ることにした。
貞操が無事なら、脅されたとか。

確認してみるとやはりそうらしい。

そして、白い首元にはチラリと見える跡がついている。
手を伸ばし確かめてみると白い肌に赤く強調された噛み跡がついていて、まるで、俺のものだと言いたげにして居座っていた。
そこのワンポイントは随分と色気を放っていたので隠した方がいいと一言加え、王子にさらなるため息をついた。

マーキングをつけるなんて。こんなダサい真似を。
不貞腐れた王子を横目に、さらに怪我をしていないか確認することにした。

怪我はしていないというが、一応確認のため
ペラッと服をめくると、

突然、顔に衝撃が走った。

っ、、、

その子の謝る声が聞こえる。
俺は、頬を叩かれたらしい。


あ、いや、そうだった。
いきなりは不味かった。

顔に走った衝撃も忘れ気づいた時にはその子の瞳から大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちていた。


しまった。

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