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3章 彼の溺愛包囲網
国王の婚約発表
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麗らかな陽気の日、王宮ではその天気に不釣り合いな緊迫した空気が漂っていた。
「····今、何と仰いましたか?」
「同じ事を二度も言わせるな、結婚したい女性が見つかったと言ったのだ。」
「しかし、何故このように突然···。」
「突然も何も其方らが言ったのだろう?早く結婚相手を見つけ跡継ぎを儲けろ、と。願ったりかなったりではないか。」
突然の王の発言に戸惑いを隠せない臣下たちに対して、冷ややかな眼差しを送る国王。どんなに若くとも、人を従わせるその眼差しに王としての風格が見える。
「····して国王陛下、御相手は何方なのです?」
「その娘の名はーーーー····。」
*****
ある日、アイリスは父からあるニュースを告げられる。
「国王陛下が結婚···ですか?」
「あぁ、近々相手方へ求婚するそうだ。」
「そうなのですね。とてもおめでたいです。国王妃となるのは栄誉ある事ですから、御相手の一族もさぞ誉れ高いでしょうね。」
「·····あぁ、そう、だね。」
この国の王が結婚相手を見つけたというのに、父は何故か浮かない顔をしている。
「お父様···?」
「あぁ、いや、何でもないよ。そう、とても栄誉ある事だ。喜ばしいね。」
「そういえば、御相手は何方なのでしょう?国王陛下の妻となる方ですもの、きっと伯爵位以上の身分の方なのでしょうね。」
「······。アイリス、」
「旦那様、お嬢様、来客がいらっしゃいました。」
何か言いたそうにしている父が口を開こうとすると、タイミング悪く遮られた。
「お父様?何を···」
「いや、後で良いよ。きっとウィリアム様だろう?行っておいで。」
「···っ、は、はい。」
その父の言葉にかぁっ、と赤くなる。昨日ウィリアムから受け取った手紙に書いてあったのだ。
『 親愛なるアイリス
明日、君の都合が良ければ約束した花畑へ行こう。きっと君の気に入るものになっていると思うよ。では、良い返事を楽しみにしているよ。
追伸
明日は多分晴れると思うよ。私は晴れ男らしいからね。
R.ウィリアム』
この手紙を受け取った時、アイリスは逸る気持ちを抑えて返事を書いた。それから翌日に着ていく服を選んで、念入りに身体と髪を洗った。少しでもウィリアムに可愛いと思って欲しいからだ。夜もなかなか寝付けず、寝入る事が出来たのは深夜だった。けれど目が冴えてしまい、起きたのは何時もよりも幾分早い時間だった。
(あぁ、とても緊張してきたわ····。初めて一緒に出掛けた時は突然だったから···。)
リビングを飛び出し、一度自分の部屋に戻った。そして出掛ける用意を整えた後、料理長にお弁当の入ったバスケットを貰い、玄関へ向かった。
そして、そこにいたのはやはりウィリアムだった。
「ウィル!お待たせして、ごめんなさい。」
「やぁ、アイリス。大丈夫だよ、今来たばかりだから。···それにしても、」
と、ウィリアムはアイリスの髪の毛を1房掬うとその髪に口づけた。
「君は何時も可愛らしいね。パーティーの時の華やかなドレス姿も素敵だったけど、今日の格好もとても似合っているね。」
「····っ、あ、りがとう···。」
いつも通りのキラキラした微笑みで、躊躇いなくアイリスを褒め称えるウィリアムに、アイリスは照れながらも礼を言う。今日のウィリアムの格好は、とてもラフなものだった。白いシャツに黒いトラウザーズという出で立ちなのに、とてもお洒落に見えるのはウィリアムの素材が良いせいだろう。
「じゃあ、行きましょう?」
「アイリス、悪いけど少し待っていて貰っても良いかな?君の父上に話があるんだ。」
「?えぇ、分かった。」
*****
「お待たせ、行こうかアイリス。」
「えぇ。···ウィル、お父様と何を話していたの?」
「ん?···秘密。」
アイリスは父とウィリアムとの会話を聞くが、はぐらかされてしまう。
「秘密···?」
「うん。大丈夫だよ、アイリスが気にする事じゃないから。」
穏やかだが、有無を言わさず会話を打ち切ったウィリアムに疑問は残るものの、
「さあ、行こう。」
と、手を差し伸べられれば、アイリスに拒む理由はなかった。
「····今、何と仰いましたか?」
「同じ事を二度も言わせるな、結婚したい女性が見つかったと言ったのだ。」
「しかし、何故このように突然···。」
「突然も何も其方らが言ったのだろう?早く結婚相手を見つけ跡継ぎを儲けろ、と。願ったりかなったりではないか。」
突然の王の発言に戸惑いを隠せない臣下たちに対して、冷ややかな眼差しを送る国王。どんなに若くとも、人を従わせるその眼差しに王としての風格が見える。
「····して国王陛下、御相手は何方なのです?」
「その娘の名はーーーー····。」
*****
ある日、アイリスは父からあるニュースを告げられる。
「国王陛下が結婚···ですか?」
「あぁ、近々相手方へ求婚するそうだ。」
「そうなのですね。とてもおめでたいです。国王妃となるのは栄誉ある事ですから、御相手の一族もさぞ誉れ高いでしょうね。」
「·····あぁ、そう、だね。」
この国の王が結婚相手を見つけたというのに、父は何故か浮かない顔をしている。
「お父様···?」
「あぁ、いや、何でもないよ。そう、とても栄誉ある事だ。喜ばしいね。」
「そういえば、御相手は何方なのでしょう?国王陛下の妻となる方ですもの、きっと伯爵位以上の身分の方なのでしょうね。」
「······。アイリス、」
「旦那様、お嬢様、来客がいらっしゃいました。」
何か言いたそうにしている父が口を開こうとすると、タイミング悪く遮られた。
「お父様?何を···」
「いや、後で良いよ。きっとウィリアム様だろう?行っておいで。」
「···っ、は、はい。」
その父の言葉にかぁっ、と赤くなる。昨日ウィリアムから受け取った手紙に書いてあったのだ。
『 親愛なるアイリス
明日、君の都合が良ければ約束した花畑へ行こう。きっと君の気に入るものになっていると思うよ。では、良い返事を楽しみにしているよ。
追伸
明日は多分晴れると思うよ。私は晴れ男らしいからね。
R.ウィリアム』
この手紙を受け取った時、アイリスは逸る気持ちを抑えて返事を書いた。それから翌日に着ていく服を選んで、念入りに身体と髪を洗った。少しでもウィリアムに可愛いと思って欲しいからだ。夜もなかなか寝付けず、寝入る事が出来たのは深夜だった。けれど目が冴えてしまい、起きたのは何時もよりも幾分早い時間だった。
(あぁ、とても緊張してきたわ····。初めて一緒に出掛けた時は突然だったから···。)
リビングを飛び出し、一度自分の部屋に戻った。そして出掛ける用意を整えた後、料理長にお弁当の入ったバスケットを貰い、玄関へ向かった。
そして、そこにいたのはやはりウィリアムだった。
「ウィル!お待たせして、ごめんなさい。」
「やぁ、アイリス。大丈夫だよ、今来たばかりだから。···それにしても、」
と、ウィリアムはアイリスの髪の毛を1房掬うとその髪に口づけた。
「君は何時も可愛らしいね。パーティーの時の華やかなドレス姿も素敵だったけど、今日の格好もとても似合っているね。」
「····っ、あ、りがとう···。」
いつも通りのキラキラした微笑みで、躊躇いなくアイリスを褒め称えるウィリアムに、アイリスは照れながらも礼を言う。今日のウィリアムの格好は、とてもラフなものだった。白いシャツに黒いトラウザーズという出で立ちなのに、とてもお洒落に見えるのはウィリアムの素材が良いせいだろう。
「じゃあ、行きましょう?」
「アイリス、悪いけど少し待っていて貰っても良いかな?君の父上に話があるんだ。」
「?えぇ、分かった。」
*****
「お待たせ、行こうかアイリス。」
「えぇ。···ウィル、お父様と何を話していたの?」
「ん?···秘密。」
アイリスは父とウィリアムとの会話を聞くが、はぐらかされてしまう。
「秘密···?」
「うん。大丈夫だよ、アイリスが気にする事じゃないから。」
穏やかだが、有無を言わさず会話を打ち切ったウィリアムに疑問は残るものの、
「さあ、行こう。」
と、手を差し伸べられれば、アイリスに拒む理由はなかった。
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